2012 Fiscal Year Annual Research Report
触媒メカニズムに基づくヒストン脱メチル化酵素(LSD1)阻害薬の創製
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24890193
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
伊藤 幸裕 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30636402)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 創薬化学 / ドラッグデザイン / 低分子薬物 / エピジェネティクス / ケミカルバイオロジー |
Research Abstract |
ヒストンのメチル化修飾は遺伝子発現制御機構において重要な役割を担っている。ヒストンの脱メチル化反応を触媒する酵素として、フラビン依存性脱メチル化酵素であるLysine-Specific Demethylase 1(LSD1)が知られているが、LSD1阻害よるメチル化促進によってがんをはじめとする様々な疾患に対して治療効果を示すことが報告されている。すなわち、LSD1阻害薬はLSD1の機能を調べるためのケミカルツールとしてだけでなく、新規抗がん剤などの治療薬としての応用も期待されている。しかし、現在のところ、LSD1を効果的に阻害する薬物はほとんどない。特に、LSD1と同じフラビン依存性の酵素であるモノアミノオキシゲナーゼとの選択性が問題となる。そこで、モノアミノオキシゲナーゼに対して有意な選択性を示し、かつ 高活性なLSD1阻害薬の創出を目指し、研究を行った。 分子設計にはLSD1の触媒メカニズムを考慮し、阻害剤を標的酵素に効率的に送り届ける「究極のドラッグデリバリー型分子創製」という新たな手法を用いた。それに基づき、LSD1阻害薬を設計、合成し、活性評価を行ったところ、高活性かつ高選択的にLSD1を阻害する新規LSD1阻害薬を見出した。続いて、LSD1のX線結晶構造を基に、見出した阻害薬とLSD1のドッキングスタディーを行った。得られたドッキングモデルより構造展開を行ったところ、さらに高活性化かつ高選択的なLSD1阻害薬の創製に成功するとともに、明瞭な構造活性相関を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、ほぼ研究計画通り研究をすすめられることができた。研究実績の概要にも記したように、当初計画していた(1)LSD1阻害薬の設計と合成、(2)酵素系での活性評価、(3)LSD1阻害薬の構造最適化と構造活性相関研究、の3段階までほぼ完了している。特に期待通りの活性を有する化合物の創出ができ、明瞭な構造活性相関も得られた。また、25年度に行うことを計画していた、細胞試験に関しても一部取り掛かり始めている。こういった点を踏まえても、概ね順調に研究が展開できていると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後以下のような研究計画で研究を遂行する。当初の計画通り、以下の2段階の研究を行う。 ①阻害メカニズム解析 ②細胞系での活性評価 ①LSD1阻害薬の構造最適化と構造活性相関研究により得られた高活性化合物について、作業仮説通りにLSD1を阻害しているかを確認する。確認法としては酵素速度論的解析とMALDI-TOF MS解析を用いる。t-PCPAはLSD1内でFADと反応し、FAD-PCPA付加体が生成することで不可逆的に酵素を阻害することが報告されている。したがって、本研究で見出したLSD1阻害薬が不可逆的に酵素を阻害することが確認できれば、作業仮説を支持するデータとなりえる。一方、MALDI-TOF MS解析では、LSD1存在下および非存在下において、FADとLSD1阻害薬をある条件下で反応させ、その反応液の質量分析を行う。LSD1存在下のみFAD-PCPA付加体に相当するMSピークが得られれば、作業仮説を支持するデータとなり得る。 ②LSD1阻害薬の構造最適化と構造活性相関研究により得られた高活性化合物、数種については細胞を用いた活性評価を行う。LSD1はヒストンH3K4のメチル化体を基質とし、その脱メチル化反応を行う。即ち、阻害薬処理後の細胞からタンパク質を抽出し、ウエスタンブロッティング法を用いて、ヒストンH3K4のメチル化体量の変化を検出することで細胞系でのLSD1阻害活性を間接的に評価できる。細胞評価系においても高い活性を示した阻害薬は がん細胞増殖阻害活性も評価する。活性評価にはLSD1が過剰発現している細胞を使用し、MTTアッセイ、AlamarBlueアッセイおよびLDHアッセイなどの手法により細胞増殖阻害率を算出することで評価する。
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