2012 Fiscal Year Annual Research Report
中枢神経損傷後の獲得免疫系の機能とその制御による治療
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24890113
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石井 宏史 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90634171)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 中枢神経損傷 / 脊髄損傷 / Tリンパ球 / インターフェロンγ / インターロイキン10 / M2ミクログリア / M2マクロファージ |
Research Abstract |
神経-免疫連関の理解と将来の中枢神経免疫制御治療への基盤となることを目的として、神経保護作用を持ったリンパ球の条件を見出すべく研究を行って来た。脊髄損傷モデルマウスにヘルパーリンパ球のサブタイプの一つで、炎症性であり、多発性硬化症などの自己免疫疾患の病原の一つと考えられているTh1細胞を投与した群では、有意に後肢の運動機能および感覚機能が改善されたことが分かった。一方で、やはり多発性硬化症や関節リウマチなどの自己免疫疾患の病原であると考えられているTh17細胞を投与した群では急性期に運動機能が悪化したことが分かった。治療効果があったTh1細胞投与群の損傷脊髄組織を解析した結果、対照群に比べて運動機能を司る皮質脊髄路と縫線核脊髄路の再構成が促されており運動機能の改善を反映するものであった。GFAP染色によるグリア瘢痕の比較においては差がなかったが、ミエリン染色により脊髄損傷後のミエリン化がTh1細胞投与により、良く保たれることが分かった。また損傷脊髄に集積する免疫細胞について特にミクログリア、マクロファージをフローサイトメトリーにより解析した結果、神経保護作用があると知られているM2型ミクログリア/マクロファージがTh1細胞投与により増加していることが分かった。ここでM2サブタイプのマーカーであり、組織保護作用を持つと言われているサイトカインであるインターロイキン10(IL-10)に対する中和抗体をTh1細胞と同時に腹腔内投与した結果運動機能回復が部分的に抑制された。このことから投与したTh1細胞および損傷脊髄から分泌されるIL-10が治療効果に寄与することが示唆された。また予備的に、Th1細胞のインターフェロンγ(ifn-γ)の発現依存的に分泌されるIL-10および損傷ミクログリア/マクロファージから分泌されるIL-10が治療効果を持つことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書における研究計画①脊髄損傷後のTh1細胞投与による運動を支配する神経回路への影響 トレーサーにより皮質脊髄路を可視化することによりTh1細胞を投与すると軸索再構成が促進されることを見出した(Ishii et al., Cell Death Dis 2012)。 研究計画②/③脊髄損傷後のTh1細胞投与によるミクログリア/マクロファージへの影響 免疫組織学染色とフローサイトメトリーによりTh1細胞を投与すると損傷部のミクログリア/マクロファージが活性化して、神経保護作用のあるM2というタイプのミクログリア/マクロファージが増殖することが分かった(Ishii et al., Cell Death Dis 2012)。 研究計画④Th1細胞の脊髄損傷後のミクログリア/マクロファージ活性化におけるifn-γの役割 ifn-γノックアウトマウス由来のTh1条件のリンパ球を用いた実験により、Th1細胞の治療効果はifn-γに依存することが分かった。またifn-γの発現に依存してTh1細胞からIL-10が分泌が促進されて神経保護作用を持つことが分かった(Ishii et al., Cell Death Dis, Under revision)。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、順調にほぼ研究計画通り遂行できており、引き続き平成25年度研究計画に沿って進めて行く予定である。
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Research Products
(2 results)