2015 Fiscal Year Annual Research Report
健康寿命延伸と介護予防に寄与する運動プロトコールの開発とシステム構築
Project/Area Number |
25242065
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
田中 宏暁 福岡大学, スポーツ科学部, 教授 (00078544)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
檜垣 靖樹 福岡大学, スポーツ科学部, 教授 (10228702)
上原 吉就 福岡大学, スポーツ科学部, 教授 (70373149)
道下 竜馬 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 講師 (10632028)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 健康寿命 / 介護予防 / 至適運動強度 / 運動トレーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は,これまでに間欠式運動中の骨格筋PGC-1αの増加を確認してきたが,インスリン様成長因子(IGF)-1濃度の変化については検討することができなかったため,血清IGF-1濃度の増加を引き起こす安全性の高い至適運動条件について検証した。健常男性6名を対象に同一強度(乳酸閾値強度)による間欠式運動と連続運動による血清IGF-1濃度の変化について検討し,運動強度が同じであれば,間欠式であっても連続運動であっても運動中のIGF-1濃度の上昇は同程度であることを明らかにした。 平成26年度に引き続き,平成27年度は軽強度の有酸素運動が高齢者の認知機能改善効果についても検討した。軽度認知障害(MCI)を含む20名の高齢者を対象に運動群と軽体操群に無作為に割り付け6ヶ月の介入研究を行った。その結果,認知機能に関しては両群とも向上し,群間差は認められなかったものの,有酸素性作業能力は運動群でのみ有意に向上することが示された。また,介入終了後も長期に運動を継続してもらい,2年間で認知機能は正常値を維持していた。MRIによる海馬周辺の脳萎縮度においても萎縮は認められず,運動継続により認知症発症を予防できる可能性が示唆された。 さらに,平成27年度は身体活動,運動が脳機能や海馬容量,脳血流量に及ぼす影響について不明な点が多いことから,運動介入による認知症予防の有効性特に海馬容積との関係について検討することを目的として,福岡大学病院神経内科,大学内に隣接するメディカルフィットネスセンターと連携しMCI患者の運動介入研究を開始した。本研究は,上記神経内科を受診し,MCIの判定を受けた者を対象として長期(3年以上)運動介入を行い海馬容量や認知機能への影響,認知症への移行率を検証する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度までに,誰でも容易に実施しやすい乳酸閾値強度の運動を1分継続,30秒のウォーキングによる積極的休養を40回繰り返す間欠式運動でIGF-1の誘導とPGC-1αの遺伝子発現が起こることを見出した。また,この運動で高強度の間欠式運動と同等のEPOCが起こることを示すことができた。 また,加齢に伴う有酸素性作業能力と筋量の低下は,高齢者の健康阻害要因であるが,適度な運動によって改善することが可能である。有酸素性作業能力を高める運動によって,うつ病や認知機能の改善をもたらす可能性が示唆されている。しかし,高齢者が安全で気軽に行え,有酸素性作業能力や筋量,さらには脳機能の向上に寄与する最適な運動条件は明らかにされていない。認知症は治療と共に予防が重要であり,特に運動による認知症予防効果はこれまでに数多く報告されており,その機序として前頭葉の血流改善,神経促進因子BDNFの分泌増加などが関与していると考えられている。平成27年度は,認知機能低下者を対象とした長期運動介入を行い,海馬容量への影響,認知症への移行率を調査することを目的としており,上記結果から研究計画どおり進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,「PGC-1αの発現を促す有酸素運動は有酸素性作業能力や筋量を高めると同時にインスリン感受性を改善させ,脳機能も高める」との仮説を実験室とフィールドで証明し,健康寿命延伸と介護予防の地域支援システムを構築する。1. 軽強度有酸素運動による有酸素性作業能力,筋量増加,インスリン感受性改善効果を検証する無作為化割付試験,2. 連続的な持久性運動と間欠式運動における骨格筋PGC-1αと血清IGF-1濃度の変化を検証するとともに,安全性が高く,運動習慣が形成しやすい運動条件を確立し,最適な運動条件を見出す。今後の研究実施計画として, 1. 安全性が高く,容易性に優れ効果的な運動プロトコールの開発:平成25-27年度に引き続き,最適な間欠式運動を探索する実験を行うとともに,EPOCに対する検証も進める。高齢者10名を対象に高強度の間欠式運動の妥当性を検討する。 2. 地域住民における簡易運動プロトコールの効果検証:これまでの運動手法研究から発案された運動プロトコールの効果検証を地域ぐるみで行う。我々が開発した運動処方システムを用い,個別の運動処方を作成する。トレーニングには,申請者が発案したスロージョギング運動を非監視型で実施する。また,平成27年度に引き続き,認知機能低下者を対象とした長期運動介入を行い,海馬容量への影響,認知症への移行率を調査する。 3. メタボリックシンドローム該当者および予備軍からリクルートした対象者に長期運動介入を引き続き実施し,運動効果と医療費抑制効果を検証する。運動介入は,1月に数回の運動教室とスロージョギング,貸与したステップ台を用いた自宅での非監視型トレーニングを実施する。 昨年度までと同様,福岡県那珂川町,大分県日田市,宮崎県都城市,山口県柳井市,福岡市東区と連携して介入研究を継続する。
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Research Products
(26 results)