2012 Fiscal Year Annual Research Report
ポリアミン及び代謝物を用いた臓器損傷マーカーの開発
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24890195
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
植村 武史 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50401005)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | ポリアミン / アクロレイン / バイオマーカー |
Research Abstract |
司法解剖における臓器損傷のマーカーとして、ポリアミン及びその代謝物の有用性を検討するため、HepG2培養細胞系を用いて検討を行った。その結果、エタノール摂取によって細胞内ポリアミン量が変化し、ポリアミン代謝物であるアクロレインが増加することを見出した。 エタノール摂取は、肉体的、精神的に様々な障害をもたらす。摂取されたエタノールは主に肝臓で代謝され、アセトアルデヒド(AcH)を経て酢酸にまで酸化される。エタノール摂取により肝組織は傷害を受けるが、肝細胞の増殖により組織が再生維持されている。したがって、エタノール摂取が肝細胞のポリアミン代謝に影響を及ぼすことが考えられる。 エタノール及びAcHの細胞毒性を検討した結果、20 mM AcHにより細胞増殖が阻害された。エタノール及びアセトアルデヒドに暴露した細胞中のポリアミン量を測定した結果、AcH暴露細胞ではスペルミンが減少し、プトレスシン及びスペルミジン量が増加していた。ODCの活性、mRNA、蛋白質量の変化は見られなかった。SAT1 mRNAはAcHにより増加していたが、蛋白質量は減少していた。スペルミンオキシダーゼ活性、mRNA、蛋白質量はAcHにより増加していた。DFMOにより細胞内ポリアミン量を減少させた細胞では、AcHの毒性発現が減少した。 本研究の結果、AcHはスペルミンオキシダーゼを転写レベルで誘導することが明らかになった。スペルミンオキシダーゼが誘導された結果、スペルミンが酸化されスペルミジン、プトレスシンが増加したと考えられた。また、スペルミンオキシダーゼによりスペルミンが酸化される際、細胞毒性を示すと考えられた。スペルミンオキシダーゼ及びポリアミン、アクロレイン量を測定することにより、エタノール摂取及びそれに伴う肝臓組織の損傷を検出することが出来る可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、ポリアミン及びその代謝物を用いて、外表から分からない臓器損傷を、簡便で迅速な方法で診断するための新規試験法の開発である。24年度の研究結果により、エタノール摂取に伴い生成されるアセトアルデヒドによって、細胞内のポリアミン代謝が変化し、毒性物質であるアクロレインを生成することが明らかになった。また、この際、スペルミンオキシダーゼが誘導されることを見出した。これらの知見より、スペルミンオキシダーゼ及び細胞内ポリアミン、アクロレイン量により、アルコール摂取に伴う肝臓組織の損傷が検出できる可能性が示唆された。今後の研究により、肝臓組織損傷の検出のための新規検査法を開発できると考えられることから、研究目的と合わせ、研究の進捗は概ね順調であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度研究計画に従い、研究を行う。24年度に得られた結果を基に、実際の司法解剖で得られた検体を用いて検討を行う。血液、肝臓組織のポリアミン量及び、肝臓組織においてはスペルミンオキシダーゼ量を測定し、飲酒量、飲酒の期間と比較してバイオマーカーとしての有用性を検討する。また、アセトアルデヒドによるスペルミンオキシダーゼ誘導機構を明らかにすると共に、その生理的役割を検討する。我が国では、1日平均60 gを超えてエタノールを摂取する人の割合は約5%にのぼる。エタノール摂取は、肉体的、精神的に様々な障害をもたらす。エタノール摂取時におけるポリアミン及び代謝酵素の生理的役割を明らかにすることで、肝臓を始めとした臓器の損傷を予防又は早期発見、治療へと結びつける。
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