2015 Fiscal Year Annual Research Report
痛みの分る材料・構造の為の光相関領域法による光ファイバ神経網技術の学術基盤の確立
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25220907
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
保立 和夫 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60126159)
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Project Period (FY) |
2013-05-31 – 2017-03-31
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Keywords | 計測システム / 光ファイバセンサ / スマート材料・構造 / 分布型センシング / 防災危機・管理技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
「温度と歪の高精度・同時・分布計測での極限性能の実現」では、偏波維持光ファイバでブリルアンゲイン(BGS)とブリルアンダイナミックグレーティング(BDG)のスペクトラムを同時分布測定し標記機能を得る独自技術に関し、従来のBDGの生成に用いられるPump光とProbe光にapodizationを施す手法に加え、BDGを読み出すRead光にもapodizationを施すことにより、さらなる高空間分解能化が達成できることを実証した。 「BOCDR法の総合機能の実現」では、背景光雑音低減法である「光強度変調法」と「位相変調法」及び測定レンジ延伸法である「テンポラルゲート法」と「ダブルモジュレーション法」の4手法をシステムに適用し、その基本機能を確認した。またBOCDA法で実現しているBDGの読み出しをBOCDRでも可能であることを確認し、BOCDR法においても温度と歪の同時・分離・分布計測実現の可能性を示した。 「長尺FBG歪センシングシステムの機能進化」では、光源周波数変調に単側波帯変調器(SSBM)を導入して周波数変調波形の改善を図ると共に、不要な強度変調を除去して光位相変調でピーク位置を掃引する独自技術の性能向上を果した。 「BOCDA法によるPLC光集積回路の評価技術」では、PLCとピグテイルの接続部においてポンプ光とプローブ光の入射方向入れ替えにより測定結果に不一致が生じる現象について、ビーム伝搬法を用いた数値シミュレーションにより検討を行った。 「S-BOCDA法による温度と歪の分離・分布測定システム」では、精度向上のためLDへの入力電流波形補償法として精緻化時間領域周波数波形成形法を考案した。目標周波数との差のRMS値はポンプ・プローブ・リード光の順にそれぞれ10,19,8MHzを実現した。 「痛みの分る材料・構造の実証研究」では、他の複数の実用化プロジェクト費も得て、BOCDAの第3試作機とBOCDRプロトタイプ機を制作し、航空機、インフラ、プラント等への応用研究を進展させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は当初計画に沿って進展している他、下記のように、新たな研究項目も設定して成果を蓄積している。 ロックインアンプ機能を内在したBOCDR系の考案・実証がその一例である。従来系では受光器出力を直接電気スペクトラムアナライザ(ESA)に入力してきた。その結果、測定の感度や速度がESAの特性で決まっていた。本考案では、ESAの周波数掃引機能のみを使い、表示値をアナログ出力してロックインアンプで処理する。通常は光強度変調で得るロックイン処理のための参照信号を、光位相変調のオン・オフの繰り返しで得るモードを考案して、背景光雑音の除去を可能にした。位置分解測定の為の光源周波数変調の振幅は、従来、レーリー散乱とブリルアン信号光が重ならない範囲に制限され、空間分解能の限界を決めていた。本システムでは、この限界値である5.4GHz振幅を超える25GHz振幅の変調にて、この値に対応した高い空間分解能を実現することにも成功した。またこの方式により、BOCDA法で実現しているBDGの読み出しをBOCDRでも可能であることを確認し、BOCDR法においても温度と歪の同時・分離・分布計測実現の可能性を示した。 BOCDA法のユニークな特徴である任意測定位置へのランダムアクセス機能の速度を格段に向上させる新システムも考案し、5000箇所/秒を達成した。当初計画にはない進展で、光ファイバに沿って任意に設定した5点で動的歪を同時に測定することができた。航空機の翼や脚部の飛行中での動的歪計測等へ応用できる。本系にさらにテンポラルゲート法及びロックインアンプに替わる専用回路の導入を図り、さらなる高速化・高精度化を目指している。現在、測定レンジを20倍以上延伸して255m、ランダムアクセス速度を1000箇所/秒、周波数測定精度2MHz(標準偏差)を実現している。 このように、当初の目標を超える研究も進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 温度と歪の高精度・同時・分布計測での極限性能の実現 BDG反射分布測定の空間分解能劣化がアポダイゼーションにより回避されるという実験結果をシミュレーションの機能向上により解読する。テンポラルゲート、ダブル変調等の測定レンジ延伸法に関して、相互の関係を精査する。 2. 分布情報全体の高速動的測定 S-BOCDA法による自動掃引法(既に考案)は、歪感度や測定速度の極限化に最適とはいえない。今後はBOCDA法にS-BOCDA法の要素を取り込み、ポンプ光とプローブ光の位相制御による相関ピーク掃引法を確立して高速のランダムアクセス機能と相関ピークの自動掃引機能を併せ持つシステムを実現する。 3. BOCDR法の総合機能の実現 既にテンポラルゲート法、ダブル変調法、強度変調法、PM法の4手法統合により、空間分解能向上、測定レンジ延伸、歪測定レンジ拡大の同時実現手法の実験を進めている。今後は各パラメータ相互の関係を検討し、機能・性能の向上を図る。また、既に研究を進めている偏波維持ファイバを用いたBOCDR法における温度と歪の分離分布計測手法を確立したい。 4. S-BOCDA法による温度と歪の分離・分布測定システム 温度と歪の分離・分布測定は既に実現しているが、性能面ではまだ検討の余地がある。性能向上には精緻なLD注入電流波形補償法の確立が必要である。今年度着手した時間領域での電流波形補償法を確立する。 5. 長尺FBG歪センシングシステムの機能進化 周波数変調波形と相似の波形で参照光を位相変調することで、低サイドローブの光波コヒーレンス関数を掃引できる独自システムの確立を図る。今年度着手した周波数変調波形を精緻に制御できるシステムを構築する。 6. 痛みの分かる材料・構造の実証研究 経産省のプロジェクト及びJSTのA-STEP等と研究を進めており、本研究成果の実用化の可能性を広げる。
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