2016 Fiscal Year Annual Research Report
わが国における都市史学の確立と展開にむけての基盤的研究
Project/Area Number |
25220909
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 毅 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (20168355)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樺山 紘一 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 名誉教授 (30027544)
吉田 伸之 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (40092374)
陣内 秀信 法政大学, デザイン工学部, 教授 (40134481)
高橋 康夫 花園大学, 文学部, 教授 (60026284)
|
Project Period (FY) |
2013-05-31 – 2018-03-31
|
Keywords | 島嶼 / 領域 / 都市 / 集落 / ターフハウス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度からの繰越予算は都市史学の確立と展開に向けて必要不可欠と考えている「島嶼論」が主体となった。具体的にはアイルランドおよびアイスランドにおける都市・建築現地調査および文献調査を行い、大きな成果と知見を得た。 まずアイスランドについては、首都ダブリンにおける都市形成と建築調査を実施し、ジョージアン・ダブリンの成立背景を探った。アイルランドにおける18世紀の建築・都市動向はイングランドからの影響は認められるものの、アイルランド独自の発展を明らかにすることができた。イングランドからの有名建築家の作品はいくつか存在するが、アイルランドで力量を発揮した地元建築家の存在や建築を下支えするさまざまな職人の活躍が明らかになり、従来指摘されてこなかった側面を見いだすことができた。島国という立地条件が大きく影響している。 アイスランドは人口わずか33万人の小国であるが、そのほとんどが首都レイキャビクに集中している。一方、地方には9世紀以降のノルウェーからの入植に応じて小さな集落が多数形成され、彼らはターフハウスと呼ぶ独自の建築形式を採用した。一方、アイスランドは国の中央にユーラシア大陸と北米大陸を分かつプレートの裂け目(ギャウ)が縦断しており、初期アイスランドの議会はこのギャウという特異な場を中心に発展した。アイスランドは火山がいまなお活動しており、地熱発電、間欠泉などが存在する一方、巨大な氷河がいまなお国の東側一帯に横たわっており、さまざまな地形・地質条件を下敷きとした領域形成、集落形成、都市形成が実現したことを本フィールドから明らかになったことは特筆すべき成果である。この成果は現在論文化すべき準備中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
わが国における都市史学の確立と展開に向けての基盤的研究と銘打った本研究はスタート段階から多くの幸運にも恵まれきわめて順調に進展している。都市史学会の設立を皮切りに国際的学術交流(シンポジウム、WS、講演会ほか)と現地調査、成果の公表など、ほぼ予定通り進行しており、都市史学という従来ほとんど重要視されなかった学問領域の確立と展開は予想以上に実現できた。論文の発表、刊行物の発行、講演会の開催などの成果の公表についても各研究分担者との協力関係のなかで着実な実績を積み重ねている。現時点で刊行されていない成果物もあるので、(2)おおぬめ順調に進展していると自己評価しておく。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は予定している刊行物の完成に全力を注ぎ、成果の公表につとめることを最優先して推進したいと考えている。これらの成果物がそろうことによって、本研究の画期的な実績が都市史学という領域の確立の布石になると自負している。
|
Research Products
(14 results)