2012 Fiscal Year Annual Research Report
視神経脊髄炎における補体介在性・非介在性アストロサイト傷害の解明
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24890017
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西山 修平 東北大学, 大学病院, 医員 (60636017)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 視神経脊髄炎 / アストロサイト / 補体介在性傷害 / 補体非介在性傷害 |
Research Abstract |
本研究における目的は、視神経脊髄炎(NMO)が炎症性アストロサイト傷害という疾患概念であることを確立し、その発症機序において補体介在性傷害、補体非介在性傷害それぞれによる抗アクアポリン4(AQP4)抗体の関与を明らかにすることである。 本年度は、(1)NMO患者血清抽出IgGを用いたアストロサイト傷害性の検討、および(2)蛍光タンパクとのリコンビナントAQP4を使用したアストロサイトでの形態学的検討を計画した。 (1)については、NMO患者5名の再発時の血漿からIgG(NMO-IgG)を抽出する。このNMO-IgGのヒトアストロサイト一次培養細胞に対する影響を、蛍光免疫染色法を用い補体非依存性の形態的変化・細胞傷害の有無を検討する。培養液中の細胞死関連タンパクや各種サイトカインの測定を行い、病態の促進・抑制因子の解明を目指す。またNMO-IgG作用下さらにヒト補体を添加し、補体依存性細胞傷害による細胞死が生じるかを検討する。 (2)については 蛍光タンパクとのリコンビナントAQP4を用い、ヒトアストロサイト一次培養細胞に導入して発光AQP4を細胞膜上に発現するモデルを用いる。このモデルに対して、培養液中にNMO-IgGを添加し細胞膜上のAQP4の発現変化を膜染色やチュブリン染色を用い検討する。さらに、ヒ素化合物をNMO-IgG添加前に加え、膜状AQP4の経時的変化について観察、検討を行う。NMO-IgG添加から2時間経過後、培養液中からNMO-IgGを取り除き、アストロサイト膜状AQP4がどのように回復するかその過程も経時的に観察しそのメカニズムを解析する。同様の検討を正常コントロール群や多発性硬化症患者群でも行い、上記の変化がNMO-IgGのみで引き起こされることを確認する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず(1)NMO患者血清抽出IgGを用いたアストロサイト傷害性の検討については、まずヒトアストロサイト一次培養細胞の系が安定して解析できる状態であることを確認した。また、NMO患者5名よりIgGを抽出した。NMO-IgGのみの作用やNMO-IgG作用下での補体傷害性を検討したところ、NMO-IgGのみでは細胞死は起きないものの、機能的・形態的な変化を認めた。これらは健常者や多発性硬化症患者から抽出したIgGでは引き起こされなかった。LDHやIL-6, TNF-αなどの液性因子には変化を認めなかった。一方、NMO-IgG作用下に補体を加えると細胞死が起きることを、Propidium Iodideを用いた染色や、培養液中LDH値によって明らかにした。これらの変化は非働化補体や培養液のみでは認めなかった。 (2)蛍光タンパクとのリコンビナントAQP4を使用したアストロサイトでの形態学的検討については、NMO-IgG添加のみで膜上AQP4がクラスターを形成し、その後そのクラスターが細胞内に取り込まれることが明らかとなった。これは膜染色と同時に行うと膜が細胞内に取り込まれ、また、ヒ素化合物を用いると細胞内への取り込みが阻害されることから、エンドサイトーシスであると考えられた。チュブリン染色による検討ではNMO-IgGでは特にチュブリンの動きに変化は無く、細胞内の物質輸送にはNMO-IgGはほとんど影響を与えていないと考えられた。また、NMO-IgG添加培養液を取り除き、正常培養液に戻した培養を続けると、膜上のAQP4が徐々に回復し、48時間後にはNMO-IgG添加前と同程度まで回復することがわかった。ただし、NMO-IgGによる膜上AQP4のエンドサイトーシスの後、膜上AQP4が細胞膜に回復していく過程を見た実験の数がまだ十分ではない。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度はおおむね計画通りに実験が進んだと思われる。不足している点として挙げた実験については、あと数週間程度追加実験を行えば有意差のあるデータとして採用できると考えている。。 その他については予定通り、本年度計画した実験を推進する方針である。具体的には、(1)補体・補体防御因子による細胞傷害性修飾の検討、(2)AQP4の水チャネル機能低下によるアストロサイトへ傷害の検討を行う。 (1)については、補体防御因子の役割を明らかにするため、まずはウサギ補体とヒト補体による細胞傷害性の比較による総合的な防御因子の機能について検討する。ヒトアストロサイトにどのような防御因子が発現しているか免疫化学染色やウェスタンブロッティングで確認後、補体防御因子を個々にsiRNAを用いてノックダウンし、それぞれの補体防御因子がどのくらい防御に寄与しているかの検討を、上清の細胞傷害アッセイ(LDH ELISA)やアポトーシスシグナルの発現(AnnexinV法やTunnel法)を用いて行う。siRNAはInvitrogen社によるオーダーメイドsiRNA(Stealth RNAi)にて作成する。 (2)については、AQP4における水チャネル機能はacetazolamideや五苓散、マンガンなどの重金属により抑制し、NMO-IgGをアストロサイト一次培養細胞培養液中に添加し、細胞傷害性に変化が出るかを検討する。また、多発性硬化症治療薬として近年承認されたフィンゴリモドの治験段階において、NMO患者に使用すると悪化することがわかった。このメカニズムについてもアストロサイトの立場から検討を行うため、培養液中にフィンゴリモドを加えたアストロサイトに同様のアッセイを行い、フィンゴリモドによる細胞傷害の増悪の可能性についての検討も行う予定である。
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