2013 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ病原体の統合生物学 -宿主細胞内絶対寄生の複合生命体としての理解に向けて-
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25221201
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
難波 成任 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (50189221)
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Project Period (FY) |
2013-05-31 – 2018-03-31
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Keywords | ナノ病原体 / ファイトプラズマ / 病原性因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
抵抗性・感受性遺伝子の機能解析:研究代表者らは幅広い植物ウイルスに広域抵抗性を示す抵抗性遺伝子JAX1を既に単離している。JAX1の機能解析を目的として、JAX1による抵抗性を受けない変異ウイルスを単離し、ウイルス複製酵素の1アミノ酸変異によりJAX1抵抗性が打破されることを明らかにした。また、多数のシロイヌナズナエコタイプやミュータントに植物ウイルスを接種してウイルスが感染できない植物個体をスクリーニングし、抵抗性ミュータントを得た。 病原性誘導メカニズムの解明:ナノ病原体の新規病原性因子のスクリーニングを行った。ファイトプラズマの分泌・膜タンパク質をシロイヌナズナに形質転換することにより植物形態を変化させる病原性因子を探索し、花を葉に変える病原性遺伝子PHYLLOGEN(PHYL1)を同定した。さらに、PHYL1が花器官形成を司るMADS-box遺伝子産物と結合することを明らかにした。一方、研究代表者らはファイトプラズマの天狗巣症状の病原性因子TENGUが38アミノ酸のペプチドであることを明らかにしているが、TENGUがさらに植物体内でプロセシングを受けることを明らかにし、最小機能領域が11アミノ酸であることを明らかにした。また、ファイトプラズマによるパープルトップ症状の誘導メカニズムを解明した。 ナノ病原体増殖制御因子の探索:ポテックスウイルス属ウイルスのin vitroウイルス翻訳・複製系を確立した。 ナノ病原体の逆遺伝学的解析:植物ウイルスの逆遺伝学的解析を目的として、安定的かつ高効率に外来遺伝子の発現を行うポテックスウイルス属ウイルスベクターの構築を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
4つの研究項目の全てにおいて平成25年度に設定した研究課題を概ね達成し、特に<病原性誘導メカニズムの解明>においてはファイトプラズマによるパープルトップ症状や天狗巣症状を誘導する分子メカニズムを解明したのみでなく、花葉化症状の原因因子PHYL1を同定し、PHYL1と花器官形成に関わる宿主因子との結合を解明したため、当初の計画以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ナノ病原体の統合生物学的理解を深めるため、当初の全体計画に沿いながら各研究項目において適切な課題を設定し、研究を推進するが、新たに進展があった研究項目については重点的に研究を進め、革新的な成果を生み出すことを目指す。<病原性誘導メカニズムの解明>において新たに単離した花葉化症状の病原性因子PHYL1については機能解析を重点的に推進し、PHYL1がMADS-boxタンパク質の発現制御にどのような影響を与えるかを解析する。
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Research Products
(13 results)