2015 Fiscal Year Annual Research Report
新しいカルチュラル・スタディーズの基礎理論構築―残滓としての英国批評を活用して
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25244014
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
川端 康雄 日本女子大学, 文学部, 教授 (80214683)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 雄三 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (10273715)
遠藤 不比人 成蹊大学, 文学部, 教授 (30248992)
河野 真太郎 一橋大学, 商学研究科, 准教授 (30411101)
大貫 隆史 関西学院大学, 商学部, 准教授 (40404800)
西 亮太 中央大学, 法学部, 助教 (60733235)
鈴木 英明 昭和薬科大学, 薬学部, 教授 (70299965)
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Project Period (FY) |
2013-10-21 – 2017-03-31
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Keywords | 芸術諸学 / 思想史 / レイモンド・ウィリアムズ / ウェールズ文化史 / カルチュラル・スタディーズ / 文化唯物論 / エコクリティシズム / ウィリアム・モリス |
Outline of Annual Research Achievements |
文献研究(国内外の図書館・アーカイヴにおける調査、また著述家の伝記および作品世界に関連した実地調査を含む)を基礎とし、それを定期的な研究会、シンポジウムなどによって共同の検討に附すという手順をさらに改善しつつ研究を進めた。 代表者の川端は2015年4月と2016年3月の二度にわたり、英国に出張し、研究発表およびRaymond WilliamsとWilliam Morris関連の調査を行った。また本研究の代表者および分担者4名(山田、遠藤、河野、大貫)が翻訳に関わったR. ウィリアムズ『想像力の時制――文化研究2』を2016年2月に刊行した。 分担研究者のうち、大貫、河野の二名は2015年9月1日よりウェールズのスウォンジー大学に客員研究員として所属し、2016年3月31日までの一部期間に本研究課題に従事した。山田はStuart Hallがポピュラー文化を研究対象とする足がかりとしてミドルブラウの大衆物語を再評価したことを明らかにし、Welsh Writing in Englishに関しては、ウェールズのモダニズム小説がイングランドのそれと比べて現在時制に拘りを示している点を示した。遠藤はFredric Jamesonのマルクス主義美学をShoshana Felmanの言語行為論を通過した上でR. ウィリアムズにおけるaction概念に接続するための理論的な作業を行い、その視点からUtopia概念の再検討も行った。鈴木は世紀末のアナーキズムとOscar Wildeの審美批評との関係を、これら両者にとって密接な関係のあったフランス象徴主義文学にも目を配りながらトランスナショナルな文脈において考察し、「観照」と「行動」の対立的共存がワイルド批評に独特の政治性を与えていることを明らかにした。西はDerek Walcott論、森崎和江論、さらにはR. ウィリアムズの文化唯物論のポストコロニアル研究への介入の試みとしてポストコロニアル・エコクリティシズムの批判的分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題遂行者は、これまでレイモンド・ウィリアムズ研究会というかたちで定期的な研究会を行ってきたが、2015年は定例研究会を2015年5月10日(中央大学駿河台キャンパス)、7月19日(関西学院大学東京丸の内サテライトキャンパス)、2016年2月9日(日本女子大学目白キャンパス)と、都合3回開催した。さらに、2015年4月11日にマンチェスター大学のDr David Aldersonを講師として招聘し、特別講演“Is Capitalism Progressive (for Queers)?”を開催した(於中央大学駿河台キャンパス)。また研究誌『レイモンド・ウィリアムズ研究』の通常号(第6号)を2016年3月に刊行した。 全体の業績としては、著書が1本、国内での研究発表は5本、また国際会議での研究発表も5本と、まずまずの成果を上げることができた。翻訳書レイモンド・ウィリアムズ著『想像力の時制――文化研究2』(みすず書房、2016年2月)の刊行によって、日本独自編集版全2巻のウィリアムズ選集を完結させることができたことも特筆したい。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度は本研究の最終年度にあたる。研究者の文献研究(国内外の図書館・アーカイヴにおける調査、また著述家の伝記および作品世界に関連した実地調査を含む)を基礎とし、それを定期的な研究会、シンポジウムなどによって協同の検討に附すという手順は従来どおりであるが、それを一層改善しつつ当該研究のまとめを行いたい。 本研究の代表者および分担研究者の全員が関わっているレイモンド・ウィリアムズ研究会の活動方針として、2016年度はより多くの外部講師を招聘し、より広がりのある議論を行えるように図る。ウェールズを中心に海外の関連学会での発表も一層積極的に行う。 また、本研究の一環として、イギリス近現代史の教科書の刊行に向けて執筆作業および編集作業を進める。 数年来の関係を有するウェールズの学術団体AWWE (The Association for Welsh Writing in English)のメンバーとの研究交流およびウェールズの現地調査をとおして、ウェールズ英語作家(特に近代の産業化の経験をふまえたリアリズム小説の書き手)の再評価の作業を行ってゆく。
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Research Products
(20 results)