2012 Fiscal Year Annual Research Report
機械的負荷が顎関節円板内細胞に及ぼす影響―中間径フィラメントに着目して
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24890070
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
真柄 仁 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (90452060)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 関節円板細胞の細分化 / 機械的負荷による関節円板の変化 |
Research Abstract |
本研究は,免疫組織化学的・分子生物学的手法・免疫電子顕微鏡法を用いて,機械的負荷を与えた関節円板細胞の細胞骨格の一つである中間径フィラメント発現の変化とその生物学的意義を,血管形成に注目して検討することを目的としている. ヒト顎関節では切除による組織採取の機会は極めて少なく,その病態の組織学的検索が難しい.本研究の成果は機械的負荷を原因とする顎関節の病理組織変化の理解や,顎関節症の病態の推察ができ,更には椎間板,半月板といった整形外科領域の関節疾患の病態解明にも有効なデータを収集できると考える. 本年度は先行研究で使用した同様のラット実験モデルを用い,装置装着5日後に灌流固定(実験群),装着5日後に装置を除去し,更に5日間飼育(除去群),装置を装着せずに飼育(対照群)を対象として実施した.その中で,関節円板内の細胞における中間径フィラメント発現に対する免疫細胞化学的検索を行い,先行研究結果同様,機械的負荷を与えた実験群の関節円板細胞にはデスミンの発現の増加を認めた.更に,デスミンに加えて他の中間径フィラメントである,ビメンチン,GFAP,ネスチンに関して,免疫蛍光二重染色法を用い,デスミン陽性細胞における他の中間径フィラメントの局在の検索を行った.それら中間径フィラメントの局在は様々で,ビメンチンはほぼすべての細胞で発現し,GFAPは陽性細胞の半数程度が,ネスチンに限ってはデスミンと共局在する細胞は認めなかった. 中間径フィラメントの発現様式から,これまでは軟骨細胞様細胞として一様に考えられてきた顎関節関節円板の細胞が,多様な形態を呈するという事実に加え,デスミン陽性細胞にのみに注目しても中間径フィラメントの発現様式から細胞の細分類が可能である結果となった.またそのデスミン陽性細胞数は機械的負荷による変化を認めており,その生物学的意義に関して更なる検討が必要と考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
関節円板内の細胞における中間径フィラメントの定量的解析をもう一つの課題としていた.具体的にはウエスタンブロッティング法にて中間径フィラメント発現量の定量的解析を行う予定であったが,十分なタンパク量が抽出できず,有用なデータは得られていない.本年度は組織量を十分に確保しホモジナイズ,遠心分離,サンプル調整を行うことで定量的解析を実施し,これまでの研究で得られたデスミン,ビメンチン,GFAP,ネスチン陽性細胞率の変化とのデータとを比較,検討する.
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Strategy for Future Research Activity |
本年は,中間径フィラメントの定量的解析に加え,デスミン陽性細胞の生物学的意義を検討することを目的とする.顎関節部への持続的負荷により,関節円板に血管形成を含めた治癒機転が生じ,増加したデスミン陽性細胞は,周皮細胞の前駆細胞であるという仮説に基づき,各群において血管形成に着目した比較を行う. 具体的な手法としてはデスミン免疫陽性反応を示す細胞の微細構造学的検索を電子顕微鏡を用いた免疫電顕法によりその特徴について検討する.特に免疫陰性を示す細胞との形態の相違や,微小な毛細血管の存在について注意深く観察し,デスミン陽性細胞の微細構造から細胞の機能を考察する. 加えて治癒機転が生じていると考えられる除去群においては,関節円板に血管腔の形成の兆候が認められないか免疫組織学的に確認する.血管内皮細胞を標識するCD31およびRECA-1抗体とデスミンとの免疫蛍光二重染色を行い,血管形成の可能性とデスミン陽性細胞との関与について免疫細胞化学的に検索する.
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