2014 Fiscal Year Annual Research Report
不凍ポリアミノ酸を用いた再生医療用幹細胞・組織の凍結保存
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25242050
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
玄 丞烋 京都工芸繊維大学, 繊維化学センター, 特任教授 (90283655)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松村 和明 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 准教授 (00432328)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 幹細胞凍結保存 / 受精卵凍結保存 / 新規凍結保護剤 / 細胞シート凍結保存 / 幹細胞バンク |
Outline of Annual Research Achievements |
① 温度コントロールによる凍結保存の最適化と自動化装置の開発:プログラムフリーザーを用いて、細胞保存液の凍結時の温度効果速度をコントロールし、生存率との相関性を確認した。しかし、凍結速度の影響が少なく、-80℃の緩慢凍結と場合と大きな差は認められなかった。また、ガラス化において凍結保護材の容積を削減できるナノホールデバイスを用いると受精卵の凍結保存効果が高まることをみいだした。 ② ヒトiPS 細胞および幹細胞の凍結保存法の確立:シングルセルにすることによるアポトーシスを防ぐことはROCK 阻害剤を添加することで解決できることが分かった。また、細胞膜親和性を高める目的で疎水性基を少し導入したが、期待したほどの効果が確認できなかった。 ③ 機序に基づいた最適凍結保護物質の分子設計:平成25年度で開発した種々の凍結保護性高分子化合物を各種細胞・組織に適した分子設計を行い、各機関との緊密な連携、研究成果のフィードバックを効率よく行いながら凍結保存実験を網羅的に行うことで最適な凍結保護技術を確立できるめどが確認できた。 ④ 各種再生組織・幹細胞・生殖組織の凍結保存技術の確立:平成25年度で開発された種々の凍結保護作用をもつ新規高分子を用い、申請者らがこれまで培ってきた凍結保存技術と組み合わせて,より効率の高な凍結保存技術を開発することで生体組織の凍結保存の問題の解決を試みた。具体的には、凍結までの温度変化条件、解凍時の温度、溶液組成条件など様々な条件にそれぞれ最適な範囲が存在するが、新規開発高分子により凍結保護作用が向上されるだけでなく、至適条件の範囲は広がることで簡易な凍結技術を開発できることが確認できた。これらの知見をもとに、ヒトiPS 細胞の凍結保存法を確立し、バンクでの利用の検討を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度研究計画達成のため下記の目標を掲げた。 ① 目標:温度コントロールによる凍結保存の最適化と自動化装置の開発。② 目標:ヒトiPS 細胞および幹細胞の凍結保存法の確立。③ 目標:機序に基づいた最適凍結保護物質の分子設計。④ 目標:各種再生組織・幹細胞・生殖組織の凍結保存技術の確立 ⑤ 目標:凍結装置の自動化。 上記の目標中、⑤はその必要性が確認できなかったので未達成であるが、その他はおおむね達成でき順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
① 目標:ヒト受精卵の凍結法の確立:平成26年度で開発した凍結保存用デバイスを用い、ヒト受精卵のガラス化保存を行う。その際、DMSO、タンパク質不含かつ、溶質濃度を例えば通常の半分である15%に抑えることで毒性を飛躍的に軽減する手法の開発を行う。評価は生存率と発生評価を行い、未凍結系と有意な差のない凍結保護技術を開発する。 ② 目標:凍結保存物質の安全性確認、GMP/GLP 規格化、製品化:各種組織、細胞の保護物質の最適化が完了したのちは、その材料の製造規格をGMP 基準とする必要性がある。動物実験を通してがん化、毒性試験等を行い、安全性を担保する。製品化に関しては、クリーンな環境での製造ラインの導入により規格化された製品を大量に製造できる設備を構築する。 ③ 目標:組織凍結法の確立および凍結組織のGMP/GLP 規格化:再生組織自体も製造をGLP 規格で行い、凍結組織として企画した製品を作り上げる必要がある。施設としてセル/ティッシュプロセッシングセンターの様なクリーンな施設を作成し、そこで、自動化機器によるGMP/GLP 規格の凍結組織を製造できる環境を構築する。 ④ 目標:ヒトiPS 細胞バンクへの細胞凍結技術、保存液の供給:臨床用もしくは研究用ヒトiPS 細胞バンクに保存液を供給し、本プロジェクトで開発した凍結技術の臨床/産業応用を行う。そのためにはステージII までの基礎研究とステージIII で得られた規格化された保存剤の製造法の確立が不可欠であり、各研究機関と連携し、推進する。 ⑤ 目標:ヒト受精卵凍結保存の臨床応用:平成25,26年度で作製したデバイスを用いて関連機関倫理委員会、日本産科婦人科学会の研究承認のもと、ボランティア患者よりインフォームドコンセントを得たうえで、臨床研究を行う。
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Research Products
(30 results)