2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25000012
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北村 隆行 京都大学, 工学研究科, 教授
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Project Period (FY) |
2013 – 2017
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Keywords | single digitナノ / ひずみ集中場 / 破壊力学 / 負荷実験 / その場観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
H29年度の研究実績は、以下のように纏めることができる。1. 厚さが異なり、single digitナノスケールの特異応力場を有するシリコン(Si)ナノ単結晶試験片を複数本作製し、高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)観察下で破壊試験を実施した。その結果、試験片の厚さは破壊じん性に影響を及ぼさないことが明らかになった。これは、別途実施した分子動力学シミュレーションの結果とも一致している。さらに、より小さな原子レベルの応力集中に起因した破壊の力学的支配因子を明らかにするために、チタン酸ストロンチウム(SrTiO_3)ナノ単結晶試験体に原子レベルの線欠陥である刃状転位を制御して導入し、原子レベルその場観察破壊試験を実施した。破壊は転位を起点として生じ、転位が無い試験片に比べて強度は約30%低下した。転位芯近傍を第一原理解析及びその周囲に対して分子動力学解析を用いた量子力学/分子力学(QM/MM)ハイブリッド解析を実施し、転位を起点として破壊する際の条件(破断ひずみ)を得た。解析結果と実験結果は良い一致(破断ひずみ : 約3%、転位位置に原子レベルのステップが残存する破面が両者ともに発生)を示した。解析結果より、負荷の増加とともに転位から微小き裂が発生することで、転位はき裂と同様の特異場を生じることが明らかになった。また、破断時の応力拡大係数は、バルク材のそれと一致した。すなわち、転位からの破壊においても破壊力学の概念は有効であることを示した。最終的に前年度までの結果を合わせて、single digitナノスケール場からの破壊に関する総合検討を行った。2. 強誘電材料であるチタン酸バリウム(BaTiO_3)を対象として、引張負荷を実現するナノ試験片を設計・作製した。フェーズフィールド法及び大規模解析用計算サーバーを用いてマルチフィジックス解析を行い、材料寸法がナノオーダーまで小さくなると、表面の効果によって、特有の縞状ナノドメイン構造を発現することを示した。実験においても、ドメイン構造を特定するための透過像観察条件を特定し、試験片サイズをナノオーダーまで小さくした際、異なる分極領域によって構成される縞状ナノドメイン構造が生じることを確認した。試験片に対して高分解能透過型電子顕微鏡観察内で引張負荷試験を実施し、負荷ひずみによってナノドメイン構造が消失し、除荷した際にはナノドメインが再度現れるマルチフィジックス特性を明らかにした。さらに、ナノレベルのひずみ集中場のマルチフィジックス特性について検討するため、転位芯が自発的に作り出すナノレベルのひずみ集中場に着目し、そのマルチフィジックス特性を検討した。BaTiO_3中の刃状転位では渦状、らせん転位ではらせん状の自発分極が芯部近傍に発現することを示した。これは、ナノひずみ集中場がナノレベルの機能性(強誘電性)をつくり出すことを示している。
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