2014 Fiscal Year Annual Research Report
大脳皮質の領野間相互作用を担う神経回路の細胞・シナプスレベルでの機能解明
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25221001
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大木 研一 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50332622)
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Project Period (FY) |
2013-05-31 – 2018-03-31
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Keywords | 大脳皮質 / 領野間相互作用 / 情報分配 / 並列処理 / 軸索 / 2光子イメージング / 方位選択性 / 空間周波数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、大脳皮質全体での領野間相互作用をカルシウムイメージングを用いてマクロレベルで示した。マクロレベルでの領野間相互作用は、従来機能的MRIなどを用いて示されてきたが、神経活動に対応する血流変化を間接的に測定するものであり、神経活動とどれくらい対応しているのか不明であった。神経活動と直接的に相関するカルシウムイメージングを用いて、安静時の領野間の相互作用を調べた。カルシウムイメージングには、Emx1-Cre x floxed-GCaMP3マウス(大脳皮質の興奮性細胞にGCaMP3が発現)を用い、マクロ蛍光顕微鏡を用いて、血流変化と同時にカルシウムシグナルを計測した。これにより、血流変化による領野間相互作用がカルシウムシグナルによる相互作用と対応していることが示された。さらに、カルシウムシグナルで見たときに、安静時の自発活動は、脳全体に波及する波として発生していること、その波の各時点でのパターンが領野間相互作用のパターンと類似していることが見出され、領野間相互作用のパターンは、自発活動の波に埋め込まれていることが明らかになった。 次に、このような自発活動のパターンが幼若期からどのように成熟してくるのかを観察した。開眼前に、非常に活発な自発活動が観察されたが、これらの自発活動は脳全体に伝播するものではなく、数十から数百ミクロン程度、伝播しては消失するようなパターンが全脳で観察された。視覚関連領野について解析を行ったところ、高次視覚野間、またはV1と高次視覚野の間で、レチノトピーの対応する場所に強い相関がみられた。この相関は高次視覚野間で生後の早い時期に現れ、V1と高次視覚野の相関は遅れて発達することが観察された。このことは、高次領野間のネットワークが最初に形成され、低次領野は後からそれに加わることを示唆している。このことは視覚関連領野だけでなく、感覚運動関連領野でも観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度中に、マクロレベルでの領野間相互作用を解明することを予定していたが、その目標を達成し、さらにその相互作用のパターンがどのように成熟してくるかも明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の5つのテーマに取り組む。 ①マウスの高次視覚野の機能分担を明らかにする。マクロレベルでのカルシウムイメージングを用いれば、10個前後あると考えられている高次視覚野の全てを同時に観察することが可能であり、それぞれの高次視覚野がどのような反応特性を示すかを調べる。マウスでは背側経路、腹側経路などの高次視覚野の分類が確定していないが、各領野の反応特性をクラスター解析することにより、高次視覚野を機能によって分類する。 ②高次視覚野以外にも視覚刺激に反応する領野があると予想されるが、マクロレベルのカルシウムイメージングを用いてそれを探索する。 ③高次視覚野の中で、V1などの低次視覚野には見られない反応特性を持つ領野があり、さらに進んだ情報処理がされていると予想されるが、カルシウムイメージングを用いて、そのような領野を探索する。ヒトなどで、錯視を起こす刺激に対して反応する領野が知られているが、マウスでも同様な刺激を用いて、それに特異的に反応する領野を探索する。 ④ ③で見出されたような錯視を起こす刺激に対して特異的に反応する領野について、その領野へ入力する軸索のイメージングと、それを受け取る細胞体のイメージングを行い、どのような神経回路で錯視に対する反応が形成されるのかを解明する。 ⑤ 大脳皮質領野間の相互作用だけではなく、皮質下の核と大脳皮質の間の相互作用をミクロレベルで解明する。V1や高次視覚野は、LGNやLPから入力を受けているが、どのような情報が入力しているのかを、LGNとLPの細胞の軸索イメージングにより解明する。さらにV1の細胞体からもイメージングを行い、どのようにV1の反応選択性が形成されているのかを明らかにする。
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