2012 Fiscal Year Annual Research Report
微量元素セレンの放射線照射に対する二重効果:正常細胞保護作用と放射線治療補助効果
Project/Area Number |
24890034
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
山崎 千穂 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20506422)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 微量元素 / セレン / 放射線 / 酸化ストレス |
Research Abstract |
微量元素セレンは活性酸素を減らし、細胞を保護する作用を持つ。また、セレンはがん細胞でアポトーシスを誘導することが報告されている。これらを考え併せると、放射線治療前にセレンを補充しておくことで正常細胞はセレンの抗酸化作用により保護され、がん細胞は放射線照射による細胞死とセレンによるアポトーシス誘導の相乗効果により、二重の効果が期待できるのではないかと考えた。本研究では、正常細胞およびがん細胞に対するセレン補充の効果を明らかにすることを目的とする。平成24年度は、前立腺がん細胞を亜セレン酸ナトリウム添加下で培養し放射線照射を行い、細胞生存率や増殖率の定量、細胞周期の解析などを行った。セレン非添加群との比較から、効果的なセレン濃度及び放射線量を検討した。細胞実験と並行して、来年度実施予定の動物実験の準備を開始した。酸化ストレス可視化マウス(OKD48)を用いて、放射線照射の線量等の条件検討を行った。OKD48マウスを用い、非照射、放射線照射6、24、72時間後における酸化ストレスシグナルを測定したところ、雌マウスでは経時的にシグナルの増加がみられ、72時間後で最も強いシグナルが検出された。一方、雄マウスではどの時点でもシグナルは検出できなかった。この結果は、細胞レベルにおける酸化ストレスマーカーであるHO-1の発現と一致していた。雄マウスは雌に比べ、放射線照射による酸化ストレスに対してより耐性があるか、もしくは酸化ストレス除去能力が高いことが示唆され、今後のin vivoイメージング実験には雌マウスを使用する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度はがん細胞および正常細胞の培養細胞を用いて、放射線照射に対するセレンの効果を検討する計画であった。本学ゲノムリソースセンターにおいて培養を行う予定で利用申請していたが、センターの都合により使用開始が当初計画していたより遅れたこともあり、がん細胞におけるセレンの作用のみしか検討できなかった。 平成25年度に実施予定の動物実験の準備は予定より順調に進んだ。酸化ストレスマウス可視化マウスを譲り受け繁殖を行った。動物への放射線照射手技を獲得し、マウスの放射線照射条件の検討を開始した。総合的にみると、概ね計画通り進んでいると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、前年度に引き続き、前立腺がん細胞に対するセレンの放射線治療アジュバント効果に検討を加えつつ、正常前立腺上皮細胞におけるセレンの保護作用に焦点を当て、実験を進める。正常前立腺細胞を亜セレン酸ナトリウム添加下において培養・放射線照射し、細胞生存率(MTTアッセイ)、酸化ストレスマーカー値(GSH/GSSG比、8-OHdGなど)の測定、抗酸化関連酵素(SOD, GPx, Trxなど)の定量を行い、セレンによる放射線照射に対する抗酸化能の評価を行う。そして、亜セレン酸ナトリウム長期投与における放射線照射の影響を正常細胞とがん細胞で比較検討する。 また、OKD48マウスを用いて放射線照射が個体に与える酸化ストレスの測定及び、セレンの酸化ストレス軽減作用を検討する。まず、OKD48マウスに放射線照射し、in vivoイメージングシステムを用いた酸化ストレスアッセイ(発光活性の検出)を行い、シグナルの発生部位(臓器)およびシグナル強度を測定する。また、放射線治療では分割照射が行われることから、OKD48マウスにも複数回放射線照射を行い、酸化ストレスシグナルを測定する。酸化ストレスシグナルは放射線照射後、経時的に観察し、活性酸素の減衰を観察する。セレンの酸化ストレス軽減作用については、亜セレン酸ナトリウムを投与したOKD48マウスに対し放射線照射を行い、酸化ストレスシグナルの程度、抗酸化関連酵素(SOD, GPx)、酸化ストレスマーカー(GSH/GSSG比など)、放射線照射により生じるサイトカインや炎症マーカーであるCRPやMDAの上昇の程度を、セレン非投与群と比較検討する。
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