2012 Fiscal Year Annual Research Report
組織再生におけるマトリセルラープロテインの機能と形態制御に対する役割の解明
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24890050
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
稲木 涼子 東京大学, 医学部附属病院, その他 (90632456)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 再生軟骨 / マトリセルラープロテイン |
Research Abstract |
皮下移植した再生軟骨の形態維持機構を明らかにするため、周囲を取りまく界面線維組織と同部位に局在するマトリセルラープロテインに着眼し、その機能解明を行った。最初に、マウス再生軟骨皮下移植モデルを用いて、再生軟骨の成熟と周囲に形成される外周線維組織の形成機構を確認した所、移植後初期1週目で再生軟骨周囲にI型コラーゲン陽性の線維組織が形成され、同部位にはマトリセルラープロテインの中でも特にペリオスチンが強く発現していることが確認された。そのため、マトリセルラープロテインの中でも、ペリオスチンに着目して解析を進めた。線維組織の機能獲得には、構成するコラーゲン線維が重要なため、昨年度はコラーゲン成熟におけるマトリセルラープロテインの関与解明を目的とした。In vitroにおいて、可溶化コラーゲンにぺリオスチンを添加してゲル化を評価した所、添加に伴い物理的強度が増強し、内部構造を電子顕微鏡(SEM,TEM)で確認すると、ペリオスチン添加により、コラーゲン分子の会合が進み、コラーゲン分子の高次構造化が促進されていた。そこで、ペリオスチン遺伝子欠損マウスを用い、ペリオスチン欠損がin vivoでの線維形成に与える影響を確認した。野生型マウスと比較して、遺伝子欠損マウスの線維組織は、物理的強度が低下し、特に剥離強度の著しい低下を示した。組織所見では、構成する線維組織の直径低下、構成線維の密度低下、線維組織間の会合度の低下が確認された。最後に、軟骨細胞への支持機能の変化について調べるため、ペリオスチン添加したコラーゲンゲルを用いて軟骨細胞を三次元培養した所、軟骨分化関連遺伝子の上昇と軟骨基質タンパク質の蓄積が上昇し、軟骨分化を促進することが確認された。さらに、軟骨細胞のインテグリンを介した細胞内シグナルタンパク質のリン酸化が誘導されていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度予定していた、再生軟骨移植系におけるマトリセルラープロテインの局在確認。コラーゲン形成における機能解明をin vitro、in vivoの系で確認する。また、軟骨細胞への支持機能の評価、という3課題を昨年度中に実行できており、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度以降は、着目するマトリセルラープロテイン遺伝子欠損マウスを用いて再生軟骨移植モデルを作製し、その表現型の解析を行う。昨年度の知見から、外周線維組織の形成への関与が推測されるペリオスチンの遺伝子欠損マウスを使用する。遺伝子欠損マウスをホストに用い、再生軟骨外周に形成される線維組織でのペリオスチンの機能を解析する。ドナーには野生型マウスから単離した耳介軟骨細胞からマウス再生軟骨を作製し、遺伝子欠損マウスの背部皮下に移植する。移植後2週、8週で再生軟骨および外周線維組織を採取し、形態学的、組織・生化学的、生体力学評価を行う。 遺伝子欠損マウスを用いた再生軟骨移植モデルでマトリセルラープロテインの機能を明らかにした後、軟骨再生医療への応用の可能性を探るべく、大型動物を用いた実証実験を予定している。ビーグル犬を用いて、マウスの同系移植の方法に準じ、耳介軟骨組織から軟骨細胞を採取し、イヌ再生軟骨組織を作製する。昨年度の研究結果から、マトリセルラープロテインの中のペリオスチンが、コラーゲンの高次構造化を誘導し、外周線維組織の形成および成熟を促すことが確認されたているため、このペリオスチンの機能を利用して、再生軟骨移植時に外周にペリオスチンを塗布し、外周線維組織の構造化を促し、形態制御への効果を検討する。作製したイヌ再生軟骨は背部皮下へ自家移植し、移植後1、2、6、12か月で経時的に体表形状を追跡する。また、移植後の再生軟骨は2、12か月で摘出し、3次元形状、軟骨基質産生、力学強度、細胞生存性などを評価し、対照群と比較検討する。経時的な体表形状の追跡にはレーザー3次元形状測定装置VIVID910で評価する。
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