2012 Fiscal Year Annual Research Report
血中循環がん遺伝子によるがん診断における新たな臨床的有用性の探索
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24890222
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Research Institution | Takasaki University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
梶田 昌裕 高崎健康福祉大学, 薬学部, 准教授 (40591871)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | がん / 診断 / 検査 / メチル化遺伝子 / バイオマーカー / 血中循環がん遺伝子 / 血中循環がん細胞 |
Research Abstract |
本研究では、血中循環がん遺伝子のがんバイオマーカーとしての新しい臨床的有用性を見出すことを目的として、下記の研究項目を計画し、昨年度までに、(1), (2)に関して研究を実施した。 (1).動物モデル実験系の構築。(2).血中循環がん遺伝子と血中循環がん細胞の検出系の構築。(3).血中循環がん遺伝子と血中循環がん細胞の体内動態における比較検証。 これまでに、ヒトがん培養細胞株をラット静脈接種により血液中に循環させて経時的に採血し、がん細胞数を計測するがん細胞静脈接種モデルを新たに構築した。この動物モデルは、これまで解析が困難であった血中循環がん遺伝子や血中循環がん細胞の基礎的研究を推進する新しいin vivo実験系として有用性が高いと考えられる。 また、本研究成果により血中循環がん遺伝子は、これまで考えられているがんの存否マーカーとしての臨床的有用性だけではなく、がんの悪性度を診断することができるバイオマーカーとして、新たな臨床的有用性が高まることが期待される。そこで我々は臨床応用に向けて、がん種特異的なメチル化遺伝子マーカーの探索を開始しており、これまでに肝細胞癌, 大腸癌, 脳腫瘍等の複数のがん種で特異的メチル化遺伝子マーカーの単離に成功している(特許出願済)。また、子宮頸がんに関しては、実際に約50検体の臨床検体を用いて、がん特異的メチル化遺伝子マーカーにより子宮頸部前癌病変の悪性度予測ができることを新たに報告した(Int. J. Gynecol. Cancer, 23, 234-243, 2013)。このように、本研究課題は当初の計画通りに研究が進められている。さらに、がんの存否マーカーやがんの悪性度評価等の臨床応用に向けた研究も開始し、既にがん種特異的なメチル化遺伝子マーカーを単離していることから、本研究成果をもとにした新しいがん診断法の可能性が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、(1)動物モデル実験系の構築, (2)血中循環がん遺伝子と血中循環がん細胞の検出系の構築に関する研究を実施した。 (1). 動物モデル実験系の構築:本研究では、がん細胞経尾静脈接種モデルと、担がんマウスモデルの2種類の動物モデルの構築を進めている。がん細胞静脈接種モデルに関しては、がん培養細胞株をラット静脈接種により血液中に循環させて、経時的に採血する方法の構築に成功した。一方、担がんマウスモデルに関しては、一般的に用いられている担がんマウスでは、がん組織体積が約1000mm3以上にならないと血中循環がん遺伝子が検出されず、本研究を遂行することは困難であった。そこで本研究では、担癌マウスのがん組織体積が小さい段階から血中循環がん遺伝子や血中循環がん細胞を検出可能とする担がんマウスの作成を目指しており、そのためにはがん培養細胞株の選定が重要となる。現在、腫瘍形成能と浸潤・転移能の観点から細胞株の選定を行っている。 (2). 血中循環がん細胞と血中循環がん遺伝子の検出系の構築:これまでに、血液から遺伝子の抽出工程を経ずに直接測定できる前処理方法により、1細胞あたり100万コピー数あるヒト遺伝子特異的なAlu配列の定量的PCR法により、血中循環がん遺伝子の量を測定する方法を構築した。具体的には、採血後の遠心により血漿画分と血球画分に分離し、血中循環がん遺伝子の量は血漿画分を用いてAlu配列のコピー数を測定した。一方、血中循環がん細胞数は、血球画分を溶血した後にAlu配列の定量的PCR法により、がん細胞数の算出を検討したが、夾雑物の影響により測定が困難であった。そこで代替策として、がん細胞をGFPタンパク質や蛍光色素でラベルし、細胞数を計測する方法に切り替えて、血中循環がん細胞を検出する方法の構築を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策として下記の2点に関して計画している。 (I). 血中循環がん遺伝子を用いた新しいがん診断に関する研究:本研究により血中循環がん遺伝子のがんバイオマーカーとしての新しい臨床的有用性を見出されれば、血中循環がん遺伝子は、これまで考えられているがんの存否マーカーに加え、がんの悪性度を診断することができるバイオマーカーとして、新たな臨床的有用性が高まると期待される。そこで我々は (a) がん種特異的なメチル化遺伝子マーカーの単離, (b) がん特異的メチル化遺伝子マーカーによる子宮頸部前癌病変の悪性度予測に関して、既に臨床応用に向けた研究を進めている。今後は、血中循環がん遺伝子を用いた新しいがん診断法の可能性を探究し、臨床応用に向けた研究を推進する。 (II). 血中循環がん細胞の特性の探究と創薬に関する研究:血中循環がん細胞は、がん患者の予後予測するバイオマーカーとしてのみ考えられてきたが、最近では血管内に浸潤した血行性転移過程にあるがん細胞の可能性が報告されている。しかし、これまでに適切な動物モデルが構築されていないことから血中循環がん細胞の特性を理解することは困難であった。本研究により構築される動物モデルは、血中循環がん遺伝子の生物学的メカニズムを解析できると共に、血中循環がん細胞の特性を詳細に解析することが可能である。そこで今後は、血液循環がん細胞の特性を分子生物学的に詳細に解析することで、血液循環がん細胞自身が、がんの転移を抑制する標的となりうる可能性を検証し、創薬につながる研究を推進する。
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Research Products
(7 results)