2015 Fiscal Year Annual Research Report
Single-molecule chemistry of nanocatalysis for light energy conversion
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25220806
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
真嶋 哲朗 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (00165698)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤塚 守 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (40282040)
小阪田 泰子 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (00579245)
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Project Period (FY) |
2013-05-31 – 2018-03-31
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Keywords | 光エネルギー / 単一分子蛍光イメージング / 光触媒 / 光化学 / 高速分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界的なエネルギー問題の解決に向け、太陽エネルギーを利用した代替エネルギーの開発は喫緊の課題である。特に、水素ガスは有望な代替エネルギーのひとつであり、その生成にアナターゼTiO2をはじめ多くの光触媒の利用が検討されている。TiO2は紫外光によってのみ励起可能なことから、これまで可視光応答型のTiO2の開発が行われてきたが、本研究では酸素欠陥に起因するTi3+自己ドープTiO2を用いることで、ドーパントを用いない可視光応答型光触媒を検討した。すなわち、近年表面修飾方法として注目される原子層積層技術(ALD)を用いることでTi3+自己ドープTiO2ナノ結晶(TNCs)にアモルファスTiO2層を生成し、さらにPt修飾することでmetal-insulator-semiconductor (MIS)構造を構築し、その水素発生能力を検討した。生成したMIS触媒は紫外領域から近赤外領域に及ぶ光吸収能力を示し、良好な水素発生を示した。さらに長期安定性も確認された。本触媒の良好な水素発生能力は、insulator層を介したトンネル効果によるホールと電子の電荷分離に起因すると考えられ、inculator層の制御による光触媒活性の可能性が示された。 すでにわれわれは長距離構造制御された多孔性のTiO2メソ結晶(TMC)が、高速な粒子間電荷移動に起因する高い光触媒活性を示すことを報告していたが、今年度は、可視光応答型F-ドープTMCを新たに生成することに成功し、可視光照射による水素発生を見出した。さらに時間分解拡散反射測定より、光照射により生成する活性種がF-ドーピングに起因する伝導性向上および表面変化により長寿命化していることを確認した。 上記研究のほかにも生体物質の一分子測定に関連し、DNA内過剰電子の長距離移動やSi-Rhodamineの集合体形成などを新たに見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単一分子粒子・単一分子イメージング法および超解像蛍光イメージング法が確立し、当研究室で新たに開発されたナノ触媒の評価に適用されており、実際、さまざまな知見が得られている。その結果、高活性なナノ触媒を実現するための原理が導かれ、Auナノ粒子とのメソ結晶の複合化触媒系や二種の金属酸化物半導体より形成されるメソ結晶など新たな複合触媒系を多数実現できた。得られた知見は、フェムト秒拡散反射測定やFDTD simulationなど種々の測定方法から知見と複合化することでさらに高度化しているため、新たな学理の構築が期待できる。 他の目標についても、ナノ触媒や生体細胞内の反応解析のためのプローブ分子合成が進んでいること、生体触媒や細胞などの取り扱い技術が確立したこと、さらに測定機器が整備されたことを考慮すると、順調に進展していると言え、今後充分な成果が得られることが期待できる。 本研究課題の開始以後、すでに80件以上の論文をNature Commun.やJ. Am. Chem. Soc.などの著名雑誌に発表しており、実際、研究代表者の真嶋は本研究計画に関連し、2013年度以降に、2013アジア分光会議(シンガポール)、2014E-MRS(ポーランド)、2015国際光化学会議(韓国)、2015Pacifichem(USA)などの主要国際学会で13回の基調講演、21回の招待講演を行っていることは、本研究が国内外に大きなインパクトを与えていることを示している。さらに、単一分子分光に基づく生体内の活性酸素検出を実現するために開発した蛍光プローブが、2016年2月に試薬会社より世界に向けて発売開始されるなど、関連分野および社会への波及も大きい。以上により、本研究は、順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
従来の研究に基づき今後はナノ触媒の高効率化を中心とした研究を推進する。金属酸化物半導体および金属ナノ粒子のナノ構造を制御することで触媒活性制御が可能であることをこれまで示してきた。TiO2ではナノ粒子の超構造制御により得られるメソ結晶が高効率な有機物酸化活性を示し、そのメカニズムが電荷移動の高効率化に起因することを確認した。これらのメソ結晶に関しては、これまで種々の方法により可視光応答性を付与してきたが、その発展として、複数ドーパントの適用を図る。とくに窒素とフッ素の適用を計画している。さらに、Auナノ粒子との複合化も検討する予定である。特に、Yolk Shell型の構造導入によるマルチスキャッタリングによる触媒活性向上の有無を検討する予定である。このほかにも、C3N4などの修飾の影響を検討する予定である。 また、Auナノ粒子はSPRに起因する可視および近赤外吸収を示すことから太陽光照射による水素発生に有用な触媒であるが、高速な電荷再結合に由来する低い効率が問題であった。この問題の解決にナノロッドに加え、ナノケージ、ナノディスク、ナノプリズムなど種々の構造体の応用を予定しており、これらの形状を有するナノ粒子の触媒活性およびメカニズムの詳細を検討する予定である。 生体分子の一分子観測に関連し、これまでSi-Rhodamineなどの新規色素を開発し、その活性酸素発生能力や集合体形成などを明らかにし、その結果、集合体形成により、生体機能に関する光学物性を大きく変化させることを見出してきた。今後、これをさらに発展させ、構造体生成および構造制御による一重項酸素発生能力の発現等を検討する予定である。
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Research Products
(46 results)