2014 Fiscal Year Annual Research Report
新しいカルチュラル・スタディーズの基礎理論構築―残滓としての英国批評を活用して
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25244014
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
川端 康雄 日本女子大学, 文学部, 教授 (80214683)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 雄三 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (10273715)
遠藤 不比人 成蹊大学, 文学部, 教授 (30248992)
河野 真太郎 一橋大学, 商学研究科, 准教授 (30411101)
大貫 隆史 関西学院大学, 商学部, 准教授 (40404800)
鈴木 英明 昭和薬科大学, 薬学部, 教授 (70299965)
西 亮太 中央大学, 法学部, 助教 (60733235)
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Project Period (FY) |
2013-10-21 – 2017-03-31
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Keywords | 芸術諸学 / 思想史 / レイモンド・ウィリアムズ / ウェールズ文化史 / カルチュラル・スタディーズ / リアリズム / ユートピア / フレドリック・ジェイムソン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題遂行者は、レイモンド・ウィリアムズ研究会を基礎としつつ、2014度は前年度の国際シンポジウムと資料調査の結果を受けて各自および集団的に研究内容を検討し、同時に専門家を招聘しての小規模なレクチャーやセミナー、また個別の研究発表を適宜実施した。なお、エドワード・サイードなどポストコロニアル批評の研究動向を踏まえる必要があるとの認識から、2014年度よりこの方面を専門とする西亮太(中央大学助教)を新たに研究分担者として加え、共同研究の幅を広げた。 専門家の招聘についてはモダニズム文学、批評理論について十分な実績を有する二人の研究者Dr Ramon Del Castillo (Universidad Nacional de Educacion a Distancia)とDr Dougal McNeill (Victoria University of Wellington)を招聘の上、2014年9月にThe Im/possibility of Realism and Utopia: Jameson, Williams, and Fictionと題する連続講演会とセミナーを大阪大学と成蹊大学で開催し、本課題に密接に関わる「リアリズム」と「ユートピア」の批評的可能性についてウィリアムズとフレドリック・ジェイムソンの著作をとおして考察・検討する機会とした。また国内からは社会学、イギリス思想史の専門家を招聘して2014年9月と2015年3月に臨時レイモンド・ウィリアムズ研究会を開催した。 加えて、資料調査については、British Libraryほか、海外図書館、アーカイヴで調査をおこなった。また課題遂行に必要とされた資料については、国内外図書館所蔵のものを含め、各自収集と分析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題遂行者の全員が参加しているレイモンド・ウィリアムズ研究会を併せて7回開いた。定例の会では、ウィリアムズの小説(Border Country)と批評(The Long Revolutionほか)をテクストとして「文化の系譜学」の共同研究を進めた。第一回臨時研究会(2014年9月27日、於大阪大学)では『監視デフォルト社会』(青弓社、2014年)の著者阿部潔関西学院大学教授を招いて社会学的な文化批評の方法論を学び、第二回臨時研究会(2015年3月15日、於関西学院大学)では神野照敏釧路公立大学准教授及び小川公代上智大学准教授を招いてウィリアム・ゴドウィンの思想を検討した。さらに、講演会・セミナーThe Im/possibility of Realism and Utopia: Jameson, Williams, and Fictionは2014年9月3日に大阪大学、9月6日、7日に成蹊大学にて開催し、成功裏に終えることができた。特に2人の海外からの招聘者Dr Ramon Del Castillo とDr Dougal McNeillの講演とセミナーでのコメントを得たことは本研究を進展させる上でたいへん有意義であった。 本研究課題の成果発表の重要な媒体のひとつとして位置づけている『レイモンド・ウィリアムズ研究』は、第5号を2014年10月9日に発行した。 海外出張については、川端康雄が2014年8月25日から9月5日までロンドン、オクスフォードなどでウィリアム・モリスに関する調査と資料収集、さらに2015年3月23日から3月31日までロンドンおよびグレガノッグ・ホール(ウェールズ、ポーイス州ニュータウン近郊)にてウィリアムズに関する調査および学会出席のため渡英した。また遠藤不比人は3月9日から3月17日までロンドンの精神分析学研究所などで戦間期のケンブリッジ大学における精神分析受容に関する一次資料の調査のため渡英した。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度は各研究者の文献研究(国内外の図書館・アーカイヴにおける調査、また著述家の伝記および作品世界に関連した実地調査を含む)を基礎とし、それを定期的な研究会、シンポジウムなどによって共同の検討に付すという手順をさらに改善しつつ研究を進める。またレイモンド・ウィリアムズ研究会をさらに活発化し、そこでの研究成果を研究誌に発表する。ウェールズを中心に海外の関連学会での発表も積極的に行う。それと平行して、専門家を招聘しての小規模なレクチャーやセミナー、さらなる資料調査を適宜実施する。ウィリアムズの著作の翻訳刊行も行う。また、本研究の一環としてイギリス近現代史の教科書の共同執筆を進める。 具体的には、『レイモンド・ウィリアムズ研究』の通常号(第6号)を研究会で扱ったウィリアムズの著作について重点的に論じた特集号として本年度後期に刊行すべく作業を進める。ウィリアムズの著作の翻訳書は『想像力の時制――レイモンド・ウィリアムズ批評集成2』としてみすず書房より2015年度中に刊行する。イギリス近現代史の大学生向け教科書『教養のイギリス近現代史』(仮題)はミネルヴァ書房より2016年度の刊行を目指して準備を進める。 資料調査については、本課題に関連する海外図書館、アーカイヴも適宜対象調査先に含める。課題遂行に必要とされる資料については、国内外図書館所蔵のものを含め、各自収集と分析を進めるものとする。ウェールズの学術団体AWWE (The Association for Welsh Writing in English)のメンバーとの研究交流およびウェールズの現地調査を通して、ウェールズ英語作家(特に近代の産業化の経験をふまえたリアリズム小説の書き手)の再評価の作業を行ってゆく。
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Research Products
(15 results)