2012 Fiscal Year Annual Research Report
グリア細胞に発現するFABP分子による神経可塑性調節機構の解析
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24890144
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
山本 由似 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 学術研究員 (80635087)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | FABP / 多価不飽和脂肪酸 / 高次脳機能 |
Research Abstract |
細胞内の脂肪酸キャリアであるFABP分子群は、水に不溶な脂肪酸や脂肪酸代謝物の細胞内取り込み、輸送、代謝の調節を介して、様々な細胞機能に関わる。本年度の研究では、脳内に高発現する脂肪酸結合蛋白質3(FABP3)の、神経細胞の可塑性調節機構に対する役割の解明を目的とし、FABP3遺伝子欠損マウスにおける行動学的変化とシグナル伝達について調べた。以下の研究成果が得られた。解析対象として(1)FABP3の行動表現型解析(2)FABP3の脳内発現(3)FABP3の細胞内シグナル伝達制御、を取り上げた。 本年度においては、(1)に関しては、野生型マウスとFABP3KOマウスをビデオ行動分析装置にて解析したところ、FABP3KOマウスは野生型マウスに比べて認知行動および情動行動異常が認められた。(2)に関して免疫組織化学的解析から、FABP3は主に帯状回皮質において抑制性神経細胞のマーカーであるGAD67と一部共局在していた。さらに、FABP3KOマウス帯状回皮質においてGAD67蛋白質発現量が有意に増加していた。(3)FABP3KOマウスは、帯状回皮質での興奮性アミノ酸のグルタミン酸放出が抑制され、シナプス可塑性に関与する転写因子CREBのリン酸化レベルおよび、脳由来神経栄養因子BDNFの発現レベルが有意に低下していた。今後は、FABP3によるGABA合成系の調節機構と神経伝達調節機構について解析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、FABP分子群が細胞内シグナル伝達に対する制御機構の一部を、FABP欠損マウスおよびFABP発現細胞を用いた解析から明らかにした。さらに、FABPが産生を調節する液性因子の特定に成功した。しかし、野生型およびFABPKOマウス由来神経細胞に対する脂質分析計を用いた脂質成分解析が終了しておらず、FABP分子の神経細胞内脂質合成系への関与を明らかにするまでには至っていない。上述の研究成果は、現在論文投稿準備中であり、おおむね順調に進展しているものと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は研究計画通り、FABP欠損神経細胞の形態変化について解析する。さらに、解析の遅れている脂質成分解析を引き続き実施する。
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Research Products
(8 results)