2014 Fiscal Year Annual Research Report
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25240022
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
北澤 茂 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (00251231)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 視覚の安定性 / サッケード / 背景座標系 / 楔前部 / 動き逆相関法 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は1秒に3回も目を動かしているのに、周囲の世界は安定している。脳はいかにして視覚世界を安定化しているのか。この問題は1)網膜像の流れが知覚されないのはなぜか、と2)眼球運動の前後で異なる網膜像をどうやって空間的に統合するのか、という二つの独立した問題から成っている。 1.網膜像の流れの知覚の「抑制」メカニズムの解明 動き逆相関法を改良して使い、サッケード前から後まで動き選択性がどのようなダイナミクスで変化するかを詳細に調べた。本年度は選好方向と反選好方向に加え、直交する2方向も動き刺激として提示し、MT野とMST野からの記録・解析を行った。その結果、MST野ではMT野に比較して動き選択性の変化が有意に大きいことを示唆する結果を得た。 2.背景座標系仮説の検証 a) ヒトの心理物理実験:昨年度までに開発したプリズム順応を用いた実験系では、四角い「枠」を背景として用いた。本年度は、一般的な風景画像が「背景」として機能しうるかどうかを検討し、風景画像も「背景」として機能しうることを示した。b) ヒトのfMRI実験の解析:ヒトを対象として行ったfMRI法を用いた非侵襲脳活動計測の結果を詳細に解析して、「背景座標系」が右の楔前部に表現されていることを強く示唆する結果を得た。楔前部を含む領域が損傷を受けたときに生じるBalint症候群の主症状は視野を全体として捉えることができないことであると報告されている。「視野を全体として捉える」という漠然とした表現は「背景座標系で対象を表現すること」と明解に換言できる。c)サルのfMRI実験系の立ち上げ:ヒトを対象として行ったfMRI法を用いた非侵襲脳活動計測法を、サルに対して適用するためのセットアップを完了した。d)サルの神経生理学的研究:ヒトの楔前部に相当するサルの脳の領域から神経活動の記録を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.網膜像の流れの知覚の「抑制」メカニズムの解明に関しては、選好方向と反選好方向に加え、直交する2方向も動き刺激として提示することで、反選好方向に対する正の応答がサッケード前の特定のタイミングでMST野に生じることを明快に示す結果を得た。我々の作業仮説を支持する成果である。 2.背景座標系仮説の検証に関しては、解析法の工夫により、右楔前部が背景座標系の要であることを明確に示した。さらにサルのfMRI実験系の立ち上げを完了し、ヒトの楔前部に相当するサルの脳の領域から神経活動の記録も予定通り開始した。 以上のことからおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
動きを知覚することができなくなる運動盲と呼ばれる症状は、MT/MST野だけでなく、楔前部の近傍の頭頂後頭間溝の周辺の損傷でも生じるという過去の報告を発見した。即ち、楔前部周辺のニューロンも動き知覚に重要な役割を果たしている可能性がある。この領域の記録の際にも、動き逆相関法を適用して、サッケードに伴う動き刺激に対する応答性の変化があるかどうかを調べる予定である。
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Research Products
(4 results)