2024 Fiscal Year Research-status Report
現代米国におけるクリスチャン・ナショナリズムの動向に関する民族誌的考察
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24K15465
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| Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
渡辺 靖 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 教授 (70317311)
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| Project Period (FY) |
2024-04-01 – 2027-03-31
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| Keywords | クリスチャン・ナショナリズム / ナショナリズム / アメリカ / 保守 |
| Outline of Annual Research Achievements |
アイダホ州のコーダレーン市(クートニー郡の郡庁所在地)においてフィールドワークを行った。同市は同州北西部最大の都市であり、人口(約5万5000人)の93%が白人(2020年国勢調査)である。かつては金や銀の鉱山で栄え、近年は高級リゾート地として急成長している。
その一方で、同州北西部は「アメリカ堡塁」(American Redoubt)運動の中心地としても知られる。同運動は2011年に終末論的なサバイバリスト作家ジェイムズ・ウェズリー・ローレスが、保守派信者にワシントンやオレゴン、カリフォルニアなどの西海岸のリベラル州からの「撤退」をブログで呼びかけたことに端を発する。ローレスはワシントン州やオレゴン州、モンタナ州に囲まれた同州北西部のパンハンドル地域をクリスチャン・ナショナリストの「堡塁」にすることを提唱し、実際に移住者が急増している。同運動については「白人エスノステート」(白人のみが市民権なり居住権を持つ州ないし地域)の創設を企図する白人ナショナリズムに連なるものとして、米国の有力人権団体は警戒している。
本研究のフィールドワークではそうした移住者や地元の有力教会や牧師、共和党、行政府、司法府、立法府、メディア、教育機関(アイダホ大学コーダレーン校など)、医療機関、環境団体、人権団体などを主たる調査対象に想定している。初年度は実際に現地を訪れ、市長や教会関係者、牧師などへの貴重なヒアリングを実施することができた。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はアイダホ州北西部のコーダレーン市におけるフィールドワーク(参与観察)に基づく民族誌的手法によってクリスチャン・ナショナリストの米国理解(自画像)や世界認識(世界観)を内在的に捉えつつ、保守派内における論争や相剋、ワクチンや気候変動、選挙制度などをめぐる陰謀論との関係を探り、その今日的特徴を明らかにすることを射程とする。 具体的には、令和6年(2024年)から3年間、毎年8月(初年度は30日間、翌年・翌々年度は15日間)をコーダレーンにおけるフィールドワークに充てる。移住者や地元の有力教会や牧師、共和党、行政府、司法府、立法府、メディア、教育機関(アイダホ大学コーダレーン校など)、医療機関、環境団体、人権団体などを主たる調査対象に想定している。 初年度は実際に現地を訪れ、市長や教会関係者、牧師などへの貴重なヒアリングを実施することができた。
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| Strategy for Future Research Activity |
引き続き、同市でのフィールドワーク継続を予定している。その一方で、ワシントンD.C.やフィラデルフィア、ボストンなどにおける関係団体や専門家へのヒアリングなどに充てたい。具体的には反ワクチン系団体として知られるChildren’s Health Defense、反陰謀論・反ヘイト系団体として知られるCenter for Countering Digital Hate(以上、ワシントンD.C.)、学術機関としてハーバード大学のShorenstein Center on Media, Politics and Public Policy(ボストン)、ペンシルバニア大学のDepartment of Medical Ethics and Health Policy(フィラデルフィア)などを想定している。いずれもクリスチャン・ナショナリズムとの関係性が指摘されている。同市におけるミクロな調査データをよりマクロな政治・経済・文化的な変容の中で解釈すべく。同市以外の動向などにも注目し、必要とあればフィールドワークを行いたい。
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| Causes of Carryover |
当初予定していたヒアリング先がアメリカ大統領選挙(2024年11月)に関係していたため、物理的にフィールドワークが困難になったため。2025年度は再訪を検討している。
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