2013 Fiscal Year Annual Research Report
植物・土器・人骨の分析を中心とした日本列島農耕文化複合の形成に関する基礎的研究
Project/Area Number |
25244036
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
設楽 博己 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (70206093)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高瀬 克範 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (00347254)
藤尾 慎一郎 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (30190010)
米田 穣 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (30280712)
小林 青樹 國學院大學栃木短期大学, 日本文化学科, 教授 (30284053)
工藤 雄一郎 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (30456636)
石川 日出志 明治大学, 文学部, 教授 (40159702)
山田 康弘 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (40264270)
中村 大介 埼玉大学, 教養学部, 准教授 (40403480)
中沢 道彦 明治大学, 研究・知財戦略機構・研究推進員, 客員研究員 (40626032)
庄田 慎矢 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (50566940)
中山 誠二 山梨県立博物館, 山梨県立博物館, 学芸課長 (60574142)
大貫 静夫 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (70169184)
佐々木 由香 明治大学, 研究・知財戦略機構・研究推進員, 客員研究員 (70642057)
小畑 弘己 熊本大学, 文学部, 教授 (80274679)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 弥生時代 / 穀物栽培 / レプリカ法 / 土器 / 人骨 / 農耕文化複合 |
Research Abstract |
本研究は、①植物、②土器、③人骨に焦点を絞り、弥生時代の農耕文化複合の形成と地域性を考古学と自然科学の協業によって探るものである。 今年度は、①について、レプリカ法による土器圧痕の調査を行い、日本列島の穀物栽培の起源について、調査した。調査した遺跡は、熊本県ワクド石遺跡、同県鳥井原遺跡、徳島県名東遺跡、同県三谷遺跡、和歌山県徳蔵遺跡、静岡県清水天王山遺跡、新潟県和泉A遺跡、群馬県千網谷戸遺跡などである。その結果、馬見塚式以降ではイネ・アワの圧痕が検出されたが、ワクド石遺跡と清水天王山遺跡で、突帯文土器以前の縄文後期と晩期の土器に、アワ、キビ、イネの可能性のある圧痕が検出された。しかし、いずれも蒸着に失敗するなどでもう一度レプリカをとって判断すべきものであり、いまのところこの時期に穀物栽培がさかのぼる積極的な証拠はない。 レプリカ法では、穀物栽培の起源ばかりではなく、弥生時代における穀物利用の在り方を探るべく、弥生中期から後期の山梨県下の遺跡で圧痕の調査を行った。結果は来年度出す予定である。 ②については、石川岳彦が燕の東方進出にともなう土器の変化を遼東地方で追う調査を行い、大坂拓が東北地方の大洞A´式土器と特殊工字文土器群の研究を行い、新たな編年体系を模索した。 ③は、群馬県骨穴洞穴遺跡の踏査を行い、弥生中期の焼人骨を得た。人骨の整理は未着手だが、26年度に年代測定や炭素窒素同位体比分析を行い、食性研究に着手したい。 今年度の成果報告会を新潟県上越市埋蔵文化財センターにて行い、弥生中期の吹上遺跡の出土遺物の検討とともに、科研にかかわる成果報告と種々の議論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レプリカ法による土器圧痕の調査は順調に進んだ。とくに、熊本県ワクド石遺跡や静岡県清水天王山遺跡などの縄文後・晩期農耕論にとって重要な遺跡の資料調査を行うことができ、不明確な点はあったものの、穀物栽培の証拠は今のところ検出されないという結果が得られた。また、群馬県千網谷戸遺跡からは、長野県や山梨県で数多く見つかっている雑穀の圧痕が当然検出されてもよい時期であるにもかかわらず、まったくといってよいほど認めることができないなど、穀物栽培の開始に地域差がある可能性を示唆するような結果が出たことも、注目すべきである。新潟県青田遺跡も同様な傾向が報告されているので、今後さらに栃木県などに調査を及ぼして追究していきたい。縄文後・晩期農耕論に関係する遺跡はまだたくさんあるので、今後の課題も多い。 土器に関する調査研究は、個別に進められ、編年などの点でそれなりの成果が得られた。しかし、当初の目標であった土器組成、特に壺形土器の比率変化についてはあまり研究を深めることができずに、今後に課題を残した。
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Strategy for Future Research Activity |
レプリカ法については、二つの課題に取り組みたい。一つは縄文後・晩期農耕論にかかわる遺跡の土器圧痕の調査を進めることである。もう一つは、弥生時代の穀物利用の在り方を定点的、通時的に検討することである。具体的には、岡山県域の標高の違う遺跡を取り上げ、圧痕調査を行えば、高地性集落の機能用途に迫る研究ができるのではないかと予測している。 縄文後・晩期農耕論の参考文献について、データベースを作成してその歴史をたどる資料とする。また、縄文後・晩期農耕論の根拠とされてきた炭化穀物の種実がいまどのような保管状況になっているのか、データベースを作成し、可能であれば炭素14年代測定を行いたい。 縄文時代から弥生時代にかけて、土器組成、特に壺形土器の比率変化を追いかけて、どのような変化をたどるのか、そしてそれが穀物栽培とどのように関係しているのか、明らかにしたい。 東日本の弥生時代の人骨で、炭素窒素同位体比分析を行うことも、今後の課題である。
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Research Products
(64 results)