2015 Fiscal Year Annual Research Report
アンコール遺跡群を事例とした考古情報資源共有化に関する研究
Project/Area Number |
25244039
|
Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
森本 晋 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 企画調整部, 室長 (40220082)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川野邊 渉 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 文化遺産国際協力センター, センター長 (00169749)
津村 宏臣 同志社大学, 文化情報学部, 准教授 (40376934)
杉山 洋 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 企画調整部, 部長 (50150066)
丸井 雅子 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (90365693)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 情報共有 / アンコール地域 / 文化財調査 / 国際研究者交流 / メタデータ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本の研究機関・研究者によっておこなわれてきた海外の文化遺産調査の調査成果を蓄積して発信するシステムの開発を目指すもので、アンコール地域での文化遺産調査成果の共有化をその目的としている。本年度は、国内の研究機関で試行してきた、写真資料へのタグ付け作業の進捗がはかばかしくない問題を解決するために、資料を記述する文章データを蓄積して、写真資料へのタグ付けだけでは量的に十分な情報を蓄積できていない部分を補完しようと試みた。材料としては、奈良文化財研究所が刊行したタニ窯跡群に関する調査報告と、西トップ遺跡に関する調査報告の、図版キャプションなども含む全文テキストを用意し、それを厳密に校正したものを用いている。適切なメタデータの自動生成に関しては、その結果がまだ得られていないが、参照する良質な資料テキストの準備を継続しているので、アンコール地域の遺跡調査報告に最適化したものへと次第に進化していくことが期待できる。 2016年2月23日に開催した研究会において、メタデータ構造の最適化の問題、調査研究成果資料を登録する際の資料体の階層性に関する問題、私的な資料と公的な記録の相互補完的活用についてが話し合われた他、フランス極東学院の研究者よりフランスの博物館・研究機関における写真画像アーカイブの動向に関する詳細な発表を得て、アンコール地域の資料を適切に整理、保管、活用、継承していく道筋について討議した。 このように日本の研究者のみならず、アンコール地域での調査研究に関わる外国の組織にも情報共有に関する認識を広めていけたことは大きな前進であると考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年2月23日に開催した研究会での討議は、当研究課題の実現に向けて、何が実際に問題になっており、どういうことをすることによって解決への道筋が示せるのかを検討する極めて重要な場であった。情報共有のためには各機関が所有している資料の目録を提示することが第一段階である。目録作成に当たっては、資料の同定が必要となる。例えば写真資料であれば写っている遺跡がどこなのかという情報は極めて重要な情報であり、必ず示されるべきものである。近年の所蔵資料に関しては、こういった必須の情報が欠けていることは少ないと思われるが、古い所蔵資料であったり私的なコレクションであったりすると、同定が困難な事例が多くみられる。同定できないために、資料の存在自体が公表されなくなってしまうのは望ましくない。これには、フランス極東学院が行っているようにデータベース中の同定が困難な写真を、あえて積極的に公開することで、反対にアクセスした人からの情報提供を期待するという姿勢が参考になる。 研究会では、この他にもアンコール地域での調査研究歴の長いフランスの研究関連機関として、フランス外務省画像データベース、海外領土に関する国立アーカイブ、ギメ東洋美術館収蔵品カタログ、美術館国立データベース・ジョコンダ、アルバート・カーン美術館アーカイブ、シサルク・クメール考古遺跡相互作用地図の状況を詳しく知ることができ、また、フランス以外の組織としてオーストラリア国立図書館の資料、プノンペン国立博物館所蔵写真資料、トリノ高等教育学校の東南アジア美術資料などについても紹介され、本研究の進行に資するものがあったと考えている。 これらの成果を踏まえて、現在は、データの粗密によって階層を制御するような形での目録の細かな整備を継続している段階である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は本研究の最終年度にあたる。2016年の8月から9月にかけて開催される国際学会(世界考古学者会議第8回大会)で、独立したワークショップを持ち、そこで研究発表と討議を予定している。その場での議論を取り込んで情報共有に関する研究成果の取りまとめを図りたい。具体的には、階層的な所蔵資料目録の電子化とインターネットを通じた公開を行うことで、本研究の目的であるアンコール地域での調査研究情報の共有へとつなげたいと考えている。 当初の予定通りに進んでいないメタデータ構造の自律的な改良を可能にするシステムについては、検証を行う資料蓄積に時間がかかることがわかり、本研究の期間内で完成形を示すことは困難であるとの見通しとなっている。達成部分の公開を行った上で、研究期間終了後も作業を継続して改良していくことを考えている。
|