2012 Fiscal Year Annual Research Report
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24890296
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
三木 寿美 公益財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, 研究員 (00632499)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | ホスホリパーゼA2 / 脂質 / 皮膚疾患 / 樹状細胞 / 抗炎症 / DHA / レゾルビン / 脂肪酸 |
Research Abstract |
本研究は、脂質代謝の観点からsPLA2-IIDによる接触性皮膚炎の収束メカニズムの全貌を解明すると共に、ヒト疾患への展開を視野に樹状細胞が関与する様々な炎症免疫疾患における炎症収束因子としての役割の普遍性を検討することを目的としている。 本年度は接触性皮膚炎 (Th1応答) における詳細な制御機構を解明するため、リンパ節の脂質メタボローム解析を行った。その結果、sPLA2-IIDはホスファチジルエタノールアミンからの高度不飽和脂肪酸プールの供給に関与しており、resolvin D1 (RvD1) や15-deoxy-Δ12,14-PGJ2 (15d-PGJ2) などの抗炎症性脂質メディエーターの産生を制御することが分かった。また、ω3脂肪酸のDHAや15d-PGJ2、RvD1は樹状細胞やリンパ節細胞のTh1サイトカイン産生を低下させ、樹状細胞の活性化マーカーであるMHC class IIの発現を抑制した。以上の結果から、sPLA2-IID は抗炎症性脂質メディエーターを動員する「抗炎症性sPLA2」であることが明らかとなり、sPLA2-IIDによる接触性皮膚炎の収束メカニズムが解明された。 現在、sPLA2-IIDの炎症収束因子としての役割の普遍性を検討するため、sPLA2-IID KOマウスにTh1応答以外の炎症免疫疾患モデルを適用中である。次年度は、これらの成果を基に、樹状細胞特異的にsPLA2-IID遺伝子を過剰発現または欠損させたマウスを用いて炎症病態におけるsPLA2-IIDの役割を検討したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
やや遅れている理由としては、樹状細胞特異的遺伝子改変マウスの導入が遅れており、樹状細胞に限定したsPLA2-IIDの機能を検討するための疾患モデル実験が行えていないことが挙げられる。樹状細胞特異的sPLA2-IID KOマウスについては、本年度中に樹状細胞特異的Creリコンビナーゼ過剰発現マウスと交配させられる段階まで進んでいるため、次年度中には遺伝子改変マウスを用いた疾患モデル実験が適用できる見込みである。一方、樹状細胞特異的sPLA2-IID遺伝子過剰発現 (Tg) マウスは、共同研究者によって既に樹立済みであるが導入手続きが遅れている。Tgマウスを用いた実験の遅れに関しては、全身性KOマウスから調製した樹状細胞を移植再構成したマウスを用いた疾患モデル実験を進め、Tgマウスを用いた実験データの対照となる基礎データの収集を行い、生理的妥当性を検討するための準備をする。 エクソソームを用いた実験は、既に質量分析による解析を開始して基礎データを収集している段階にあり、概ね順調であると判断される。現在、解析のための最適な条件を検討中であり、条件が決まり次第エクソソームに対する様々なsPLA2分子種の作用を検討して行きたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、樹状細胞特異的sPLA2-IID KOおよびTgマウスに対して免疫モデル実験を適用することに積極的に取り組む。Tgマウス導入のためには共同研究者との連絡を密にして導入手続きを可及的速やかに行い、モデル実験が直ちに適用できるよう準備を進める。実験結果の解析および考察には、前年度までに得られたKOマウスにおける免疫モデル実験の情報を対照データとして扱い、Th1免疫応答以外の炎症性疾患における本酵素の機能を順次検討して行く。 エクソソームとsPLA2の関連性を検討するためには、まず、リコンビナントsPLA2を用いて野生型マウス由来のエクソソームに対する作用を解析したい。この検討によってエクソソームとの関連性が見い出された分子種については、通常状態および炎症状態における遺伝子改変マウス由来のエクソソームの解析を行うことで、in vitroとin vivoの双方からエクソソームに対するsPLA2の生理的意義について検討する。
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Research Products
(5 results)