2015 Fiscal Year Annual Research Report
少子高齢化からみる階層構造の変容と格差生成メカニズムに関する総合的研究
Project/Area Number |
25000001
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
白波瀬 佐和子 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (00361303)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 嘉倫 東北大学, 文学研究科, 教授 (90196288)
石田 浩 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (40272504)
数土 直紀 学習院大学, 法学部, 教授 (60262680)
中村 高康 東京大学, 教育学研究科, 教授 (30291321)
有田 伸 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (30345061)
|
Project Period (FY) |
2013 – 2017
|
Keywords | 少子高齢化 / 社会階層 / 格差生成メカニズム / 職業経歴 / 社会階層意識 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度における研究実績は大きく4つある。第1に、2015年「社会階層と社会移動に関する全国調査」(SSM調査)の実施、第2に第3回「中高年者の生活実態に関する継続調査」(中高年パネル)の結果発表、第3に国民生活基礎調査を用いた基礎分析、そして第4に定住外国人に関する調査に向けた検討の開始、である。 平成27年度の研究実績として最も重要なのは、2015年SSM調査の実施を完了し、データクリーニング・コーディング作業に着手、第1次データの作成を行ったことである。本調査の職業経歴情報として、面接調査最終学歴終了後最初に就いた仕事(初職)から調査時点の仕事状況までを詳細に聞き取るのは調査員にとって負担も多く、2015年度調査は2度に分けて調査を実施した。2015年SSM調査の配布総数16,000ケースに対して7,776ケースを回収し、平成27年12月末時点で48.3%の回収率を得た。 調査実施後3回にわたってデータコーディング、クリーニング作業のための合宿を行い、関東(東京)、関西(大阪)、東北(仙台)での地域別研究会を2~3回開催した。 第3回中高年パネル調査では、SSM調査で実施した面接調査法を採用して回顧式の職業経歴についての質問を組み込み、個人を追跡するパネル調査方法をリンクさせる試みを行った。第3回調査では3,096ケースに対し、従来の郵送回収・訪問回収法による留置票2,685ケース(86.7%)、面接票2,385ケース(77.0%)の回収があった。2015年12月22日、東京大学より結果概要を公表した(http://www.1.u-tokyo.ac.jp/ssm_spr/result_20151222.pdf)。国民生活基礎調査については1980年代から2010年代半ばまでの3年ごとの個票データを用いて、急激に高齢化した高齢層の所得格差についての分析を進め、結婚、出産に伴う経済的逸失程度について擬似パネルコーホート分析を進めた。 日本の階層構造を検討するにあたって、定住外国人が増加している背景とも相まって、エスニシティ変数を積極的に考慮する時期に来ている。そこで、タスクフォースを組織し、定住外国人に関する検討をはじめた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年SSM調査は、詳細な回顧式の職業経歴に関する質問する本調査の特徴を健持しつつ、70代を調査対象者に加えた。調査への協力度が高い高齢層が増えたが、本調査内容は長い人生の歩みを聞き取る調査であり、調査環境が悪化する中、母集団の代表性を確保する回収率の確保は大きな課題であった。不運にも、2015年6月日本年金機構の個人情報データ流出があり、2015年度調査の2回目調査開始時期と重なって、調査の出だしから苦戦した。それでも、詳細な聞き取りを含む面接調査と留置き調査を併用する本調査のボリュームを考え、昨今の厳しい調査環境を鑑みると、48.3%の回収率は大規模な全国調査として良好といえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、2015年SSM調査の職業経歴関係のデータコーディング・クリーニング作業をさらにすすめ本データを確定して、積極的に分析研究を進めていく。具体的には、学術ジャーナルへの投稿、学会発表、カンファレンスの開催等を通して成果を発信していく。そこでの研究運営体制は、テーマ横断的な地域別研究会とテーマごとの学会スタイルの全体研究会を同時に開催していく。 2015年の横断的なSSM調査に次いで、平成28年度は2つのパネル調査「中高年者の生活実態に関する継続調査」と「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査」を実施する。前者は2010年以来2年ごとに実施し、後者は2007年以来毎年実施されている。若年から中年、老年期と青年期以降のライフステージ全般に渡るパネル調査データは極めて重要で、積極的に研究成果を発信していく。 今年度開始した、定住外国人(移民)に関する検討を進める。将来的なSSM調査に定住外国人を考慮した調査設計について検討できるような基礎データを提供する。平成28年度は、3つ程度の自治体における住民基本台帳から定住外国人を無作為に抽出し郵送留置型の調査を実施することを検討中である。 また、政府統計データの活用も積極的に進める。特に、国民生活基礎調査、就業構造基本調査、全国消費実態調査等をもって、本調査データの分析と既存の政府統計データ分析を有機的に関連させ、わが国の階層構造の実態を明らかにしていく。
|
Research Products
(37 results)