2012 Fiscal Year Annual Research Report
アポリポタンパクE遺伝子多型が認知機能低下に及ぼす主効果及び交互作用効果について
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24890302
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Research Institution | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
Principal Investigator |
谷口 優 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (40636578)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 認知機能低下 / 遺伝子多型 / MMSE / 日本語版MoCA |
Research Abstract |
東京都健康長寿医療センター研究所社会参加と地域保健研究チームが実施する「草津コホート」研究において、ApoE遺伝子多型解析、MMSE(Mini-Mental State Examination)及び日本語版MoCA(Montreal Cognitive Assessment:以下MoCA-J)を追加してデータの収集を行なった。 データの収集が完了した対象者は、群馬県吾妻郡草津町在住の65歳以上の地域在宅高齢者609名(女性56%、平均年齢74.3歳)であった。609名のうち、全血量が少なかった2名を除く607名のサンプルから総DNAが抽出できた。ApoE遺伝子のアミノ酸置換を伴う多型(Cys112Arg及びArg158Cys)について、TaqMan SNP Genotyping Assays(Aplied Biosystems)を用いて解析を行なった。また、MMSE及びMoCA-Jは591名からデータを得ることができた。ApoE遺伝子多型及びMoCA-Jの調査が完了し、かつ基本的属性のデータが得られたものは588名であった。 調査が完了し、データが揃った588名について、ApoE遺伝子多型を調べた結果、2/2が2名(0.3%)、2/3が45名(7.7%)、2/4が6名(1.0%)、3/3が433名(73.6%)、3/4が98名(16.7%)、4/4が4名(0.7%)であった。一方、各群の認知機能検査の結果は、MMSEの平均値がそれぞれ24.5点、27.5点、27.3点、27.5点、27.7点、28.3点であり、MoCA-Jの平均値がそれぞれ1.0点、0.9点、0.8点、0.9点、0.9点、1.0点(学歴を補正)であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り、平成24年度の「草津コホート」研究の中で実施された「にっこり健診」において、ApoE遺伝子多型解析、MMSE(Mini-Mental State Examination)及び日本語版MoCA(Montreal Cognitive Assessment:以下MoCA-J)を追加してデータの収集を実施することができた。ApoE遺伝子多型解析及び認知機能検査の実施に関する同意が得られた人数は、遺伝子多型解析が607名、認知機能検査が591名であり、両方のデータが揃ったのは588名であった。 この他にも、基本的属性、身体計測、血圧測定、尿検査、血液検査、身体機能測定(歩行機能、筋力、バランス能力)、心理社会的健康度測定(抑うつ度、高次生活機能評価)、口腔機能測定について調査を行っており、地域在宅高齢者の健康度を包括的に調査することができた。 調査の精度を上げることにも注力した。MoCa-Jは、東京都健康長寿医療センター研究所において作成された尺度であり、多領域の認知機能(注意機能、集中力、実行機能、記憶、言語、視空間認知、概念的思考、計算、見当識)を評価することができる尺度であるが、比較的新しい評価方法であるため、調査方法には注意が必要である。また、MMSEについても、ある程度熟練した調査員が携わることが望まれる。そこで、東京都内で心理学を専攻する大学院生に対して、十分なインストラクションを実施し、その大学院生が草津町での調査を一貫して担当した。 また、ApoE遺伝子多型解析についても、測定精度を担保するために熟練した者による実施が望ましい。そこで、東京都健康長寿医療センター研究所に在席する都内の分子生物学を専攻する大学院生が、測定を主に担当した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度も前年度と同様に、これまでの調査項目に遺伝子多型解析及び認知機能検査を追加して追跡調査を行う。 遺伝子多型解析は、平成24年度に調査に非参加または非同意であったものを対象とする。平成24年度調査に非参加で、平成25年度に新たに調査に参加したものについては、平成25年に同意を得た後、そのデータを今度の研究で追跡期間を延長する際のデータセットとして整備する。平成24年度調査に非同意で、かつ平成25年度に同意が得られたものついては、平成25年度の遺伝子多型データを平成24年度のその他のデータと結合し分析に供する。 認知機能検査は、MMSE及びMoCa-Jを用いて繰り返し調査を行う。平成24年度と平成25年度の両年の調査に参加した者のデータは、前年度の結果との間で差分を算出し、変化量、変化率及び認知機能低下のカットオフ値を用いて1年間の認知機能低下(以下:CD)の有無を調べる。 データの解析は、重回帰分析またはロジスティック回帰分析を用いる。解析モデルは、1)ApoE遺伝子多型を独立変数、MMSEまたはMoCa-Jにより評価したCDを従属変数として関連性を分析するモデル、2)ApoE遺伝子多型及び重要な交絡因子を共変量とし、身体機能(歩幅)及び栄養状態(RBC、Alb、HDL-C値)とCDの有無との関連性を分析するモデル、3)CDと最も強い関連性を持つ変数を抽出するモデルの3つである。統計解析には、SPSS (version 20.0; SPSS, Inc, Chicago, IL)を使用する。
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