2012 Fiscal Year Annual Research Report
リプログラミング法を用いた致死性骨異形成症の病態解明と治療法の探索
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24890101
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山下 晃弘 京都大学, iPS細胞研究所, 研究員 (00636855)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | iPS細胞 / 疾患 / 骨軟骨分化 |
Research Abstract |
本研究の主たる目的は難治性骨系統疾患の一つである致死性骨異形成症の病態の解明とその治療法の探索である。これまで、生体の疾患組織から細胞を入手することは困難であり、また代替物として得られる線維芽細胞等は限られた増殖能であっためヒトにおける病態の解明が困難であった。しかし近年のリプログラミング技術の発展により、これまで困難とされてきた希少難治性疾患の病態解明およびその治療法の探索できる可能性がある。そこで本研究では、患者由来線維芽細胞からinduced pluripotent stem cell(iPS細胞)を樹立し、軟骨細胞への分化誘導を行うことにより、致死性骨異形成症の病態の解明および治療法の開発を行う。 平成24年度中は、致死性骨異形成症の6患者よりiPS細胞の樹立に成功した。この患者由来iPS細胞は健常者由来iPS細胞と同様に無限増殖能と多分化能を有していた。 これまで有用なヒトES/iPS細胞から軟骨細胞への分化誘導法は確立されていなかった。そこで、ヒトiPS細胞より軟骨細胞および軟骨組織への分化誘導法の確立を行った。分化誘導培地および培養環境を考慮することにより、簡便で効率の良い分化誘導法を確立した。 この分化誘導法を用いて軟骨細胞への分化誘導を行った結果、健常者由来iPS細胞株では軟骨様組織が形成されるものの、致死性骨異形成症由来iPS細胞株では軟骨形成が認められず線維芽細胞に富んだ組織を形成した。また疾患の症状の一つと考えられる細胞死も分化誘導過程で認められた。 以上、平成24年度中は致死性骨異形成症由来iPS細胞を樹立し、軟骨細胞への分化誘導を行い、病態をin vitroで再現した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に研究を遂行する上で必要とされる、致死性骨異形成症由来iPS細胞の樹立に成功した。また、ヒトiPS細胞より軟骨細胞および軟骨組織への分化誘導法を確立した。さらに、疾患の病態をin vitroで再現することに成功した。以上の結果を国際シンポジウムにて発表した。 今後、原因遺伝子FGFR3の変異と骨・軟骨組織形成異常のしくみの解明および治療薬を探索する上で必要となる土台が出来ていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
致死性骨異形成症由来iPS細胞から軟骨細胞への分化過程で起きた疾患の病態を詳細に解明する。特に、FGFR3の下流での遺伝子発現の変化を定量PCRにて追跡し鍵となる因子を同定する。またマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現やプロテオーム解析を行うことにより、新たなシグナル異常の発見を目指す。さらに、同定した遺伝子や細胞シグナルに作用する薬剤等を添加し、疾患特異的症状に対する影響を誘導した軟骨組織と遺伝子発現にて検討する。 今後これらの結果について学会発表および論文を投稿する予定である。
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