2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24890084
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
坂元 一真 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (60612801)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | プロテオグリカン / ケラタン硫酸 / コンドロイチン硫酸 / 軸索再生 |
Research Abstract |
研究代表者は、中枢神経損傷後の主要な軸索再生阻害因子としてPhosphacanというプロテオグリカンに注目している。Phosphacanはケラタン硫酸・コンドロイチン硫酸を糖鎖として持ち、その軸索再生阻害活性はこれら糖鎖に依存していると予想される。 本年度はまず、組換えPhosphacanを用いてその活性を調べた。COS-1細胞にPhosphacan cDNAを導入し、培養上清から陰イオン交換樹脂を用いて組換えPhosphacanを精製した。この組換えPhosphacanはケラタン硫酸・コンドロイチン硫酸依存的に神経軸索再生阻害活性を示した。これまでの報告から、神経細胞上でPhopshacanの受容体となりうる分子をピックアップした。現在これら分子のノックダウンを行い、軸索伸長に与える影響を調べている。 Phosphacan上の糖鎖付加部位についての情報はこれまで乏しい。そこでPhosphacan上のケラタン硫酸付加部位についての情報を得るため、RNA干渉法を用いてケラタン硫酸結合様式の決定を行った。この結果O-マンノース型結合をしているという確証を得た。この結合型は非常に稀な結合型であるため、今後ケラタン硫酸付加部位の検討をしていく際の有用な情報である。 ケラタン硫酸はその硫酸化の程度により多様性が生ずる。しかしながらこの多様性の生物学的意義についてはまったく明らかにされていない。本年度はPhosphacanを産生する細胞の硫酸基転移酵素の発現に介入することにより、Phosphacan上のケラタン硫酸の硫酸化パターンを制御することに成功した。今後これらPhosphacanの軸索再生阻害活性の違いを検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、①神経軸索再生を阻害するPhosphacan受容体の同定、および②神経軸索再生阻害におけるケラタン硫酸鎖最小機能ドメインの解明、の2つを研究目標に掲げている。 ①Phosphacan受容体の同定に関しては、当初研究計画に比べ若干の遅れがある。現在いくつかの候補分子を挙げ、Phosphacanとの結合、あるいは軸索再生阻害への関与を調べている段階である。 ②ケラタン硫酸鎖最小機能ドメインの解明に関しては、当初研究計画で想定していた以上に進展している。特にPhosphacan上のケラタン硫酸の硫酸化パターンの恣意的な改変に成功したことは大きい。さらに共同研究による、ケラタン硫酸ライブラリーの構築も順調に進んでいる。これら2つの材料を用いて最小機能ドメインの解明に迫れると考えている。こちらで得られた情報を、受容体分子の同定や分子メカニズムの解明に利用していきたい。 総じて、本研究課題の達成度はおおむね順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
損傷中枢神経系の損傷部では、軸索先端部はプロテオグリカン濃度勾配の中でDystrophic endballという特徴的で特異性の高い変性構造を取り、伸長を停止している。しかしながら、そのメカニズムについては不明である。研究代表者は、細胞培養ディッシュ上にPhosphacan濃度勾配を作製することに成功している。この系を用いてまず、PhosphacanにDystrophic endball形成活性があるかどうかを確認し、その分子メカニズムについて検討する。また受容体候補分子をノックダウンすることで、Dystrophic endball形成がレスキューされるかどうかを検討し、受容体分子を決定していく。さらに受容体ノックアウトマウス由来の神経細胞の表現型を調べる。 ケラタン硫酸の硫酸化パターン依存的軸索再生阻害活性について検討するために、硫酸の構造・組成の明らかな人工合成ケラタン硫酸ライブラリー、また硫酸化パターンを制御した組換えPhosphacanを用いてその活性・効果を確認し、神経軸索再生阻害活性に必要十分なケラタン硫酸鎖最小機能ドメインを決定する。研究代表者はPhosphacan受容体の一部はケラタン硫酸を認識していると考えている。ケラタン硫酸鎖最小機能ドメインを決定できれば、このドメインと相互作用する分子を網羅的に調べるといった、受容体分子同定へのアプローチも可能となる。 以上で得られた結果を中枢神経損傷疾患モデル動物で確認していく。特にケラタン硫酸鎖機能ドメインに基づいた新規治療法の確立を目指す。
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Research Products
(9 results)
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[Book] 実験医学2013
Author(s)
坂元一真
Total Pages
in press-in press
Publisher
硫酸化糖鎖と神経回路再編
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