2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25220806
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
真嶋 哲朗 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (00165698)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤塚 守 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (40282040)
Choi Jungkweon 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (00574328) [Withdrawn]
小阪田 泰子 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (00579245)
|
Project Period (FY) |
2013-05-31 – 2018-03-31
|
Keywords | 光エネルギー / 単一分子蛍光イメージング / 光触媒 / 光化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は金ナノロッド(Au NR)の光触媒活性について単一粒子・単一分子計測による検討を進めた。金ナノ粒子(Au NP)はSPRによる吸収を可視近赤外領域に示し光触媒能に対する、形状やサイズの効果が検討されている。近年、PdやPt等を修飾することで水素発生の効率向上が報告されている。本研究では種々のPt修飾Au NRを調製し水素発生を検討し、Au NRの両端面にPtを修飾したPt-tipped Au NRでは、Ptを全体に修飾したAu NRやPt修飾Au NPよりも3-4倍高い水素発生効率を示した。この高効率な水素発生のメカニズムを明らかにするため、Au NRの発光を単一粒子レベルで測定するとともに、発光測定に用いたサンプルそのものを電子顕微鏡観察することで、個々の粒子について発光と構造の相関を検討した。Au NRではlongitudinal SPR (LSPR)とtransversal SPR (TSPR)が重要であるが、Pt修飾したAu NRではLSPR発光が著しく消光されることを確認した。さらに消光の効率はAu NRの径に依存することを明らかにした。これらの結果はLSPR励起により生じた電子が主にPtに捕捉され触媒反応に寄与することを示すもので、単一粒子測定によって初めて明らかに出来たメカニズムである。 Au NRの光触媒活性における両端面への別の金属の修飾の重要性はPd-tipped Au NRでも確認され、室温以下でも蟻酸より水素発生が可能であった。さらに単一粒子発光スペクトルよりLSPRの消光を確認した。また、Au NRのSPRは環境に影響を受けることが予測され、単一粒子発光強度および位置を検討し、特にエチルアルコール酸化時には著しく消光された。これらの結果はFinite difference time domain (FDTD) 計算からも支持された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画通り、単一分子蛍光イメージング法を用いて、金属酸化物のナノおよびマイク本研究の当初の目標のうち「半導体光触媒反応の単一粒子・単一分子計測」ならびに「半導体ナノ材料と均一系触媒系の複合化と電子移動の観測」については、すでに単一粒子・単一分子計測法を確立し、超解像蛍光イメージングを実現している。これらの手法は当研究室で新たに開発されたナノ触媒の評価に活用されさまざまな知見をもたらした。その結果、高活性なナノ触媒を実現するための原理に基づき、Auナノ粒子とのメソ結晶の複合化触媒系や二種の金属酸化物半導体より形成されるメソ結晶など新たな複合触媒系を多数実現できた。得られた知見は、フェムト秒拡散反射測定やFDTD simulationなど種々の測定方法から知見と複合化することでさらに高度化しているため、新たな学理の構築が期待できる。 他の目標についても、ナノ触媒上の反応解析のためのプローブ分子合成が進んでいること、生体触媒や細胞などの培養が進んでいることを考慮すると、順調に進展していると言え、今後充分な成果が得られることが期待できる。 本研究課題の開始以後、すでに65件以上の論文を発表しており、実際、研究代表者の真嶋は本研究計画に関連し、2013年度以降に、2013アジア分光会議(シンガポール)、2014E-MRS(ポーランド)、2015国際光化学会議(韓国)、2015Pacifichem(USA)などの主要国際学会で8回の基調講演、16回の招待講演を行っていることは、本研究が国内外に大きなインパクトを与えていることを示している。さらに、単一分子分光に基づく生体内の活性酸素検出を実現するために開発した蛍光プローブが、2016年2月に試薬会社より世界に向けて発売開始されるなど、関連分野および社会への波及も大きい。以上により、本研究は、当初の計画以上に進展していると判断される。
|
Strategy for Future Research Activity |
従来の研究に基づき今後にはナノ触媒の高効率化を中心とした研究を推進する。金属酸化物半導体および金属ナノ粒子のナノ構造を制御することで触媒活性制御が可能であることをこれまで示してきた。TiO2ではナノ粒子の超構造制御により得られるメソ結晶が高効率な有機物酸化活性を示し、そのメカニズムが電荷移動の高効率化に起因することを確認した。さらに、本メカニズムに基づき、Auナノ粒子との複合化や二種の金属酸化物半導体より形成されるメソ結晶など新たな複合触媒系を構築可能であることを実証した。TiO2触媒の更なる効率向上が必要であり、光照射によって生じた電荷の再結合を防ぐ、新たな構造を構築する必要がある。この問題について、われわれはヘテロジャンクションの導入を検討することを検討している。特に、金属/インシュレーター/半導体より構築されるMIS構造が電荷再結合速度の低下に有効と考えられることから、TiO2ナノ粒子をインシュレーター層で被覆した上に貴金属ナノ粒子を修飾した複合触媒の調製を予定している。 また、Auナノ粒子はSPRに起因する可視および近赤外吸収を示すことから太陽光照射による水素発生に有用な触媒であるが、高速な電荷再結合に由来する低い効率が問題であった。この問題の解決にナノロッド形状の構築およびPtまたはPdを端面選択的に修飾することで高効率化が可能であることを実証してきた。これらの知見より、更なる効率向上のためには他の形状のナノ粒子の検討が必要になると考えられる。これまでの他の研究者の報告より、Auナノ粒子の形状としてナノロッドに加え、ナノケージ、ナノディスク、ナノプリズムなどの選択的生成が知られていることから、これらの形状を有するナノ粒子の触媒活性およびメカニズムの詳細を検討する予定である。
|
Research Products
(76 results)