2012 Fiscal Year Annual Research Report
単一ニューロン標識法による痛覚神経回路のボトムアップ的解析
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24890179
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
大野 幸 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (00535693)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 三叉神経脊髄路核尾側亜核 / 単一ニューロン標識法 / シンドビスウイルスベクター / 痛覚神経回路 |
Research Abstract |
本研究では、極めて複雑な脳内の神経回路も、1つのニューロンが多数集合して形成されるという視点から、近年新たに開発された単一ニューロン標識法を用いて単一痛覚ニューロンを詳細に解析し、『痛みの地図』を明らかにすることで、痛みの根本的治療方法や制御方法を確立するための基礎的な知見を供給することを目的としている。口腔・顔面領域の痛み情報が大脳皮質へ伝えられる神経回路の中で、特に三叉神経脊髄路核尾側亜核(Sp5C)は痛みの感覚のみならず、不快感や恐怖感などの情動、様々な自律神経系反応、そして痛みの調節反応をも巻き込んだ、痛みの持つ複雑さに直接関与していると考えられるため、この核のニューロンに着目し研究を開始した。 本年度はまず単一Sp5Cニューロンを可視化するため、以下の通り条件の最適化を行った。 1)単一Sp5Cニューロンへのウイルスベクター注入:10週齢のWisterラットを抱水クロラール麻酔下で定位脳手術装置に固定し、ガラス電極経経由でSindbisウイルス液を空気圧式微量注入器にてSp5Cに注入するが、その際のガラス電極の注入座標、その座標への解剖学的アプローチ方法、ガラス電極先端の形状、ウイルス液濃度を検討 2)連続凍結切片の作製:ラットを灌流固定後、脳を摘出し、連続凍結切片を作製するが、ウルス注入から灌流固定までのSurvival Timeの長さや最適な薄切断面を検討 3) Sp5Cニューロンを可視化:免疫組織化学法を用いてSp5Cニューロンを可視化するが、抗体の濃度や染色時間を検討 これらのことを詳細に検討した結果、最も効率よく単一Sp5Cニューロンを標識できる条件を設定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の開始にあたり、実験室の整備、試薬の検討、購入、調整、機器の新規購入や修理、共同機器利用にあたっての講習会受講、動物実験開始にあたっての動物実験教育訓練の受講、様々な書類の申請などに時間がかかり、本格的に実験が軌道にのるまでに予定していたよりも、多少時間がかかってしまった。しかし、これらのことは一通り達成し、一番時間がかかると考えられた最適な実験条件の検討も終わったため、出だしの遅れは取り戻しつつあると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
① 最適化された実験条件でのサンプルの収集: 単一Sp5Cニューロンへのウイルスベクター注入と、これを可視化するのに最適な条件の検討が既に終了しているため、この条件下で最低10サンプル集める ② 集めたサンプルの3次元的な再構築とその形態学的かつ定量的解析: 収集されたサンプルを、デジタル標本作製システムを用いて網羅的に撮影して完全にトレースし、樹状突起および軸索を再構築する。対比染色により軸索の投射領域を同定し、さらにはそこにおける軸索終末の分布を定量的に解析する。 ③ 再構築したニューロンの局在と形態との相関関係を比較検討: 再構築したニューロンのSp5Cにおける局在と、細胞体の大きさ、樹状突起の広がり、樹状突起の分岐の数、軸索の投射先、軸索終末の数などの間に相関関係がないか詳細に比較検討する。 ④ ①~③で得られた所見より、Sp5Cの痛覚神経回路における機能を検討: 当研究で得られた形態学的所見を、これまでの生理学的研究や分子生物学的研究などで得られた所見と照らし合わせ、Sp5Cニューロンの痛覚神経回路における機能を解明することを目指す。
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