2012 Fiscal Year Annual Research Report
口腔癌におけるINK4/ARF遺伝子座の高次エピゲノムの解析と新規診断法の開発
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24890176
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
廣末 晃之 熊本大学, 医学部附属病院, 医員 (00638182)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | INK4/ARF 遺伝子座 / エピジェネティクス / DNAメチル化 / クロマチン高次構造 / 口腔扁平上皮癌 |
Research Abstract |
今年度は口腔扁平上皮癌(OSCC)の細胞株(SAS、Ca9-22等)を用いて、INK4/ARF遺伝子座の遺伝子発現、CTCF結合量、DNAメチル化、クロマチンの高次構造についての実験を中心に行った。まず、OSCC細胞株におけるINK4/ARF遺伝子座の3つの遺伝子(p15、ARF、p16)のmRNAの発現状態を定量的RT-PCR法で調べた。その結果、OSCC細胞株においてはp16の発現が抑制されていることが分かった。次にCTCFの結合量の変化をすでの他の細胞株において結合することが分かっている3カ所のCTCF集積部位(IC1、IC2、IC3)についてクロマチン免疫沈降-定量的PCR法にて調べた。結果として、OSCC細胞株においては線維芽細胞と比較してIC3にてCTCF結合が低下していることが分かった。OSCC細胞株においてはp16の発現が著明に抑制されていたため、p16のプロモーター領域において、DNAメチル化状態を定量的MSP法にて解析した。2種類のOSCC細胞株(SAS、Ca9-22)ともp16のプロモーター領域は高度にDNAメチル化を受けており、p16抑制のメカニズムのひとつとしてDNAメチル化が関与していることが分かった。次にOSCC細胞株におけるINK4/ARF遺伝子座の高次クロマチン構造についてChromosome conformation capture(3C)アッセイを行った。線維芽細胞と比較し、SASやCa9-22においては高次クロマチンの構造が変化しており、IC3のCTCF結合量の低下やp16領域のDNAメチル化が高次クロマチン構造の変化に関与していることが考えられた。脱メチル化剤である5aza-dcを用いるとp16のDNAメチル化の低下や発現上昇が認められるため、今後、3Cアッセイにて脱メチル化された際のクロマチン高次構造について解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はOSCC細胞株を用いたINK4/ARF遺伝子座の高次エピゲノムの解析を行う研究計画を立てていたため、OSCC細胞株を用いた、INK4/ARF遺伝子座の遺伝子発現解析、CTCF結合量の解析、DNAメチル化解析、クロマチンの高次構造についての解析を施行し、おおむね研究計画に応じた実験の遂行ができたと思われる。まだ、データが不十分な項目やヒストン修飾、脱メチル化剤処理後のクロマチン高次構造の解析などの未解析項目もあるため、今後さらに実験を遂行し、口腔扁平上皮癌の発生や進展に関与するINK4/ARF遺伝子座の高次エピゲノムの特性を解明したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はOSCC におけるINK4/ARF遺伝子座の エピジェネティクス・ プロファイルとその臨床的意義の解析を中心に進める予定であり、研究代表者の所属分野に保管してあるOSCCの臨床検体を用いて実験を遂行する予定である。 臨床検体は治療前の生検時のサンプルを用い、p15/ARF/p16の発現解析、INK4/ARF遺伝子座のDNAメチル化解析、ヒストン修飾状態の解析、クロマチン高次構造の解析を行っていく予定である。また、DNAメチル化解析に関しては、当所属分野で樹立した5FU-耐性の口腔扁平上皮癌株を用いて、抗癌剤耐性とDNAメチル化の関与についてDNAメチル化アレイ等も施行していきたいと考えている。そこから得られた情報を基に、臨床検体のサンプルを用いて、関連する遺伝子のDNAメチル化に関しても同時に解析を行う予定である。これらの解析結果によりOSCC組織におけるエピジェネティクスプロファイリングを行い、臨床病理学的特徴と併せその臨床学的意義を解明する。臨床病理学的特徴としては、TNM分類、Stage分類、浸潤様式、再発・後発転移の有無、生存、術前治療の治療効果(抗癌剤、放射線感受性)等の項目について検討を行う予定である。以上の解析を遂行し、本研究の目的であるOSCCの病態と関連するエピジェネティクス・プロファイルに基づいた新たな診断・治療法の確立を目指したいと考えている。
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