2012 Fiscal Year Annual Research Report
成体マウスにおける胚子ヘモグロビン再発現機構の解析
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24890237
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
大塚 裕忠 昭和大学, 歯学部, 助教 (30634844)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 胚子ヘモグロビン / 転写制御因子KLF / 血リンパ節様構造 / 髄外造血 / 肝臓 |
Research Abstract |
昨年度は順調に研究が進められ、凡そ期待したとおりの結果が得られている。今回、実験の再現性を確認するために、実験動物の数を増やし、最適な投薬量や採材日を確定した。その結果、我々の用いた重症貧血マウスモデルでは、非常に高い確率で胚子期ヘモグロビンの発現を確認できた。 昨年度の実験計画通り、胚子ヘモグロビンを発現している細胞について、特異的プローブを用いたin situ hybridization法により、組織切片上でその存在を確認することに成功した。その結果、肝臓内では赤芽球系マーカーであるTER119を発現している細胞が胚子ヘモグロビンも発現して、コロニーを形成している状態が確認された。また、免疫電顕により、これらの細胞を確認している。末梢血に存在しているヘモグロビン発現タイプについての解析では、成体ヘモグロビンとは異なるグロビンタンパクについて確認している。また、特異抗体の作製が困難であったので、フローサイトメトリーを用いて解析を行い、形態学特徴について確認できている。胚子ヘモグロビンの発現機構に関する解析では、関連すると思われる転写制御因子の発現亢進や、プロモーター領域への結合などを確認した。これらの結果をまとめて、第41回日本免疫学会学術集会及び第118回日本解剖学会全国学術集会において発表している。 さらに本研究において、マウスの腹腔内に血リンパ節様構造が形成誘導された。この構造については、マウスでは全く報告がなく、詳細な解析については本年度の研究計画に盛り込んでいる。現在までに確認できている内容及び今年度の解析結果について学術集会等での報告を考えている。 若干の課題は残っているが有意義な結果が得られており、これらの内容はヘモグロビン変遷機構の解析の基礎データとしても非常に重要であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は予定していた課題を概ね達成できたと考えている。昨年度の計画のうち、①「胚子ヘモグロビン発現細胞の形態学的解析」については、十分な結果が得られている。②「末梢血ヘモグロビンタイプの解析」についても二次元電気泳動法による結果から、この内容を証明するデータが得られている。③「胚子ヘモグロビンに対するタンパクレベルの解析」は、このタンパクに対する特異的な抗体の作製が非常に困難であるために達成できていないが、他の方法により本研究に必要な結果が得られている。④「ヘモグロビン発現機構の解析」についても、関連すると思われる因子の発現や活性化についてデータが得られている。以上の状況からも本研究の昨年度中に期待していた結果は十分に得られており、順調に進展しているといえる。今回得られたデータは学術誌への投稿するのに十分な結果であると思われる。 また期待とは異なる結果も一部で得たが、これらについても考察が十分可能であり、今年度の実験に追加実験等を含めている。継続的な実験により、本研究の意義と達成度が高まるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は順調に研究が進み、十分なデータが得られた。本年度は得られたデータをまとめて専門学術誌に投稿し、研究成果を公開していく必要があると考える。学術誌への投稿は現在準備中であるが、投稿後の査読において指摘をされた内容を補完する追加実験が必要になる場合もあると考える。 昨年度中に凡その結果を得たヘモグロビン発現機構であるが、発現機構については複数の因子が関係している可能性が高く、完全に解析するまでには至らなかったと考える。また、正常な発生過程においても十分に分かっていない点も多い。したがって、本年度は発現機構の解析について、もう少し新たな視点から実験を進めるとともに、正常個体発生等についても解析を進めることで、新たな角度から本研究を確認することも考えている。 また、昨年度の研究中に偶然的に形成された血リンパ節様構造の詳細な解析について、形態学的、分子生物学的手法を用い、機能、由来や形成誘導因子などについて明らかにしたいと考えている。これらの解析結果については、学術集会等で発表、討論し、考察を深めた上で、最終的には学術誌への投稿まで進められるようにしたいと考えている。
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