2012 Fiscal Year Annual Research Report
脳内神経伝達からみた吸入麻酔薬の発達脳に与える影響とその解析
Project/Area Number |
24890234
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
菅澤 佑介 順天堂大学, 医学部, 助教 (80459114)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 吸入麻酔薬 / 脳内神経伝達 |
Research Abstract |
中枢神経系のGABAによる抑制作用は発達期においても重要な役割を果たしていると考えられており、それに対する麻酔薬の影響も懸念されている。我々は脳発達期のtonic電流に対する麻酔薬の影響についての実験を進めている。方法は日齢(P)3~35のマウス脳スライスを作成し、線条体:medium spiny neuron(MSN)からwhole-cell patch-clampを用いて細胞内電流を測定した。電圧は0mV固定とし、人工脳脊髄液にスライスを灌流、灌流液にセボフルランを添加し吸入麻酔薬のtonic電流に対する作用を観察した。結果はP3~35でtonic GABA 電流が記録され日齢を経るに従い増大し、P28で平衡状態に達した。また全ての日齢でセボフルランの添加によりtonic電流の増強が観られた。さらにGABA transporter (GAT)のtonic電流への影響を観察するため、GAT-1のblockerであるNO-711を添加した。NO-711の添加で同様にtonic電流は増大しその度合いはP14で有意に増大していた。これらの結果からはセボフルラン投与によってtonic電流が増強されており、吸入麻酔薬の作用機序としてtonic 電流が関与していることが示唆された。またNO-711の添加によりtonic 電流が増強していたことからセボフルランは内因性GABAに反応することが考えられた。さらにP14ではセボフルランへの作用程度が異なっておりP14付近の発達過程においてセボフルラン作用機序に対する変曲点があるように思われた。発達期においてはGABAA受容体サブユニットの構成変化が生じるとされており、このことがセボフルランの作用に影響している可能性がある。これらの結果をふまえ、発達期における吸入麻酔薬の作用とGABA受容体サブユニットの変化についての研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験を開始し順調にデータを得ることができているが、難しい実験手技に関してはまだ精度が足りない部分もある。継続的に実験を行いながらデータを蓄積し、実験手技にも習熟する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
以下に示す実験計画を遂行する。 実験1:GABA受容体に与える吸入麻酔薬の影響 エーテル麻酔下にマウスの脳を取り出し、スライサーにより250-300μmの厚さの大脳皮質-線条体-海馬スライスを作製、のち有酸素下に人工脳脊髄液(pH=7.4)中に置く。これにより約6時間以上の脳スライスの生存が可能となるが、その後、大脳皮質-線条体-海馬スライスを顕微鏡下に移し、Whole cell patch clamp法を行う。刺激電極は大脳皮質上に置き、各細胞の電気生理的発火パターンを確認してそれぞれの細胞の同定を行う。ここで吸入麻酔薬の添付をおこない、興奮性シナプスおよび抑制性シナプス後電位記録を取り、吸入麻酔薬によるシナプスへの影響を観察する。我々は既にGABA受容体の刺激薬であるMuscimolでの反応を得ているが、ここでは線条体や海馬における吸入麻酔薬のGABA受容体への応答を検討する。 実験2:虚血神経終末端のGタンパク質の伝達物質放出調節における吸入麻酔薬の影響 伝達物質の放出抑制に働く3量体Gタンパク質のほかに神経終末端内には単量体Gタンパク質が存在する。Gタンパク質の活性阻害薬や促進剤をそれぞれcalyx of Held神経終末端内に直接注入し、シナプス反応の振幅に対する作用をみる。また高頻度刺激によるシナプス抑制と回復時間を検討する。この高頻度刺激により枯渇したシナプス小胞の補給をこの単量体Gタンパク質は促進すると予想されるが、吸入麻酔薬への曝露によりどのような影響を受けるかを解析する。
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