2012 Fiscal Year Annual Research Report
真菌症克服に向けた多糖抗原搭載型リポソームワクチン開発への基盤構築
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24890255
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
多田 塁 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (70635888)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | リポソーム / 多糖 / 粘膜免疫 / 全身免疫 / 真菌症 |
Research Abstract |
真菌細胞表面に存在すること、あるいは毒性の低さの観点から、真菌細胞壁多糖抗原は真菌症ワクチンの標的候補として有望である。しかしながら、真菌細胞壁多糖抗原に対し、免疫応答を誘導する方法論が乏しいことから、本課題の克服を目的とし、研究を進めた。 まず、粘膜アジュバント作用を有する正電荷リポソームに、免疫原性の低いことが知られているベータグルカンであるラミナリンを搭載させた「多糖抗原搭載型リポソーム」を作製した。 作製した「多糖抗原搭載型リポソーム」をマウスに経鼻投与することにより、多糖抗原に対する免疫応答を誘導できるか否かを、抗体産生を指標に検討した。短期間の投与あるいはベータグルカン低感受性系統であるbalb/cマウスにおいては、多糖抗原特異的な抗体産生は観察されなかった。また、ベータグルカン高感受性系統であるDBA/2マウスに対しても、短期間の投与では多糖抗原特異的な抗体産生は観察されなかった。そこで、種々の投与スケジュールを検討したところ、週1回の投与を4週間以上続けることにより、ベータグルカン高感受性であるDBA/2マウスに於いては多糖抗原特異的な抗体産生の誘導に成功した。 T細胞依存的に抗体産生を誘導する蛋白質抗原と異なり、その多くはT細胞非依存的である多糖抗原に対し、抗体産生を誘導する方法論の報告はほとんどないが、正電荷リポソームをアジュバントとして用い、多糖抗原を免疫することにより、多糖抗原特異的な抗体産生が誘導可能という、非常に興味深い結果を本年度に得ることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の検討により、1)、多糖抗原搭載リポソームの作製が可能となった。2)、はじめに、免疫原性の低いベータグルカン(ラミナリン)を搭載した正電荷リポソームを作製した。本リポソームを種々の投与条件(投与間隔、免疫スケジュール)を検討しながら、マウスに経鼻投与した。その結果、ベータグルカン高感受性マウス系統であるDBA/2マウスにおいて、多糖抗原に対し特異的な抗体産生が誘導されることを明らかにした。3)、真菌より多糖抗原の作製も平行しておこなった。 一方で本年度の検討項目であった、1)、リポソーム構成成分の最適化については、検討を行えていない。2)、用いる多糖抗原の選定に関しては、ベータグルカンであるラミナリンのみの検討である点、等の多少の遅れはあるものの、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により、ベータグルカンであるラミナリンを粘膜アジュバントである正電荷リポソームに内封し、DBA/2マウスに経鼻投与することにより、多糖抗原に対し特異的な抗体産生を誘導することが出来た。しかしながら、抗体誘導までに4週間程度が必要なこと、ベータグルカン低応答性マウスであるbalb/cに対して抗体産生誘導が出来ないこと、また、抗体誘導能が弱いなどの問題点も明らかになった。 そこで、本年度では、効果的な多糖抗原特異的な抗体産生の誘導を目的とし、1)、真菌より調製した他の多糖を抗原として用い、同様の検討を行う。2)、ベータグルカンをキャリア蛋白に結合させたバイオコンジュゲートを作製し、これを抗原として用い、同様の検討を行う。3)、免疫賦活能を有するCpG ODN等のToll like receptorリガンドを本正電荷リポソームと融合させることにより、アジュバント能の増強を試みる。 上記の検討と平行しながら、誘導された多糖抗原特異的抗体の抗真菌効果をin vitro、in vivoの両面で検討を行う。
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