2012 Fiscal Year Annual Research Report
NLRP3モザイクによる疾患発症、炎症波及機序の解明
Project/Area Number |
24890096
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井澤 和司 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 医員 (90634931)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 炎症 / 自己炎症性疾患 |
Research Abstract |
自己炎症性疾患であるCINCA症候群は発熱、蕁麻疹様発疹、慢性髄膜炎、感音性難聴などの症状を呈する。NLRP3遺伝子の機能獲得型変異によって発症する。遺伝形式は常染色体優性遺伝であるが、de novoの変異も多い。約半数の患者にヘテロNLRP3変異を認めないが、その7割にNLRP3モザイク変異を認めることを国際共同他施設研究において示した(2011年)。低頻度体細胞モザイクによる疾患発症機序の詳細は未だ不明である。1)単細胞培養系を用いたサイトカイン測定、遺伝子解析、2)変異NLRP3ノックインマウスを用いた骨髄キメラマウスの作製、解析により低頻度モザイクによる疾患発症機序、炎症波及機序を明らかにすることを目指した。 平成24年度は、NLRP3体細胞モザイク症例の集積を行い、これまでの症例と合わせて、CINCA症候群のNLRP3モザイク症例5例、また軽症型のMuckle-Wells syndromeのNLRP3モザイク症例4例を診断した。患者細胞からCD14陽性細胞をMACSにて分離し、2種類の方法で、単細胞からのIL-1β分泌を測定した。PDMSウェルアレイチップを用いた解析では、NLRP3ヘテロ患者由来の単球は有意にIL-1βを産生することが確認された。研究者協力者(理化学研究所、横浜研究)が開発したミクロチャンバーを利用した単細胞培養系(Solid-State Sensors, Actuators and Microsystems Conference, 2011 16th International)において解析を行った。モザイク末梢血単球の解析を行い、LPS刺激により、変異細胞は変異陰性細胞に比べて、有意にIL-1βを産生している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
PDMSウェルアレイチップを用いた解析では、NLRP3ヘテロ患者由来の単球は有意にIL-1βを産生することが確認されたが、生細胞を標識するために用いたカルセインにより、IL-1βの産生が阻害される可能性があることが判明し、現在、系の調整を行っている。 また、研究者協力者(理化学研究所、横浜研究)が開発したミクロチャンバーを利用した単細胞培養系(Solid-State Sensors, Actuators and Microsystems Conference, 2011 16th International)においては、単細胞をピックアップする際に、他のゲノムの混入が認められ、単細胞からのシーケンス解析法を調整中である。 マウス実験については今後開始を検討しているが、現時点では開始できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、上記の問題点を解決する。具体的には、PDMSウェルアレイチップを用いた解析では、生細胞を標識するために用いたカルセインにより、IL-1βの産生が阻害される可能性があることが判明したため、系の調整を行う必要がある。また、研究者協力者(理化学研究所、横浜研究)が開発したミクロチャンバーを利用した単細胞培養系において、単細胞をピックアップする際に、他のゲノムの混入が排除できるシステムを確立する。 また、抗IL-1製剤治療前後での細胞の挙動が変化する可能性もあるため、治療前後で同様の実験を行う。単細胞の遺伝子解析においてはNLRP3変異確認のみならず、マイクロアレイ、もしくはRNAseqをもちいた網羅的発現解析を行い、変異陽性細胞、変異陰性細胞における炎症波及の機序の解明、表面マーカーの違いの有無を検討する。 変異NLRP3細胞はLPS刺激により細胞死を引き起こすことが知られている。また細胞成分はDAMPs(damage-associated molecular patterns) としてNLRP3のリガンドとなる。NLRP3変異細胞とNLRP3変異陰性細胞を1つずつ同じミクロチャンバーにて培養し、LPS刺激により誘導されるNLRP3変異細胞の細胞死により、NLRP3変異陰性細胞における炎症の波及効果の有無についても検討する。 マウス実験については今後開始を検討しているが、現時点では開始できていない。
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