2012 Fiscal Year Annual Research Report
歯性感染による非アルコール性脂肪性肝炎病態増悪メカニズムの解明と歯科治療の効果
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24890138
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
古庄 寿子 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (00634461)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | P.gingivalis / LPS / E.coli / パルミチン酸 / 肝構成細胞 / 炎症性サイトカイン |
Research Abstract |
私はこれまでP.gingivalis歯性感染が高脂肪食誘導マウス脂肪肝において炎症や線維化を促進し,非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が病態増悪に関わることを明らかとした.その際,同モデルマウスの血中でリポポリサッカライド(LPS)濃度が上昇していたことから, P.gingivalis歯性感染による炎症,線維化の促進におけるP.gingivalis-LPSの役割を明らかにするために,以下の実験を行った.まず,ヒト肝細胞(HC3716-hTERT株)をパルミチン酸(肥満者の血中で上昇する代表的な遊離脂肪酸)で処理し,脂肪化肝細胞を作成した.非脂肪化肝細胞,脂肪化肝細胞のそれぞれにP.gingivalis-LPS刺激を加え,炎症性サイトカイン発現(IL-1β,IL-6,TNF-α,MCP-2)について調べた.脂肪化肝細胞ではP.gingivalis-LPS受容体であるTLR2発現が上昇し,P.gingivalis-LPS刺激による顕著な炎症性サイトカインmRNA発現の上昇を誘導した.さらに,ヒト肝筋線維芽細胞(NPC2-hTERT株)およびヒトマクロファージ(THP-1株)でも脂肪化によりサイトカイン発現が上昇することを明らかにした.一方, TLR4を受容体とするE.coli-LPSでは,このような脂肪化による炎症サイトカインの発現増強はみられなかった.よって,脂肪肝ではTLR2発現が増加し,肝構成細胞のP.gingivalis-LPSに対する感受性が高まり,顕著なサイトカイン産生を誘導することによってNASH病態増悪に関わるというP.gingivalisの特異性が明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画における研究課題について,本年度予定の実験は終了し,現在,25年度に計画している実験に関しても既に着手しており,概ね計画通りに進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
in vitroの実験についてLPS以外の病原因子であるフラジェリン,CpG-DNA等のP.gingivalis由来病原因子について,パルミチン酸により脂肪化させた肝構成細胞における炎症性サイトカインおよびインフラマソームのmRNA発現を調べ,フラジェリンやCpG-DNA等の病原因子に対する脂肪化肝細胞の感受性の違いを検討することにより,歯性感染によるNASH増悪のメカニズムの解明について引き続き検討を進める.in vivoの実験について高脂肪食誘導肥満モデルマウスに歯性感染させ,根尖病巣を誘導したNASH歯性感染モデルマウスを作成後,モデルの半数に対し、感染歯の抜去による根尖部病巣の除去を行い,歯科治療マウスモデルとする.感染歯抜去を行わない非歯科治療マウスモデルと肝臓における各種炎症性サイトカインのmRNAおよびタンパク発現レベルや組織計測学的解析(炎症細胞浸潤巣数や線維化のスコアリング)を比較検討するとともに血清中のLPS濃度や血清抗体価を調べることで,感染巣の除去によりNASH肝臓に改善が認められるかどうか,検討する.
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Research Products
(1 results)