2012 Fiscal Year Annual Research Report
眼疾患を有する人に対する、優しい街路灯の色や照度について
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24890278
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Research Institution | Osaka University of Human Sciences |
Principal Investigator |
桝田 浩三 大阪人間科学大学, 人間科学部, 准教授 (30637963)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 夜間視力 / 視機能評価 / 街路灯 / 暗所視機能 |
Research Abstract |
眼疾患がある場合、波長の異なる光りや照度の違いが視力にどの様に影響するかについて検討し、どの波長の光りや照度が眼疾患を有する人にとって見えやすいかを解明することにより、夜間の路上における安全性の向上につなげることを目的とする。平成24年度は、正常眼の対象者のみ測定を行い、実験モデルの確立と各年齢帯における平均値の検討を行った。 本研究にあたり、測定器機が発売されておらず、照明光の選定、視力測定方法、調光方法などの実験装置製作、手順を確立したのちに測定を行う必要性があった。照明光は、2種類の蛍光灯とナトリウムランプとし、各照明光は、波長約450nmの青色蛍光灯、青・緑・赤の3波長からなる白色蛍光灯、波長約600nmの橙色のナトリウムランプとした。薄暮の照度は、視標提示面で10 lx、1.0 lx、 0.1lxの3条件とした。測定手順は、明室において視力検査(5m)を行った後、暗所にて視力検査を行った。屈折異常がある場合は、明室での検査で使用した矯正レンズと同じ度数を使用し、視力測定を行った。測定は暗順応と色順応を行いながら、白色、橙色、青色の順に検査を行った。各色とも0.1lx、1.0 lx、10 lx、の順に明るさを変化させた。暗所における視力は3m用の字一つ視標を用いて視力の測定を行った。これまで得られた結果の概要は下記のとおりである。 白色、橙色、青色における視力は、照明光が暗くなるのに伴い値が低下した。視標提示面の照度10 lxにおいてのみ橙色と青色間で統計的な有意差が認められた。平均値としては、青色光が視力低下を示す傾向であった。 平成25年度は、緑内障眼、白内障眼、眼内レンズ挿入眼に対して測定を行う予定。また、これまでの正常眼の結果は、第67回日本臨床眼科学会にて発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究にあたり、測定方法の確立が早い段階でできるかが一番の問題点となっていたが、照明光や調光の管理、スムーズな測定手順を確立することができた。当初から既存の検査器機がなったため、何もないところからのスタートとなり、測定が開始できたことは大変喜ばしいことである。しかし、1回の測定には、暗順応と色順応を各色の光源に対して行う必要性があり、測定にはかなりの時間を要することが研究を遅れさせる要因となっている。また、本研究はほぼ完全な暗室の状態で検査を行う必要性があることから、測定場所を変えるなど絶対暗室の持たない施設にて測定する場合、日没後に行う必要がある。測定時間帯に制限を持つことが研究の進行を遅らさせるもう一つの要因となっている。昨年度は、測定手順の確立に時間がかかり、測定開始を予定していた時期から大幅に遅れてしまった。本年度は、決まった手順に従い検査を行うのみであり、遅れている分は十分に取り戻すことは可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、眼疾患を有する被験者に対して測定を行う予定である。眼疾患の内訳は、緑内障眼、白内障眼、眼内レンズ挿入眼である。正常眼の測定と異なり、眼疾患を有する眼に対する測定は、一人一人行う必要があるため、かなりの回数と時間を要することが容易に予想される。眼疾患の測定に関して、各疾患に優先順位をつけることで、各統計による解析が可能となる症例数を集める。優先順位は、緑内障を第1優先とし、眼内レンズ挿入眼、白内障眼の順とする。また、測定を行う場所をできるだけ多くすることで、測定症例を増やすことに努力する。 当初の研究計画から変更を行った点は、暗所の視力検査を行う際の視標提示面の照度を10 lx、1.0 lx、0.5lxの3種類として当初予定していたが、予備実験において1.0 lxと0.5lxの明るさが大きく変わらないことにより、視標提示面の照度を0.5lxから0.1lxに変更した。このことにより視力の変動を大きくとらえることができようになった。また、変更を予定していることは、緑内障の視野障害判定する方法である。研究計画の段階では、視野障害の程度はAulhorn分類Greve変法を用いて判定し、stage 1~2の緑内障を対象とする計画であったが、近年の視野異常の判定を行う傾向として、ハンフリー自動視野計を用いる方法が主流となってきていることから、変更を行うことにした。今回の研究における緑内障を有する被験者は、ハンフリー自動視野計によって測定された結果で、中等度視野異常と判定された人を対象とする。この変更による視野異常の程度は、ほぼ同程度であることから大きな違いを生じることはない。
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