2012 Fiscal Year Annual Research Report
心臓リモデリングに関わるlincRNAの機能の解明
Project/Area Number |
24890094
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
桑原 康秀 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 医員 (60632099)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 心肥大 / 心不全 / 非コーディングRNA / lincRNA |
Research Abstract |
1. lincRNA-HFの生体内における機能を解析する。 lincRNA-HFのノックアウトマウスを作成するため、我々の着目するlincRNA-HFの2つのエクソンをネオマイシンに置換するコンストラクトを作成した。 2. 培養心筋細胞を用いたlincRNAの機能解析について 培養心筋細胞に、アンギオテンシンIIやフェニレフリンによる刺激を行ったところ、lincRNA-HFの発現は濃度依存性に上昇した。またlincRNA-HFの全長をクローニングし、マウス新生仔初代培養心筋細胞にレンチウイルスを用いて過剰発現したところ、心筋細胞は肥大し、肥大マーカーであるANFやBNPの有意な上昇を認めた。次にRNAiを用いて、内因性のlincRNA-HFを機能喪失させ、lincRNA-HFの機能を解析しようと試みた。しかしRNAiの効果が乏しかったため、現在microRNAをもちいて機能喪失実験を試みようとしているところである。lincRNAのin vitroの機能解析として、内在性microRNAと結合するかをルシフェラーゼの下流にlincRNA-HFを挿入したコンストラクトを作成し、検討した。その結果いくつかの内因性miRNAと結合することが判明した。その結果を手がかりに結合可能なmiRNAとの相互作用を検討しているところである。 3. 患者血清中のlincRNA-HFの発現レベルの測定 患者血清で我々の注目するlincRNA-HFが測定可能であるかを評価したが、現在のところ測定不可能な状態が続いている。我々の着目するlincRNA-HFは現在マウス組織やマウス由来の細胞のみで測定可能である。lincRNA-HFが機能上、ヒトにまで保存されているか、もし保存されていた場合どのように保存されているかを検討することが今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1. lincRNA-HFノックアウトマウスの作成について lincRNA-HFのノックアウト作成については、ES細胞に打ち込むコンストラクトが完成した状況である。2つのエクソンをネオマイシンに置き換えるためのコンストラクト作成にやや時間を要したたため、進行状況としてはやや遅れている。ES細胞の培養を現在行っている状況である。 2. lincRNA-HFの機能解析について lincRNA-HFの発現変化を、肥大を誘導する薬剤を用いて評価したところ、濃度依存性に有意な上昇を認めた。lincRNA-HFの機能解析として過剰発現により、マウス初代新生仔培養心筋細胞において、細胞肥大が誘導され、肥大マーカーであるANFやBNPの有意な上昇を認めた。内在性lincRNA-HFの発現変化の評価と、過剰発現系を用いたlincRNA-HFの機能解析については順調に経過した。しかし、内因性lincRNA-HFの機能解析のためのRNAiには未だ成功していないため、やや遅れているのが現状である。機能解析を総括すると、培養心筋細胞を用いた研究は過剰発現の実験が主ではあるが、おおむね予定通り進んでいる。 3. 患者血清中のlincRNA-HFの発現レベルの測定について ヒト心臓、肝臓、脾臓由来のRNAをもちいて、我々の着目するlincRNAが測定可能であるかを評価したが、RTーPCRを用いた検討によると、測定不可能であった。血清中からRNAを抽出し、lincRNA-HFの発現を評価したが、こちらも測定不可能であった。我々の検討しているlincRNA-HFは現在のところ、マウス由来の臓器や細胞でのみ評価可能な状況である。そのため患者血清中のlincRNA-HFの発現レベルの評価については現在やや遅れているのが現状である。
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Strategy for Future Research Activity |
1. lincRNA-HFのノックアウトマウスの作成ついて 現在ES細胞を培養しており、今後ノックアウトマウス創出に向けてさらに進行させる予定である。 2. lincRNA-HFの機能解析について もっぱらの問題点はRNAiの効果が認められないことである。RNAiが効きにくい原因として、着目するlincRNA-HFが核内に多い、RNAiの機構から保護されている等が考えられるが、現在のところその理由は不明である。lincRNAに着目した先行研究で、microRNAを用いて機能喪失に成功している研究もあるため、現在microRNAの過剰発現によりlincRNA-HFがノックダウンできないかを検討しているところである。ノックダウンに成功すれば、内在性lincRNA-HFの機能をさらに深く評価することが可能になる。 3. 患者血清におけるlincRNA-HFの発現レベルの評価について 上述したが、我々の着目するlincRNA-HFの測定は、RT-PCRを用いた検討によると、マウス由来の臓器や細胞でしか測定に成功していない。ヒトやラット由来のRNAを用いて評価しても、測定できなかった。lincRNAは進化の過程で、数や機能は爆発的に増加してきているという報告も多数存在する。塩基配列が保存されていなくても、RNAの2次構造が重要であることも予想される。また塩基配列としては保存されていないものの、同機能を持ったlincRNAが他の種にも存在している可能性は高く、今後そのようなことを解析するために、機能分画の解明、重要な塩基配列等の解明が重要になると考えている。
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Research Products
(1 results)