2024 Fiscal Year Research-status Report
Understanding of Phase Separation Dynamics in Polymer Blends Using Probe Dielectric Techniques
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24K17023
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| Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
佐藤 健 金沢大学, 設計製造技術研究所, 助教 (70883536)
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| Project Period (FY) |
2024-04-01 – 2026-03-31
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| Keywords | 非絡み合い高分子系 / 高分子ブレンド / レオロジー / 誘電緩和 / 粗視化分子動力学 |
| Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、鎖に沿った双極子を持つ高分子(いわゆるA型高分子)をプローブとする誘電緩和測定およびレオロジー測定に基づき、成分鎖のダイナミクスに着目して相分離過程を精密にモデル化する手法の開拓を目的とした。本年度は、誘電プローブ法の予備検討を進めるとともに、成分鎖のダイナミクスを直接追跡できる粗視化分子動力学(CGMD)シミュレーションを行い、相分離した高分子ブレンドのレオロジー特性を検討した。 研究代表者の異動に伴い、本年度は新しい実験環境の整備に向けた予備検討を行った。まず、移設したレオメータに装着可能な誘電アクセサリの導入をデモ測定によって検討した。しかし、A型高分子サンプルは低誘電率のため、単純な導入だけでは十分でないことが明らかとなった。今後は、誘電測定用治具の設計を進め、誘電緩和測定環境の早期整備を計画している。 一方、CGMDシミュレーションでは、ミクロレベルの相構造とレオロジーの関係を調査した。実験条件と定性的に対応させるため、ガラス転移温度にコントラストを持たせた非絡み合い高分子の二成分ブレンドを対象とした。ここでは、高分子の標準的なCGMDモデルにおいて、角度ポテンシャルの強度を変えることでガラス転移温度を調整した。ミクロな相分離状態および均一混合状態を用意し、それぞれの構造に対するせん断レオロジーを調べた。その結果、構造の違いに起因して、せん断応力や法線応力差の時間発展に差が見られた。また、相構造形成後に粗視化粒子間の相互作用を標準値に戻したときのせん断シミュレーションでは、分離したブレンドのレオロジー挙動が、ブレンドを構成する単一高分子のレオロジー挙動の重み付き和として表現できることを確認した。この知見を基盤として、今後は相互作用パラメータを系統的に変化させ、CGMDシミュレーションのデータをさらに蓄積していく予定である。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、研究代表者の異動初年度であり、新たに実験環境を立ち上げる必要があった。誘電プローブ法によるA型高分子の誘電緩和測定のため、旧所属から移設したレオメータ用の追加アクセサリ導入を検討したが、そのままの形では想定した誘電緩和挙動を測定することが困難であるとわかった。原因は、サンプルホルダが低誘電率のサンプルに不向きであったためと考えられる。そこで、2024年度後半から新たな治具の設計やLCRメータの手配を進め、2025年度前半までに誘電緩和測定が可能な環境を整えることを目指している。鎖に沿った双極子を持つA型高分子のサンプルとしては、ポリイソプレンやポリプロピレンオキシドを想定しており、A型高分子と非A型高分子を含むブレンドを調整し、測定準備が整い次第検討を開始する予定である。 一方、CGMD法による相分離高分子ブレンドの検討では、初期構造の準備やせん断シミュレーションのプロトコルをおおむね確立できた。実験で観測されるスケールとの隔たりを克服する必要はあるものの、CGMD法によって、微視的な数値実験の観点から、実験のみでは得られない重要な情報を獲得できると考えている。2024年度の準備状況をふまえ、今後はより広範なパラメータ領域で検討を進め、成分鎖のダイナミクスに関する知見を蓄積していく予定である。 以上、CGMDシミュレーションによる微視的ダイナミクスの検討は進展があったものの、代表者の異動の影響もあり、実験面では十分な進捗は得られていない。総合的に見て、研究はやや遅れていると判断した。
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| Strategy for Future Research Activity |
2025年度は、当初計画の誘電プローブ法による実験と、新たに着手したCGMDシミュレーションを並行して進める予定である。 前者の誘電緩和測定では、ガード電極付き平板電極を備えたサンプルホルダの設計とLCRメータの導入を本予算で遂行し、2025年度前半に測定準備を整える。鎖の大規模運動が誘電活性であるA型高分子液体の単体を対象に、複素誘電率の周波数依存性を測定し、導入した実験セットアップの性能を確認する。結果に基づき、2025年度後半にはA型高分子/非A型高分子ブレンド系に対して誘電プローブ測定およびレオロジー測定を実施する。サンプルとしては、先行研究で相溶性が調べられているポリプロピレンオキシド/ポリアクリル酸ブチル系などを想定している。非絡み合い高分子の標準メソスケール模型であるRouse理論を用いて測定結果を解析し、ブレンド中の成分鎖のダイナミクスを支配する摩擦係数を定量する予定である。 CGMDシミュレーションによる検討では、モデル中の角度ポテンシャル強度を変更することで、ガラス転移温度を調整した高分子を準備する。ブレンド作成段階では、微視的な粒子間相互作用を変更することによりブレンドの相構造を変化させる。解析では、微視的な粒子間相互作用をメソスケールのFlory-Huggins理論における相互作用パラメータに置き換えて考察し、実験と対応付ける予定である。また、作成したブレンドに対してせん断レオロジーのみならず成分鎖の拡散挙動なども定量し、成分鎖ダイナミクスの検討を進める予定である。 以上の研究により、高分子ブレンドにおける相分離に対する実験およびCGMDシミュレーションのアプローチを確立する。
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| Causes of Carryover |
本年度は、誘電プローブ法の実験装置立ち上げのために、いくつかの装置を用いたデモ測定を行った。まず、旧所属から移設したAnton Paar社製のレオメータに同社の誘電アクセサリを装着することで所望の物性が測定できるか検討した。また、同社の基本アクセサリよりも高性能なLCRメータを装着することで低誘電率の高分子の誘電緩和挙動を計測できるか調査した。以上2点を行ったものの、本研究で必要な精度で誘電物性を計測することができなかった。この結果から、電極板を装備したサンプルホルダを自作することが重要であるとわかった。そこで、当初予定したAnton Paar社製のアクセサリ導入を取りやめたことから、次年度使用額が生じることとなった。 次年度(2025年度)は、当初の予定の誘電プローブ法による計測を行うために、サンプルホルダの作成費およびLCRメータの導入のために予算を用いる計画である。予算の使用予定時期は遅れたものの、用途に変更はない。この実験装置一式の立ち上げを2025年度前半までに行う。その他の予算については、当初の予定通り、解析用ノートPCの導入や消耗品の購入のために用いる予定である。
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