2013 Fiscal Year Annual Research Report
超高速注文執行システムにおける市場データの統計的推測と実証分析
Project/Area Number |
25245034
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大屋 幸輔 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (20233281)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 亘 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (20293681)
高田 輝子 大阪市立大学, 経営学研究科, 准教授 (30347504)
石田 功 甲南大学, 経済学部, 教授 (20361579)
内田 雅之 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (70280526)
深澤 正彰 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70506451)
渡部 敏明 一橋大学, 経済研究所, 教授 (90254135)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 高頻度データ / 市場流動性 |
Research Abstract |
研究初年度は翌年以降に予定している実証研究に先立ち,データ収集,データベース構築作業を行った。またそれと並行して,以下の研究を行った。 (1) 市場のミクロ構造に関する統計的推測をテーマとする研究グループでは,マイクロストラクチャー・ノイズに対して頑健なボラティリティの推定方法に関する研究を行った。この成果の一部はNagakura and Watanabe (2014)で発表されている。またインプライド・ボラティリティやレバレッジ効果を表現するペイオフの期待値を金融派生商品価格データからの非線形変換によって求める方法に関しては,Fukasawa(2014)によるアプローチが有用であることが示された。 (2) 非同期資産取引における因果性の推測に関しては,先攻研究で提案されている周波数領域上での因果性の検証方法が,金融市場における分析に応用可能かどうかを検討した。その成果の一部は木下・大屋(2014)にまとめられている。 (3) 市場の流動性の計測とその統計的推測に関しては,太田が東京証券取引所が2010年1月に行った取引システム高速化が流動性にどのような影響を与えたかについて分析し,高速化の後,小型株と大型株で,逆選択コストの非対称な変化が観察している。また高田はニューヨーク証券取引所OpenBookデータを用いて,売手/買手別高頻度指値・取引量のノンパラメトリック確率密度を推計し,市場流動性の高いバブル生成期に市場が非対称化するが,市場流動性が低くなるバブル崩壊後は対称化することを示している。 データベースに関しては,2013年5月に観測された日本の金融市場における急激な変動をとらえるために,最新のデータを購入し,現在,整備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高頻度データの入手は年度ごとに進めていくが,初年度は計画通りのデータを入手することができた。高頻度データはそれを利用可能な形に整備することに多くの時間と労力を必要とするが,研究分担者とともに共通のデータ処理ソフトウェアを利用することで対処できている。非同期データに関する統計的推測方法に関しては,周波数領域での分析方法が,金融市場の高頻度データに対して適用できるかどうかが問題であったが,定常性の条件のもとであれば理論的な問題はないことが確認されているため,2年目以降の分析を順調に進めることができる状況である。市場の流動性に関する分析は研究分担者による実証研究の成果があがっており,今後の研究推進に問題はない。市場のミクロ構造に関する研究に関して,研究初年度では,主にマイクロストラクチャー・ノイズに対して頑健な推測方法を研究テーマとしているが,データが整備された2年目以降に,具体的な非線形モデリングの提案,そのモデルの統計的推測などについて研究を推進していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究初年度に引き続き,高頻度データの収集と整備を行い,実証分析を推進する体制を整える。3つの研究グループはそれぞれの研究テーマにそって理論研究と実証研究を行う計画である。各グループのテーマについては以下の通りである。市場のミクロ構造に関する統計的推測グループでは,市場で観測される約定価格と気配価格の動学的なメカニズムを解明するために,非線形モデリングとそれに対する統計的推測について研究を行う。非同期資産取引における因果性の推測グループでは,非同期観測を前提とした変数間の因果性検証に関する研究を進める。市場の流動性の計測とその統計的推測グループでは,市場流動性が低い場合,取引量と価格変化の関係における非線形性は顕著なものとなることが期待されるため,その非線形性を取り込んだ形での流動性の指標の開発を目指す。 さらに,それぞれの研究グループによる成果とその検討を目的とした研究集会を,研究分担者以外の研究者も交えて行う計画である。
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