2024 Fiscal Year Research-status Report
前転移ニッチ構成細胞を標的にした大腸がん根治術後再発予防法の確立
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24K11766
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| Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
米村 祐輔 九州大学, 大学病院, 助教 (00883993)
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| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三森 功士 九州大学, 大学病院, 教授 (50322748)
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| Project Period (FY) |
2024-04-01 – 2027-03-31
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| Keywords | GPC6メチル化ctDNA / CCL2/CCR2シグナル経路 / 前転移ニッチ / CAF(がん関連線維芽細胞) / DeepCOLOR解析 / プロパゲルマニウム(SK-818) |
| Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、乳がんにおいて確立された前転移ニッチ制御の分子標的治療戦略を大腸がんに応用し、術後再発予防法の確立を目指すものである。乳がんにおいて、我々はすでにCCL2/CCR2経路に注目し、転移関連ニッチを構築する宿主細胞を標的とすることで転移抑制効果を得ることに成功した(Yumimoto et al., J Clin Invest 2015)。特に、既承認薬であるプロパゲルマニウム(SK-818)の医師主導治験により、安全性が確認され、再発抑制の可能性が示唆された(Masuda et al., Cancer Sci 2020)。 今回、基盤研究Cの助成を受けて、大腸がんにおいても同様の戦略が展開可能であることを示す具体的な成果を得つつある。すなわち、我々はscRNA-seqおよびVISIUM解析により、大腸がん肝転移巣におけるGPC6高メチル化・低発現のCAF細胞が、CCL2を分泌することでT細胞のCCR2シグナルを活性化し、転移ニッチ形成を促進していることを明らかにした。これらCAFとT細胞とのクロストークは機械学習解析(DeepCOLOR)により同定されたものであり、乳がんと同様にCCL2が中心的な役割を担うことが示された。さらに、大腸がん症例の血漿中ctDNAにおけるGPC6プロモーター領域のメチル化状態と、組織レベルでのCAF由来GPC6発現の低下との相関も確認されつつあり、乳がんでのMRDモニタリングと同様の分子マーカーによる予後予測が可能であることが示唆された。 以上より、乳がんにおける実績と同様の技術・戦略が大腸がんにも応用可能であることが明確となり、基盤研究Cの支援により、異なるがん種間での治療戦略の横展開と再発予防法の確立が現実的な段階に達しつつある。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の進捗は、研究計画に基づく解析手法の確立、試料収集、成果の抽出が計画通り進行しており、概ね順調と判断される。まず、我々は乳がんにおいて確立したCCL2/CCR2シグナル経路に着目した前転移ニッチ制御戦略を、大腸がんへと展開するにあたり、scRNA-seqおよびVISIUM解析による空間的トランスクリプトーム解析を導入した。これにより、大腸がん肝転移巣においてGPC6高メチル化・低発現のCAF細胞がCCL2を分泌し、T細胞のCCR2を介したクロストークによって免疫寛容的ニッチを形成していることが明らかとなった。これは、乳がんにおけるプロパゲルマニウム(SK-818)の標的経路と同様の機序であり、がん種を超えたメカニズムの共有性を示唆する成果である。 さらに、血漿中のメチル化ctDNAの解析では、GPC6のプロモーター領域のメチル化状態が再発の予測因子となることが示され、乳がんでのMRDモニタリングにおける実績と同様の成果を大腸がんでも再現できた点は特筆に値する。また、DeepCOLORを用いた機械学習ベースの解析により、GPC6低発現CAFと共局在するT細胞の空間配置や、CCL2の局所的発現とその下流応答の特徴づけにも成功しており、今後の治療標的の絞り込みに向けた基盤が構築されつつある。 これらの成果は、乳がんにおける基盤技術を異なるがん種に応用する「戦略的横展開」の実証例であり、基盤研究Cによる支援が大腸がんにおける新たな再発予防戦略の開発に資するものとなっている。以上より、本研究の進捗は研究目的に照らして極めて順調であり、次段階である機能検証および臨床応用への展開も見据えた段階に到達していると評価される。
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| Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進においては、乳がんで得られた成果を基盤とし、大腸がんにおける予防医学的アプローチとして臨床応用可能な再発予防戦略の確立を目指す。具体的には、乳がんにおいて我々が医師主導治験で実証したプロパゲルマニウム(SK-818)によるCCL2/CCR2経路の抑制による転移抑制効果、および腫瘍免疫環境の改善を、大腸がんにおいても再現可能であることがscRNA-seqおよびVISIUM解析から示唆されている。 今後はまず、ヒト大腸がん肝転移巣の臨床検体におけるGPC6高メチル化CAF細胞とT細胞の空間的共局在性を組織免疫染色およびデジタルパスロジーにより検証し、CAF由来CCL2の発現とT細胞CCR2経路の活性化の存在を確認する。次に、GPC6メチル化ctDNAと転移ニッチ形成との相関を血中マーカーとして確立し、モニタリング体制を構築する。 さらに、マウス脾注肝転移モデルを用いたin vivo実験において、SK-818の投与により転移巣の形成および拡大が抑制されるかを検証する。このモデルではscRNA-seqによる転移組織の空間的免疫構成の変化を同定し、DeepCOLOR解析によりCAF-T細胞間のクロストーク遺伝子ネットワークの変化も定量的に評価する。 これらの成果を基盤に、今後は術後再発ハイリスク大腸がん患者に対してSK-818を用いた予防的治療介入の第II相医師主導治験を計画し、乳がんに続く「予防医学としての再発制御」のがん種横断的戦略を実装可能とする。さらに、GPC6メチル化状態を伴うctDNAモニタリングをコンパニオン診断とすることで、患者選択における個別化医療の実現と治療効果の最大化が期待される。 以上の方策により、本研究は乳がんで確立したニッチ制御の概念を大腸がんに拡張し、再発抑制を通じて真の予防的介入型がん医療の創出に貢献することができると考える。
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[Presentation] 大腸癌における新規ドライバー遺伝子候補SEC61Gの同定とその臨床的意義2024
Author(s)
樋口智,増田隆明,河田古都,大渕昂,池原智彦,巽孝成,小野裕也,渋田祥平,松本千尋,細田清孝,中野祐輔,大楽勝司,阿部正,安東由貴,廣瀬皓介,津田康雄,長尾吉泰,米村祐輔,植村守,江口英利,土岐祐一郎,三森功士
Organizer
124回日本外科学会定期学術集会
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[Presentation] 大腸癌における新規ドライバー遺伝子SEC61 Translocon Subunit Gamma(SEC61G)の同定とその臨床的意義2024
Author(s)
樋口 智, 増田 隆明, 河田 古都, 大渕 昂, 池原 智彦, 巽 孝成, 小野 裕也, 渋田 祥平, 細田 清孝, 廣瀬 皓介, 津田 康雄, 米村 祐輔, 植村 守, 江口 英利, 土岐 祐一郎, 三森 功士, 三森 功士
Organizer
第83回日本癌学会学術総会
Int'l Joint Research
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[Presentation] 極性遺伝子PARD6BはMYC発現を介して大腸癌の腫瘍増殖能を促進する2024
Author(s)
廣瀬 皓介, 増田 隆明, 松本 千尋, 池原 智彦, 巽 孝成, 細田 清孝, 安東 由貴, 津田 康雄, 大津 甫, 米村 祐輔, 三森 功士, 三森 功士
Organizer
第83回日本癌学会学術総会
Int'l Joint Research
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