2016 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular dissection of plant development and cell-to-cell signaling mediated by posttranslationally modified peptides
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25221105
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松林 嘉克 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (00313974)
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Project Period (FY) |
2013-05-31 – 2018-03-31
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Keywords | 翻訳後修飾 / ペプチドホルモン / 受容体 / 形態形成 / 環境応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物成長を制御する新しい細胞間シグナルとして,翻訳後修飾を伴った短鎖分泌型ペプチドに注目が集まっている.本研究は,翻訳後修飾ペプチドホルモンのさらなる探索や,既知因子の受容および細胞内情報伝達機構の解明を基軸としながら,翻訳後修飾のメカニズム,細胞外での分子動態などを解析し,翻訳後修飾ペプチドホルモンを介した植物形態形成や環境応答の分子機構を明らかにすることを目的としている.今年度は,ゲノム情報に基づいたペプチドホルモン候補のスクリーニングとLC-MSによる成熟型構造解析,そして受容体キナーゼ発現ライブラリーを用いた受容体探索により,植物の根の拡散障壁であるカスパリー線の形成に必要なペプチドホルモンの同定に成功した(Science 2017).Casparian strip Integrity Factor(CIF)と命名した21アミノ酸のチロシン硫酸化ペプチドは,根の中心柱で発現し,内皮細胞で発現する受容体GSO1/SGN3に特異的に結合する.これらを欠損する植物は,根のカスパリー線に穴があき,濃度勾配依存的に外界からイオンが道管に流入または道管から流出するため,至適栄養条件以外では成長が阻害されることが明らかとなった.また,以前に発見した全身的な窒素要求シグナリングに関わるペプチドホルモンCEPの下流で働く新しい長距離移行シグナルの同定に成功した.CEPは窒素欠乏時に根で誘導され,道管を通って葉の師部側にある受容体CEPR1に認識されるが,その下流で師管内を根へ移行するポリペプチドCEPD1およびCEPD2を見出した(Nature Plants 2017).根に移行したCEPDは,硝酸取り込み輸送体であるNRT2.1の発現を上昇させる.この発見により,片側の根が窒素欠乏になった時,もう片側の根で相補的に窒素取り込みが促進される現象の基本的なメカニズムが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
新しいシグナルの同定という研究は,同定できるかできないかの2者択一であるが,今年度は植物の根の拡散障壁であるカスパリー線の形成に必要なペプチドホルモンの同定という予想を超える成果に結びついた.これらを欠損する植物は,根のカスパリー線に穴があき,濃度勾配依存的に外界からイオンが道管に流入または道管から流出するため,至適栄養条件以外では成長が阻害されることが明らかとなった.Science誌に掲載された本論文は,Science誌のThis Week in Scienceで取り上げられたり,Nature Plants誌のResearch Highlightに紹介記事が掲載されるなど,国際的に高く評価された.また,全身的な窒素要求シグナリングに関わるペプチドホルモンCEPの下流で葉から根へ長距離移行するポリペプチドの同定の成果はNature Plants誌に掲載され,同誌のNews and Viewsで紹介された.この発見により,片側の根が窒素欠乏になった時,もう片側の根で相補的に窒素取り込みが促進される現象の基本的なメカニズムが明らかとなった.いずれも環境応答におけるペプチドシグナルの重要性を世界に先駆けて示したものであり,当初の計画以上の進展である.
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Strategy for Future Research Activity |
植物の根の拡散障壁であるカスパリー線の形成に必要なペプチドホルモンの発見や,CEP下流で葉から根へ長距離移行するシグナルの同定など,当初の予想を上回る成果が出ているため,今後の研究計画に大きな変更はない.成熟型構造や受容体は既に解明に成功しているが,生理機能がまだ分からないリガンド-受容体ペアが残されているため,引き続き解析を続けていく.
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[Journal Article] Loss of function at RAE2, a previously unidentified EPFL, is required for awnlessness in cultivated Asian rice2016
Author(s)
Bessho-Uehara K, Wang DR, Furuta T, Minami A, Nagai K, Gamuyao R, Asano K, Angeles-Shim RB, Shimizu Y, Ayano M, Komeda N, Doi K, Miura K, Toda Y, Kinoshita T, Okuda S, Higashiyama T, Nomoto M, Tada Y, Shinohara H, Matsubayashi Y, Greenberg A, Wu J, Yasui H, Yoshimura A, Mori H, McCouch SR, Ashikari M.
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Journal Title
Proc Natl Acad Sci U S A
Volume: 113
Pages: 8969-8674
DOI
Peer Reviewed
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