2012 Fiscal Year Annual Research Report
アンドロゲン受容体シグナルと酸化ストレスのクロストーク
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24890160
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
塩田 真己 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20635445)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 前立腺癌 / アンドロゲン受容体 / 酸化ストレス |
Research Abstract |
本研究では、新規治療薬を含めたホルモン療法による酸化ストレスとアンドロゲン受容体(androgen receptor, AR)シグナル経路のクロストークの解明と酸化ストレスを標的とした新規前立腺癌治療法の開発を目指した。我々は、以前、前立腺癌においてホルモン療法による酸化ストレスがARシグナルを活性化し、去勢抵抗性の獲得に寄与することを明らかとした。そこで、酸化ストレスを標的とした前立腺癌治療を開発すべく、前臨床試験として、抗酸化剤を用いた前立腺癌に対する治療効果を検討した。その結果、抗酸化作用を有するある化合物は、前立腺癌細胞の増殖を著明に抑制し、細胞毒性を示すことが明らかとなった。同時に、同様の薬剤濃度では、正常前立腺細胞に対してはほとんど毒性を示さず、前立腺癌治療薬としての可能性があると考えられた(未発表データ)。一方、ホルモン療法によって誘発される酸化ストレスによるARシグナルの活性化のメカニズムを解明するため、前立腺癌皮下移植マウスを用いた実験を行った。その結果、去勢後に採取した腫瘍では、非去勢にて採取した腫瘍と比べて、恒常的活性化ARであるARスプライスバリアントの発現が増強していることが明らかとなった。また、それに伴って、ある細胞内シグナル伝達経路が活性化されていた。逆に、この細胞内シグナル伝達経路を遮断する阻害剤を用いたところ、ARスプライスバリアントの発現が低下し、細胞内シグナル経路を介したARスプライスバリアント発現制御機構が存在することが示唆された。さらに、去勢治療やMDV3100といった新規抗アンドロゲン剤にこの阻害剤を併用することで、アンドロゲン除去療法の治療効果が増強されることも明らかとなった(未発表データ)。以上より、抗酸化剤や去勢によって活性化される細胞内シグナル伝達経路を標的とした治療による前立腺癌治療の可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに予定している研究の半分ほどを終えた。その結果、研究実績の概要で示した通りの事実が明らかとなった。その結果は、おおむね当初想定していた結果に沿ったものであった。また、研究の進展度としては、おおむね予定していた研究計画の通りに進んでおり、今後も引き続き、当初の予定通り本研究を推進予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果に基づき、in vitroで有効性の示された抗酸化剤のin vivoでの治療効果について、マウスでの同所モデル、異所モデル、転移モデルなどの各種モデルを用いて検討を行う。また、同様に、ホルモン療法によって活性化される細胞内シグナル伝達経路に対する阻害剤のin vivoモデルでの治療効果について検討を行いたい。 さらに、手術や生検によって採取されたヒト前立腺癌組織を用いて、細胞内シグナル伝達経路やARスプライスバリアントに対する免疫組織染色を行い、ヒト前立腺癌における意義について検討を行いたい。
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Research Products
(5 results)