2012 Fiscal Year Annual Research Report
通常型膵癌におけるオートファジーの機能解析と新しい膵癌治療法への応用
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24890172
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
橋本 大輔 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (80508507)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | オートファジー / 膵癌 / 5-FU / ゲムシタビン / クロロキン |
Research Abstract |
オートファジー(Autophagy)は、細胞内での異常なタンパク質の蓄積を防いだり、栄養環境が悪化したときにタンパク質のリサイクルを行う。また、オートファジーが積極的に細胞死を引き起こすという報告もある。オートファジーと膵癌の関連性については、まだ十分に解明されていない。我々はこれまでの研究で、ヒト膵癌組織(3症例)においてオートファジーが活性化されていることを示した。さらに膵癌細胞株PANC-1においてオートファジーが膵癌の発育に積極的に貢献していることがわかった。また抗癌剤はPANC-1にさらに強いオートファジーを誘導し、このオートファジーは細胞保護的に働いていることを明らかにした。つまりオートファジーを抑制することが、新しい膵癌治療法となる可能性を示した。 この研究を発展させ、我々はまず膵癌患者における、オートファジーの誘導と予後をprospectiveに解析することにした。2012年4月から2013年3月まで22例の通常型膵癌に対して切除手術を行った。この症例の切除検体(癌部および通常膵実質部)を用いて、オートファゴゾームのマーカーであるLC3に対するウェスタンブロッティングを行っている。通常膵実質部に比べて癌部でLC3の発現が亢進している傾向があり、臨床病理学的特徴とともに解析し進行度、予後との関連を解析している。 また膵癌細胞株PANC-1で見られたオートファジーの特徴を確認するために、膵癌細胞株BxPC-3を用いて実験を行った。BxPC-3ではPANC-1と同様に通常培養条件下でLC3の発現が見られ、つまりオートファジーが発現していた。オートファジー阻害薬クロロキンによりBxPC-3の細胞増殖は抑制され、抗癌剤5-FUまたはゲムシタビンと併用した場合さらに強く細胞増殖が抑制された。つまり、BxPC-3においてもオートファジーが細胞保護的に働いていることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一年間で20例超の膵癌切除サンプルを収集することができた。現在解析を行っている。また膵癌細胞株BxPC-3においてもPANC-1に見られたのと同じ特徴が見られ、つまりオートファジーが細胞保護的に働いており、抗癌剤に対する抵抗性を有していることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
膵癌切除サンプルについて更に症例を重ね、オートファジーの誘導の程度と予後との関連をprospectiveに解析する。また、膵癌細胞株PANC-1およびBxPC-3を用いて、膵癌細胞にオートファジーが誘導される仕組みと、癌細胞内における具体的な機能の詳細を明らかにしていく。またクロロキンは網膜症など無視できない副作用を生じることが知られており、かつ免疫抑制作用もあり、抗癌剤と併用した場合の安全性も未知である。よって、臨床応用を前提として、より安全にオートファジーを抑制する手法を開発する。
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