2012 Fiscal Year Annual Research Report
FGFシグナル制御によるApert症候群頭蓋冠縫合部早期癒合の治療法開発
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24890063
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
鈴木 尋之 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 医員 (70634492)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 歯学 / 先天異常疾患 |
Research Abstract |
Apert症候群は、線維芽細胞増殖因子2型受容体 (FGFR2) のリガンド (FGF) 依存的機能亢進型の点変異 (S252W) を原因とし、頭蓋冠縫合部早期癒合症や合指症を示す。 以前にFGFR2IIIc-S252Wと、その細胞外ドメインのみ (可溶型) を発現するトランスジェニックマウスの頭蓋冠由来骨芽細胞の解析により、可溶型を用いたFGFシグナル抑制が、S252W変異による増殖・分化能の異常な亢進を抑制する可能性を示した。これらの結果に関しての研究論文が海外誌にて発刊となった。 本研究の目的は、in vivoでの頭蓋冠冠状縫合部早期癒合のフェノタイプを持つ、前研究とは異なったApert症候群モデルマウス(FGFR2-S252W knock-inマウス)を用いて、Apert症候群の病態発症メカニズムを解明するとともに、FGFシグナル抑制が頭蓋冠縫合部早期癒合に対して与える効果を明らかにし、非侵襲的な新規治療法開発への糸口を見つけることである。はじめに、FGFR2-S252W knock-inマウスの頭蓋冠骨芽細胞を単離、分化誘導を行ない、異常な分化能を持つことを確認した。ヘパラン硫酸分解酵素を担体によりFGFR2-S252W knock-inマウスの縫合部へ局所的に作用させる系を確立させ、FGFR2機能低下状態を作り出し、縫合部早期癒合に対する阻害効果とシグナル反応性を評価する。ヘパラン硫酸特異的分解酵素として細菌由来酵素で市販されているheparitinaseを用いることを選定したとともに、担体として用いる物質の選定として徐放性のあるナノゲルを用いることとし、試験的にマウス胎仔の頭蓋冠縫合部に作用可能であるかについて質的・量的な検討を行った。 また、頭蓋冠縫合部にも異常をきたす先天異常疾患である、鎖骨頭蓋異形成症に関して臨床的データを学会にて発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
FGFR2-S252W knock-inマウスの頭蓋冠骨芽細胞を単離し、解析することにより、分化能が野生型(WT)マウスよりも亢進していることが確認できた。これは過去の報告と一致した。本研究では、FGFシグナル抑制が与える、胎仔マウス頭蓋冠縫合部での影響を観察するin vivoでの実験を主体に考えている。 FGFシグナル抑制の物質としてヘパラン硫酸分解酵素体としてheparitinaseを用いるとともに、担体として徐放性がある点でその他の材料より優れているナノゲルを、非常に小さくして用いることが可能であることが確認できた。しかし、FGFシグナル低下に効果的な濃度、作用範囲、作用時間などの探索に関して、今後更なる研究が必要である。現時点ではApert症候群モデルマウスとしてFGFR2-S252W knock-inマウスを用いた実験を行う段階ではなく、その前段階としてWTマウスを用いた基礎データの収集を先行すべきであると考え、取り組んでいる。 さらに、FGFシグナル抑制による頭蓋冠縫合部早期癒合の治療と、それに伴い明らかにされるであろう頭蓋縫合部(頭蓋骨及び硬膜や骨膜など周囲組織を含めた複合体)の組織間の相互作用含めたシグナル解析に関しては、今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
サンプル数を多く実験可能である、野生型(WT)マウスを用い、FGFシグナル低下に効果的なヘパラン硫酸分解酵素の種類、濃度、作用範囲、作用時間の探索を行う。胎仔マウスの頭蓋冠縫合部へのナノゲルの投与実験は、顕微鏡下での手術が必要となるため、手技的にも熟練するように努め、実験結果の人為的な誤差を減らし精度を向上させたいと考えている。さらに、WTマウスの頭蓋冠縫合部への影響を観察する。WTマウスを用いた実験結果から蓄積されたデータに基づいて、Apert症候群モデルマウス(FGFR2-S252W knock-inマウス)を用いた実験を行うことで、FGFシグナル抑制による頭蓋冠縫合部早期癒合の治療効果に関して解明がより円滑に推進すると考えている。また、同実験の組織切片を用い免疫組織学的染色、in situ hybridization法を行うことで、頭蓋冠縫合部を頭蓋骨及び硬膜や骨膜など周囲組織を含めた複合体として捉え、その組織間の相互作用含めたシグナル解析に関して行う予定である。
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Research Products
(2 results)