2012 Fiscal Year Annual Research Report
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24890231
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大石 直樹 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (10348740)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 加齢性難聴 / 小胞体ストレス |
Research Abstract |
本研究は、加齢性難聴の病態生理の一端を明らかにすることを目的としており、特に加齢性難聴で想定されている病態のうち、1)感覚細胞障害型加齢性難聴モデル、2)神経障害型加齢性難聴モデル、の2つの病態モデルを用いて、小胞体ストレスと加齢性難聴との関連に着目した研究である。 2つの病態モデルのうち、1)感覚細胞障害型(外有毛細胞死による)加齢性難聴モデルであるDBA/2jマウスを用いた実験をまず開始した。 DBA/2jマウスは早期に加齢性難聴を来たすマウスであるが、小胞体ストレスをブロックする薬剤TUDCAの投与では、結果的に難聴の進行は予防できないことが判明した。組織学的にも有毛細胞死がTUDCA投与群、非投与群で同様に生じており、加齢性の感覚細胞死に対する小胞体ストレスの関与は認められないことが示唆された。これは研究代表者が先行研究にて示してきた内耳における小胞体ストレスの役割と矛盾しない結果であると思われた。 そのため、DBA/2jマウスを用いた実験はその時点で終了とし、続いて2)神経障害型(ラセン神経節細胞死による)加齢性難聴モデルであるCBA/Jマウスを用いた実験を開始した。CBA/Jマウスは加齢とともに緩徐に難聴が進行するマウスであり、年度終了の時点でTUDCA投与を継続中である。TUDCAの投与による副作用などは見られておらず、このまま今年度も投与を継続していき、ABRにて定期的に聴力を評価していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究目的は、加齢性難聴と外有毛細胞およびラセン神経節細胞の2種類の細胞との関与について検討することであったが、研究前半に相当する期間(2年計画の1年目)で有毛細胞との関連をみる研究は終了しており、その意味では現時点での達成度は概ね順調ということができる。 その一方で、ラセン神経節細胞と加齢性難聴との関連をみる実験系は、難聴の進行は緩徐であるため、初年度終了の時点で半年程度の経過を追えている予定であった。しかし実験の開始がやや遅れ、年度末の時点で数カ月の経過をみるだけに留まった。その意味で、達成度は若干遅れていると判断せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
現在最低12カ月以上経過観察する必要がある実験を遂行している中途段階であり、このまま遂行中の実験系を半年以上継続する予定である。投与途中の聴力経過によっては、さらに別の系を同時に走らせることができ、年度末までに結果を得るよう、実験の進行を促進させることを計画している。実験手技としては安定しており、特に実験の遂行には支障がないものと考えている。
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Research Products
(2 results)