2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25000007
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北川 進 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 教授 (20140303)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 弘志 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 助教 (20598586)
有川 敬 京都大学, 理学研究科, 助教 (70598490)
KIM Franklin 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 助教 (10608566)
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Project Period (FY) |
2013-04-26 – 2018-03-31
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Keywords | 細孔 / 錯体 / 吸着 / 階層化 / 複合化 |
Research Abstract |
1. 究極分離細孔 (1)室温常圧分離 一酸化炭素/窒素の効率的分離を可能にする材料を発見した。極めて困難な分離を可能としたPCPでは、COが取り込まれることによって、さらに多くのCOを次々に細孔内部へ呼び込むまったく新しいメカニズムに基づくことを明らかにした。この結果は、Science誌にて発表した(Science, 2014, 343, 167)。また、同様の構造を有するPCPは水吸着に伴い、特異な構造変化を示す事を見つけた。 (2)同位体分離 吸着においてH20とD20の間で、顕著な差を示すPCPを発見している。この現象においては、柔軟な構造を有するPCPが与えるナノ空間における水のクラスター形成が示唆された(論文投稿中)。 2. 物質変換細孔 (1)異性化制御に基づく物質変換細孔 ビニルアルコール-アセトアルデヒドの平衡を、細孔内部で大きく偏らせることでポリビニルアルコールの直接合成に挑む。実際の合成に先立ち、計算化学的手法による検討を行った。ルイス酸点として働く配位不飽和金属サイトと水素結合サイトを細孔表面に適切に配置することで、目的とする平衡を制御できる可能性を見いだした。 (2)動的金属クラスターとの複合化による物質変換細孔 サブナノ金属クラスターの効率的合成を可能とする新規PCPの合成に挑戦した。この過程において、従来法では不可能であった活性サイトを導入する手法を開拓できた(論文投稿準備中)。 3. 異方的物質輸送細孔 (1)炭素材料との複合化による空間の階層化 異種材料との複合化による異方的空間の構築を目指し、PCP結晶と炭素材料との複合化による空間の階層化を試みている。その第1ステップとしてグラフェンオキサイドからなる球状構造体の合成に成功した(論文投稿済み)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3つの具体的目標(「分離」「変換」「輸送」)達成に向けて順調にしている。とりわけ「究極分離細孔」については、従来材料では極めて困難であったターゲット(一酸化炭素/窒素、H20/D20)について、顕著な成果を上げることができた。現象論に加えて、それぞれの分離に於いて新たなメカニズムを提唱する事ができた。より高性能な材料開発のためには、詳細な原理解明が必要であり、今後は研究分担者間の協力体制構築が不可欠である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の具体的な各目的については顕著な成果を上げつつある。今後は多彩な「階層的配位空間物質」を創製するとともに、「階層的配位空間における新現象」を発見し、この空間に特有の法則を見出し、新しい空間の学問領域を築き上げるためにも階層性に着目した実験を進める必要がある。そのためには研究分担者間の連携が不可欠である。この点については既に共同研究を開始しており、さらなるジャンプアップが期待できる。その他25年度に生じた問題点と解決策を以下に記す。 1. 研究場所 PCP合成を担当するチーム(佐藤担当)は実験設備設置スペースの問題から、平成25年度中は京大桂ベンチャープラザ(独立行政法人中小企業基盤整備機構)および京大桂キャンパス内の桂インテックセンターという2カ所で研究を進めて来た。これら2カ所の実験施設には物質合成および機能評価のための測定装置が設置されており、頻繁に行き来するものの、物理的な距離のため、安全・効率の面から望ましくない。また、賃料の面からも桂インテックセンターに集約する事が望ましいため、平成26年度夏までに設備移設・集約を行い、効率化を図る。本報告書作成時において既に一部実験設備の移設を開始している。 2. 中性子回折実験に関して H20/D20分離においては柔軟な細孔内部に置けるクラスター形成が鍵を握っている事が示唆された。それらクラスター構造を探るための有力な実験の一つが中性子回折実験であり、平成25年度中に大強度陽子加速器施設(J-PARK)でのマシンタイム確保を行っていた。しかしながら、平成25年5月23日に発生したハドロン実験施設での放射性物質漏えい事故の影響でキャンセルとなった。今後改めて実験を行う予定である。具体的な実験内容としては、ガラスキャピラリー中に水(H20またはD20)を吸着した単結晶試料を封入し、回折実験を行う。得られた回折データを基に構造解析を行う事で、細孔内において形成された水クラスターの構造を解明する予定である。
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Research Products
(20 results)