2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25220801
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
今堀 博 京都大学, 物質ー細胞統合システム拠点, 教授 (90243261)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅山 有和 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30378806)
高野 勇太 京都大学, 物質ー細胞統合システム拠点, 助教 (60580115)
村上 達也 富山県立大学, 工学部, 教授 (90410737)
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Project Period (FY) |
2013-05-31 – 2018-03-31
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Keywords | 光電荷分離 / 有機太陽電池 / ナノカーボン / ポルフィリン / 人工光合成 / 太陽エネルギー変換 / 電子移動 / 光遺伝子工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)ドナー(D)であるポルフィリン(ZnP)とアクセプター(A)であるフラーレンを堅固な1次元状でかつ共役しない架橋で連結し、系統的に距離を変化させることで光電荷分離に対するD-A相互作用の効果を検討した。従来見過ごされていたが、初期に生成した一重項電荷分離状態は過渡吸収が極めて弱い三重項励起錯体を経由して三重項電荷分離状態を生成することを見出した。さらに最終的に生成する三重項電荷分離状態収率はD-A相互作用に強く依存し、最適化が可能であることを初めて実証できた。本知見は人工光合成、有機太陽電池を高効率化する上で極めて重要な情報に成りうる。また、カーボンナノチューブ(CNT)を土台として、光機能性分子二量体を固定化する新規な化学修飾法を確立できた。実際に特定の配向を有するピレン二量体形成に成功し、二量体化に由来する電子移動が二量体からCNT励起状態に起こることを見出した。 (2)酸化チタン電極へ強く吸着するトロポロン吸着基を開発し、ZnPを色素とする色素増感太陽電池を作製した。その結果、太陽電池性能を低下させることなく、耐久性を大幅に向上することに成功した。また、ZnPを光増感剤、ルテニウム錯体を水酸化触媒とする連結分子を合成した。酸化チタン電極上に集積化した光駆動水酸化デバイスを構築したところ、類似デバイス中で最高レベルの可視光応答性水酸化性能を達成できた。 (3)D-A連結分子の光電荷分離状態はナノレベルで極めて大きな電場を生じる。そこで、D-A連結分子の置換基を系統的に変化させ、細胞の膜電位制御を試みた。その結果、光電荷分離効率が高く、電荷分離寿命の長いD-A連結分子を細胞膜に導入した場合、最も脱分極が効率よく生じることがわかった。さらにそのD-A連結分子を用いて可視光照射下に神経細胞を発火できることも見出した。今後、新規な光遺伝子工学としての展開が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ポルフィリン・フラーレン間の相互作用を系統的に変化させることで、一重項エキシプレックス、一重項電荷分離状態、三重項エキシプレックス、三項電荷分離状態の形成過程、相関を初めて統括的に把握できた。特に最終の電荷分離状態生成効率の電子的相互作用依存性は本提案のような適切なモデル化合物を分子設計、合成し、フェムト秒からマイクロ秒に渡り時間領域を丹念に解析することでのみ可能であったと自負している。本研究成果は光電荷分離における真に基礎的な情報であり、人工光合成、有機太陽電池などの高効率太陽エネルギー変換実現に有益である。また、単層カーボンナノチューブ( SWNT)の化学修飾の過程でピレンがSWNT側面上で二量体を形成する予想外の反応を見出し、分子間相互作用を評価する新しい手法として有望であることを示せた。一方、ポルフィリン色素と酸化チタン界面に注目し、より強固に酸化チタンに吸着できるトロポロン吸着基を開発できた。色素増感太陽電池の性能低下を大幅に抑制できることを長時間の疑似太陽光照射下実験で明らかにし、今後の他の色素への展開が期待できる。ソーラ・フューエルに関しても、従来ポルフィリン光増感剤では性能が発揮できていなかったが、電子吸引基の導入、光増感剤と触媒間の適切な電子的相互作用の設定を含んだ合理的な分子設計により、Ru錯体光増感剤に匹敵する性能を引き出しことに成功している。さらに、光電荷分離分子、光機能性分子を生きた細胞の細胞膜に導入し、光により膜のイオン透過性を制御するという新しい細胞生物学と化学を融合した研究分野も確立することができた。以上のように多様なD-A界面において当初の目標を超える多くの進展があり、研究が多方面に展開しつつある。今後、予想以上の成果が見込めると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
光電荷分離に関して、適切な分子設計を介してD-A界面を制御し、多くの基礎的知見を明らかにできた。本研究提案は当初の予測を超える進展があり、研究範囲が広がってきている。最も単純化したZnP、C60を用いた一連の連結分子で得られた結果が光電荷分離に関する統一原理であると考えている。従って、既に当初の目的を達成できていると考えているが、引き続き他の光電荷分離系の研究を進め、比較検討することで検証を行う。
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Remarks |
http://www.moleng.kyoto-u.ac.jp/~moleng_05/
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Research Products
(25 results)