2012 Fiscal Year Annual Research Report
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24890252
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
越智 健介 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (70445203)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 関節リウマチ / 機能障害 / 遺伝子解析 / ゲノム / 骨折 / 疾患活動性 |
Research Abstract |
患者選択と調整因子の解析:初回登録時と登録5年後のJ-HAQ(機能障害指数)データが得られた4,408名におけるJ-HAQ進行(HAQ slope)に関連する因子を検索した。5年間の経時的J-HAQの変化から算出したHAQ slopeを従属変数とし、重回帰分析により機能障害進行と関連する遺伝要因以外の因子を検討したところ、関節リウマチ(RA)の疾患活動性、女性、発症時年代、発症時年齢がJ-HAQの進行に関与していることが明らかとなった。この成果は2012年の米国リウマチ学会にて発表し、投稿準備中である。 ゲノムワイド関連解析(GWAS)およびバリデーション:このプロジェクトでのDNA利用について同意が得られている患者1,384 名を遺伝子解析の対象とした。このうち346名は他のプロジェクトですでにGWASが実施済であることから一次スクリーニングの対象とし、バリデーションにはGWAS未実施の1,038名を用いる予定とした。前記項目を調整因子、HAQ slopeを従属変数とし、各SNPを説明変数とする重回帰分析を行ったところP< 1 X 10-5をクリアしたSNPは存在しなかった。 関節リウマチ患者における骨折の特徴の解析:RA患者の機能障害の進行はRAの疾患活動性のみならず、合併症にも大きく依存する。そこで同時に、当施設のコホート調査を用いて9,720名のRA患者における骨折の特徴を検討した。その結果、複数回骨折は女性に多いこと、上下肢骨折は転倒によるものが多いこと、脊椎骨折は不顕性骨折が多いことなどが明らかとなった。上下肢骨折予防には転倒予防が特に有用なこと、脊椎骨折予防には骨粗鬆症治療が特に有用であることが明らかとなった。この成果はArch Osteoporosにオンライン掲載中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の当初の目的は、GWASを用いてRAの機能障害進行に関連する遺伝子を同定し、全体構想である効果的で経済的かつ患者満足度の高いオーダーメイド医療確立に寄与することであった。今年度の検討により、機能障害進行と有意に相関するSNPは存在しない可能性が高いことが明らかとなった。この成果により機能障害進行の抑制は後天的要素、つまり治療や予防が最も重要であることが示唆された。遺伝子解析による機能障害進行予防は困難なことは残念であるが、治療や予防介入により機能障害進行が予防できる可能性を明らかにしたことは意義深いと考えている。よって、本年度における本研究の達成度は高い。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の検討によって機能障害進行の抑制は後天的要素、つまり治療や予防が最も重要であることが示唆された。そこで今後は治療による介入方法や合併症の予防法の開発こそが、RA患者の機能障害を減少させるための最も重要な手段になると考えている。そこで残された研究期間、当センターにおけるIORRAコホート調査により以下の点を検討する。なお本コホート調査では参加全患者の同意が得られている。 1) 疾患活動性抑制と機能障害進行の関連解析 強力な治療によって疾患活動性と機能障害がともに抑制された症例と、疾患活動性が抑制されたにも関わらず機能障害が進行した症例における臨床因子の違いを検討する。昨年度の本研究により、RAの罹病期間と治療開始時の機能障害の程度が有意に相関していることが明らかとなった。このことはRA発症後早期から、機能障害が生じる前から積極的に強力な治療を行うことが、機能障害の進行を防止するために重要である可能性を示唆している。今後は疾患活動性が抑制された症例における機能障害進行の特徴を明らかにする。 2) 関節リウマチ患者における骨折の特徴と予防法 骨折はその受傷者の機能を著しく障害する。RAは骨折の危険因子であるため、RA患者の骨折を減少させることができれば、その機能障害の進行を予防可能となる。昨年度の本研究により、複数回骨折は女性に多いこと、上下肢骨折は転倒によるものが多いこと、脊椎骨折は不顕性骨折が多いことなどを明らかとなった。上下肢骨折予防には転倒予防が特に有用なこと、脊椎骨折予防には骨粗鬆症治療が特に有用であることが明らかとなった。今後は骨折の季節性、RA患者における上肢と下肢骨折の危険因子の違いなどを明らかにすることで、さらに有効な骨折予防法を具体的に明らかにする。
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Research Products
(3 results)