2016 Fiscal Year Annual Research Report
南極点複合ニュートリノ望遠鏡で探る深宇宙-高エネルギーニュートリノ天文学の始動
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25220706
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
吉田 滋 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (00272518)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石原 安野 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40568929)
間瀬 圭一 千葉大学, 大学院理学研究院, 助教 (80400810)
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Project Period (FY) |
2013-05-31 – 2018-03-31
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Keywords | ニュートリノ / 宇宙線 / 素粒子実験 / 南極 |
Outline of Annual Research Achievements |
IceCube 実験 7 年分のデータを用いた超高エネルギー宇宙ニュートリノ探索解析の結果を論文にまとめ Physical Review Letters に出版した。Editor's suggestion にも選定されたこの論文では、10 PeV を超えるエネルギーをもつニュートリノが存在しなかったことから、超高エネルギー宇宙線起源天体は、γ線バースト や クエーサー など宇宙進化度の高い天体ではなく、星形成率程度の進化度をもつ天体か、もしくは宇宙線の組成は陽子が卓越していないことを示した。超高エネルギー宇宙線起源の有力候補であったこれらの天体が、起源天体ではない可能性をニュートリノ観測から初めて明確に示すことになった。 さらにリアルタイム解析によるアラートシステムの本格運用を開始し、その概要を Astroparticle Physics 誌に論文として出版した。ニュートリノから展開するマルチメッセンジャー天文観測を実現するプラットフォームが出来上がったことになる。
検出器埋設容量外側を通る輝度の低い事象を含めることによる、宇宙ニュートリノのエネルギースペクトルのPeV-EeV領域での形状を測定する解析では、信号同定アルゴリズムを決定し、PeV 領域で従来の2.5倍の感度で宇宙ニュートリノを同定する能力を持たせることに成功した。2013年からの4年半の観測データを、この手法で解析した結果、6 PeV のエネルギーを持つニュートリノ事象の同定に成功した。このイベントの詳細解析を続行中である。
ARA実験検出器の一部を南極に運び、現地で較正実験を行った。検出器応答を南極氷河の環境下で実施し、電波暗室で事前に測定したゲイン応答と異なる周波数帯があることが分かった。この結果をうけ、検出器モデリングの手法を再考し、データ解析に組み込み可能な形に再構築することとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IceCube 実験データの解析は予定どおり進行し、論文にまとめることができた。6 PeV のエネルギーをもつ最高エネルギーニュートリノの発見は予想を超えた成果である。またリアルタイム解析システムも予定どおり本格稼働し、電波、可視光、X線からγ線にいたる幅広い波長域での電磁波観測と連携して、高エネルギー宇宙線起源天体を同定する準備を整えることができた。
ARA実験の検出器の南極での信号応答が予想とやや違うことは想定外であったが、対処は可能であり、最終年度での建設に向けて大きな問題は存在しない、
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Strategy for Future Research Activity |
検出器埋設容量外側を通る事象を拾う新解析手法による PeV 領域の宇宙ニュートリノ測定結果を論文として公表する。
ARA 実験の建設にむけて検出器製作を継続するとともに、信号応答の理解とモデリングを進める。
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